葉折君の服を片付け、とりあえず今のところ一番マシである僕のTシャツを、気流子さんに着てもらい、四者面談は開始した。話題は気流子さんの服について。
「空美先生、気流子の服はどうしたらいいでしょうか……?」 「保護者なの!?音無君が気流りんの保護者なの!?」 「そうですねぇ……年相応の、露出が少ない服がいいと一般的には思われますが、私個人としては露出が高くても問題は無いと思います。ねぇ?小坂先生」 「そうだな……って、俺に話を振るな」 「あらやだ、小坂先生ってばムッツリなんですね」 「やめろ、オネェ化するな音無!そして俺はムッツリじゃねえ!!」 「オープンだとでも?」 「どうしてそうなる!?」 困った。話が反れる。 でも、面白い反応をする小坂君が悪いと思うのだ。顔真っ赤だし。
「と、言うわけで気流子さん!あなたは露出度が高めの仙人さんのチャイナ服を着るべきです!!」 「何を言っているの空美ちゃん!?音無君は探しに行かなくていいからね!?小坂君は何顔赤くしてるの変態ぃぃぃぃッ!!」 「あ、赤くなんかしてねーよ!」 「はいはい、バカップルバカップル。永久にそこで二人いちゃこらしててください」 「誰がカップルだよッ!!」 気流子さんで遊ぶつもりが何故か小坂君で遊んでいた。そして空美さんのキャラがよく分からないことになっていた。どんだけ露出を求めるんだ。
「とにかく気流りんはチャイナ服なんか着ないんだからねッ!」 「それはツンデレというものですね?気流子さん!!」 ……嗚呼、12歳の少女が21歳ぐらいの変態師匠に毒されている……。もうダメだこの子。 「純粋な全力の拒否だよ!?私は着ません!!」 「分かりました。変わりに小坂先生が着るそうです」 「なんで俺なんだよ!?」 「それでは空美先生、チャイナ服以外では何がいいのでしょうか……?」 「無視すんなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」 「そうですねぇ……」 叫ぶ小坂君を無視して、気流子さんをまじまじと見つめながら空美さんは考える。 「残念なことに、彼女は猫さんや雪乃さんに比べると偏差値が足りていませんからね……」 「空美ちゃんに言われたくないかなッ!!」 「彼女達の服を借りるのはある意味無理だと思います……」 「……そうですか、偏差値ですか…………」 「音無君だってぺったんこぉぉぉぉぉぉぉぉ」 「猫神の血まみれローブを着せるわけにもいかないしな……」 「あれは多分身長が足りませんよ。ねぇ、先生?」 「やはり総合的な偏差値が……」 「うわぁぁぁぁん!!」 はい。気流子さんが泣き出しそうなので強制終了。 「とりあえず音無のTシャツと俺のハーフパンツでもはいとけ」 いつ持ってきたのか分からないけれど、小坂君は気流子さんに白と水色のラインが入ったハーフパンツを渡した。 「…………」 ハーフパンツをはき、ようやく服装が落ち着いた気流子さんは俯いて押し黙った。 一体、どうしたのだろうか。ふざけていたとはいえ、さっきまで色々と言い過ぎてしまっていたのかもしれない。もし、気流子さんを傷つけてしまったのなら、これは謝らないと………… 「あの、気流子さん……」 「ダサい」 「……え?」 むむむ……と眉間に皺を寄せて気流子さんはそう言い放った。 「なんていうか、可愛くない……!なにこのザ、中学生みたいな……」 どうやら今の服装が気に入らないだけのようだ。安心した。
「……さて、今日は皆さんもう休みませんか?」 流亜ちゃんが小坂君と協力して、傷を癒してくれたとはいえ、痛いものは痛いしまだ動くのも体が重い。それは僕だけではなく、みんなもそうだと思ったのだ。 「そうだな――」 「え?」 小坂君が肯定した。それと同時に、首にチクリという痛みが走った。段々、身体中の痛みと意識が遠のいていく。 「――仙人を寝かした時にお前も寝かせとくべきだったな。悪い。……とりあえず安心して――――」 小坂君の言葉を最後まで聞き取ることが出来ないまま僕は目を閉じた。
おやすみなさい。
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