少し肌寒くなった冬の始め。
家に一人きりの私の元に夜10時過ぎ、
インターホンのチャイムが響く。
どうせ、回覧板か集金だと思い、財布を持って
玄関を開けたら
目の前に懐かしい人が。
数年ぶりに、彼が訪れた。

「…よぉ」
「は…やと…くん…?」

驚いて、開いた口が塞がらなかった。
だって彼は…隼人くんは、仕事で長期出張。
とだけ私に伝えて、3年間不在だった。
連絡も取り合えなかった。そんな彼が今、3年ぶりに私の目の前に現れた。
嬉しいけれど、何が起こったのか固まるしかなかった。
そんな私に隼人くんは
出掛けるぞ、
と一言言うと、くるっと向きを変えて
先に歩きだした。

「あ、ちょっ、待って!!」

私はコートを乱暴に捕まえて
玄関の鍵を急いで閉め、
コートを羽織りながら走って彼を追い掛けた。

「待ってよー!!」

前に彼の姿を見つけ、そう叫ぶと
彼はこちらに振り返った。私はその彼の腕にしがみついた。
彼は少し顔を赤らめて私を見た。
あ、変わらないな、昔と。
そんな事を思っていると

「ほら、行くぞ」

と言われ
うん、と微笑んだら
耳まで赤くなって。

「3年前と変わらないね」
「うっせー。お前もだろ」

なんて他愛のない会話をしながら、夜の街を歩く。
隼人くんに会う前は沢山話したい事、あったのに
実際に会うと
何を話したかったのか忘れてしまって。
その時その時、思いついた事、昨日の朝食の事、
他にもくだらない話だって隼人くんは、きちんと耳を傾けてくれて。
ああ、そういう所を好きになったんだな、と思っていると彼の足が止まる。

「どうしたの?」

そう言って周りを見渡すと見覚えのある、小さな丘のような場所。
下を見下ろすと、街が光で綺麗に彩られていた。
黄色い光もあれば、オレンジ色の様な光もあって、
カラフルでとても綺麗な街だった。

「ここ…」

私と隼人くんだけの秘密の場所。そして、
私が隼人くんに告白した場所。

「ここ、覚えててくれてたの?」
「忘れるわけねぇだろ」

バーカ。
と付け足して
その場にどかっと座り込んだ。
私はその隣に腰かけた。

「凄いね、昔はお昼くらいに来てたからわからなかったけど、ここってこんなに綺麗な場所だったんだね」
「そうだな」

星も綺麗だしね。
今度は夜にまた来ようね。そう言うと彼は
ああ、
と言って少し微笑んだ気がした。
それから、沈黙が私と彼を暫く包み込んだ。
その間、私はずっと夜の街を見下ろしていた。
座り直そうとしたらしく、地面についた彼の手と私の手が
そっと触れた。

「あ、悪い」

久しぶりに触れた彼の手。暖かい、男の人らしい手。
昔よりも、少し大きくなったかな?
彼は、ぱっと手をどける。
その手を追い掛けて、私はその彼の手を握る。
彼は目を見開いていた。

「どうして急に私の所に?連絡くらい、くれれば良かったのに。」
「仕事、今日休みだったからお前に会いに。」
「ふふ、嬉しいな」

お仕事…大変なんだね。
そう呟いたと同時に握った手の力を少し強くしたら、強く握り返してくれた。彼は
まあな、
と口の端を上げて空を見上げた。
私もつられて空を見上げ、

「また…お仕事に戻るの?」

と聞いていた。
無意識だった。

「ああ。また暫くは…戻れない」
「…そっか」

私は彼のしている仕事の事は、何一つ知らない。
ただ、
知らなくていい。
そう言われただけ。
だから無理に知ろうとはしない。
いつか、彼から話してくれるまで
私は陰から隼人くんの事を見守ってるね。
そう言ったら
滅多に笑わない彼が微笑んで
ありがとよ。
と言われたのを今でも覚えている。

「私はいつまでも、隼人くんが帰って来るの、待ってるから」
「おう」
「次帰って来る時は連絡くらいしてよね」
「おお」

同じ様な返事しかしない彼だけど
握られた手からは温もりを感じた。

「絶対、帰って来てね」

約束だから…
彼を見つめて不安気に言うと
彼は私に軽く触れるだけのキスを
私の唇に落とした。

「そういう、密かにロマンチストな所も、変わらないね」「うるせぇ。お前だって心配性な所、変わんねぇだろうが」

暗いから、顔の表情がお互いによくわからないけれど私も隼人くんも
微笑んでいると私は思う。一呼吸置いて、パチっと目が合い、
二人してクスッと笑った。昔は隼人くん、こんなに柔らかく笑う事なんて
ほとんど無かったなぁ…
彼の綺麗な笑みに見とれて思い出に浸りすぎだな、
なんて思って。

「何ニヤニヤしてんだよ気持ち悪ぃ」
「なっ…失礼な!」

隼人くんは
冗談だ、冗談。
そう呟いて、真剣な顔つきになって。

「必ず…帰って来る」
「うん」
「そしたらお前の行きたい所行こうな」
「うん」

彼は私の頭に手を乗せて、もう一度唇を重ねた。
この時間だけは、しっかりと彼を感じた。
また長い間、会えなくなるのなら
少し我が儘してもいいよね…
私は彼の背中に腕を回した。



カラフルな夜に溶けるKiss
(カラフルな夜の街を)
(見下ろしながら、したキスは)
(この景色に溶けた、気がした。)






Melty kiss.様に提出しましたo(^-^)o

こ…これは…誰?←
話矛盾してしまった(T_T)


楽しい企画に参加出来てよかったです(^o^)/

ありがとうございました。
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