「……君…………」

 誰かの声が聞こえる。
 聞き覚えがあるけどこの声は誰の声だっけ?

「……君……ソン君!!ワトソン君!!」
 ワトソン?
 あ、僕の事か。

「……おはようございます。気流子さん…………」
「あ……良かった……生きてた」
「どんなレベルの心配ですか!?」
 いや、目が覚めていきなり『生きてて良かった』とか言われたら突っ込まなければいられないと思う。うん。
「どんなレベルって、オタマジャクシが蛙を食べているところを見たときみたいなレベルだよ!!」
 なる程わからん。
 口を尖らせてブーブー言っている気流子さんを見ていると何となく伝わるんだけどさ。
「まず、ワトソン君。ちゃんと記憶はあるの?」
 本当にどんなレベルだよ!? 生死を分ける記憶喪失レベルって僕の身になにが起きたって言うんだよ!
 声には出さず心で突っ込みまくる僕。割と疲れる。

「一応、僕の身になにが起きたか教えてもらえますか? 気流子さん」
 そこまで心配されるなんて、よほどの事があったのだろう。ぶっちゃけ記憶が途切れている感は否めないし。
 「……はぁ……」と気流子さんは溜息をつくと「猫さんの手料理をワトソン君は全部食べちゃったんだよ」と、怒ったような口調で言った。
 なあんだ。そんな事だけか。
「特に大したこと無いじゃないですか」
「いやワトソン君。声と体が凄い勢いで震えてる」
 ……あれ……なんでだろう。体が勝手に……。鳥肌と寒気も……背筋が凍るような映像がフラッシュバックするし。
「これはいっt「現実から目をそらさないでワトソン君」
 うう……。非常識的な気流子さんに諭された…………
「全く、猫さんの手料理を食べちゃうなんて、ワトソン君は勇者だよ」
 真面目な口調で呆れられて勇者と言われた。あの料理を食べているのだから反論が出来ない。
「ある意味神だよ!」
「神とまでいきますか」
「一周回って只のバカだよ!」
「全く反論が出来ませんね!」

 なんだか頭の足らない楽しい会話だった。



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