「…………」
「……寝たんじゃないのかよ」
「みんな考えることは一緒ってことでしょ」
「はははは……」
今年のワールドカップは遥か遠くの国で行われる。
そのためどうしても中継が夜中になってしまう。
次の日結果を知るよりも、リアルタイムで視聴したい。
そう思うのは必然か。
そそくさと自室に入っていった四兄弟は、サッカーが始まる五分前に居間に集まった。
クーラーをつけて、ソファーに四人並ぶと、テレビをつける。
中継はすでに始まっていて、会場は開始を今か今かと待っていた。
「勝つかな、日本」
「勝つに決まってるって!」
「そうそう。この前の練習試合でも勝った相手ですし」
「!?」
「シンさん!?」
後ろから何気無く入ってきた声に四人は振り返る。
そこにはトレーにジュースとお菓子をのせたシンが立っていた。
冷や汗みたいなものをダラダラ流すアイチとカムイ、そしてそっぽを向くミサキとトシキに、シンは笑いながら、トレーをテーブルに置く。
「まあ、夏休みですしね。私も見たかったので、別に咎めませんよ」
シンの言葉にアイチとカムイはホッと息を吐く。
ミサキもトシキも安心したような様子で、シンはそれにいつもの笑みを浮かべる。
「お、始まりましたね」
「がんばれー日本!」
「カムイ、うるさい」
「夜中なんだから静かに応援しろ」
「静かに応援ってどうやるんだよ」
「まあまあ」
#08-1
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2012/08/10 緋色来知
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