※三成が出て来ない。



フワフワと、超能力なのか、なんなのか、さっぱりわからない吉継さんの宙に浮く輿を羨ましそうに見ていたら、主も乗るか?と言われて、二つ返事で輿に乗せてもらった。

吉継さんの後ろに乗って、足をぶらぶら宙で遊ばせる。

女中さんや、武将さんに出会うと微笑ましいという目で見られながら、吉継さんは城の上に階に進んでいく。

「吉継さん」
「なんだ?」
「どこに行くんですか?」

そう言えば吉継さんはどこかに行く途中だったのではないか、と今更ながらに思い至って聞いてみると、吉継さんはクックッと笑い出した。

「三成のところだ」
「三成さん?そう言えば朝から三成さん見てないですね」

大概、朝起きたら庭で三成さんは素振りをしていたりするのに、今日はいなかった。

「昨日の夜からまた寝食忘れて仕事に没頭しておる。それで主に食べるように言って欲しいと思ってな」
「私よりも吉継さんが言った方が…」
「三成はワレの言うことよりも主の言うことの方をよく聞く」
「そうでしょうか?」

昨日の昼に秀吉さんと半兵衛さんは用事があるらしく、大坂城から出掛けられた。
数日いないということで、城を三成さんに任せたと言い残して。

三成さんのことだから、任されたと言われて、張り切っているのだろう。
あんなに秀吉さんと半兵衛さんを慕っているから。

張り切るのはいいことだけど、どうしてご飯を食べなくなったり、寝なくなったりするのか。

そういう時は誰かが言わなくちゃいけないんだけど、三成さんはすぐに刀を抜いてしまうから、下手な人は諫めることは出来ない。

それが出来るのは秀吉さん、半兵衛さん、それに吉継さんくらいだ。

なのに吉継さんは私に説得しろなんて言う。

「それにワレがおらぬときに三成がまた食べるのを止めて、主が説得して食べさせたと聞いたぞ」
「あ、あれは三成さんが食べるまで私も食べませんって三成さんの部屋の隅で、ずっと正座して居座ってたらお腹が空いて倒れちゃって…」
「…三成も三成だが、主も主よのぅ」

私が倒れてしまって、三成さんや皆さんにだいぶ迷惑をかけてしまったときの話。
話を聞いた半兵衛さんが三成君も棗君にも困ったものだね、と苦笑された。

「それなら主が顔を出せば三成も食すだろう。また三成が食べねば主も絶食するぞ、と」
「それって脅しじゃ…」
「たまにはこのくらいせねばな」

ヒッヒッと楽しそうに笑う吉継さんに、自分が原因なのに三成さんにちょっぴり同情しながらも、きっと怒りながらもご飯を食べる三成さんを想像する。
不満そうな顔をしながら、行儀良く食べる三成さんは見ていて、本人には悪いけど見ていて楽しい。

「そろそろ三成のところぞ」
「頑張りましょうね、吉継さん!」
「あぁ」

三成さんのいる部屋の前で止まった吉継さんは咳払いをしてから、部屋の主に声をかけた。



暗中飛躍
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暗中飛躍(あんちゅうひやく):密かに策動する事
お題:)‡decadence‡様
11/11/18 緋色来知



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