この生活に慣れてくると部屋の中でじっとしているのは窮屈で、最近は部屋から出るようになった。


今日も藍さんに断りを入れて部屋から出る。
昨日は半兵衛さんに会って、城内を案内してもらいながら秀吉さんがいかに素晴らしいかを語られた。
一昨日は豊臣の武将という人が案内してくれた。
この二日で少しこの大阪城を把握出来た気がする。

私の姿を見て頭を下げる兵士さんと女中さん。これはちょっと気まずい。それに頭を下げられるような人間じゃないのに、と少し卑屈になってしまう。


そんな中向こう側から同じように女中さんと兵士さんが頭を下げていて、廊下の真ん中を堂々と歩く人がいる。
秀吉さん達は白か暗色系の着物を着ている。だけど向こう側から来る人は眩しい程の金色の服を身に纏っているのだ。

「もしや主は三成の天女殿か!」

向こう側から歩いてくる人と目があって、向こう側の人は目を丸くして廊下を走り私のすぐ近くまで来る。

三成さんの天女、みんなは私のことをそう呼ぶ。
天女が三成さんの上に落ちてきたから、三成さんに幸運をもたらすのだろうと。

「は、はい。貴方は?」
「これは失礼。ワシは徳川家康。豊臣傘下の武将だ」
「わ、私は七希棗です」
「流石は天女様だな。名字があるのか!」

徳川さん、は目を輝かせる。
三成さんといい、吉継さんといい、年齢は近いはずなのに、大人のような二人に囲まれているからか、何だかこの子供のような反応を見せる徳川さんに私はちょっと引く。

徳川さん、と頭の中で反芻(はんすう)してみて、三成さんの話に出てきたのを思い出す。

「徳川さんは三成さんのお友達ですか?」
「家康でいい。敬語もいらん。もしかして三成がワシのことを友と呼んでいたのか?」
「えっと…ちょっと前に家康さんのことをお話してくれたんです。一緒に秀吉さんの天下統一のために共に働く武将だって」

三成さんはあまり人の話はしない。するとすれば秀吉さんと半兵衛さんがどこがどう優れていて、その下で働ける自分は日の本で一番幸せだという話。家康さんの話もその最中に出てきたのだ。

「そうか。共に働く武将か…」
「でも三成さんはちゃんと家康さんのこと友達だと思ってますよ。だって家康さんのことを話す時は吉継さんのことを話すような目をしてましたから」

肩を落とした家康さんに私は自分の意見を言う。

吉継さんは三成さんの数少ないと言っては失礼だけど、友達だ。だからそう思ったのだ。

「有難う、棗殿」
「いいえ」

私の言葉に家康さんは嬉しそうに微笑む。
その笑顔を見て、太陽みたいな人だと思った。

「そういえば棗殿はこれからどこかに行かれるつもりだったのか?」
「今この大阪城を探検してたんです」
「ならばワシが案内しよう」
「いいんですか?」
「何、秀吉公への用事は済んだからな。さてどこから参ろうか」

家康さんは自分の胸を叩く。
私はお礼を言って、その日は家康さんの案内で大阪城を探検したのだ。


例えるならば黄色い感情
(む、さっきもこの部屋の前を通ったぞ)
(おかしいですね…まさか部屋が入れ替わったとか!)
(さっきから何をしているのだ、貴様らは)
(三成さん!)
--------------
▼お題お借りしました。
たとえば僕が
100906緋色來知
タイトルは雰囲気で。
活かしきれず申し訳ない。



()
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -