「ポインセチアの花言葉を知っているかい」


ショーウィンドウを彩る赤を横目に眺めていると、唐突に隣を歩く半兵衛くんがそんなことを言い出した。彼は最新のコーディネートに身を包んだマネキンよりも白く透き通った肌をしていて、いっそ人形なんじゃないかと思う程に綺麗な顔立ちをしている。口許に浮かべた優美な笑みは、教師が生徒に向けるそれによく似ていた。


「クリスマス、とか?」
「違うよ。確かにクリスマスを代表する花だけどね」
「……降参です。そもそも当てろって無茶な話じゃないですかね」
「そうかもしれないね。言ってみただけさ」


どうやら私はその先生に意地悪をされていたらしい。軽く腕を小突いてみると、笑顔のままするりとその手を取られて優しく握りられる。……仕方ない、許そう。
半兵衛くんの手は冷たく、長い指は驚くほどに細い。


「ポインセチアの花言葉は幾つかある。『祝福する』、『清純』、『聖なる願い』。どれもクリスマスらしいね。それと、もう一つ」
「何なんです?」
「『私の心は燃えている』」


くすり、半兵衛くんは上品に笑みを溢した。
面食らって半兵衛くんを凝視する。何と言うか、意外で。


「……半兵衛くんって、時々情熱的ですね」
「そうかい?」
「そうです」
「そうかな」
「そうですよ」


そうなのか、なんて真面目くさって呟くものだから思わず噴き出した。半兵衛くんも冗談だったらしく、釣られたように笑顔を浮かべる。
手を繋いだまま、暫く会話がないままに歩く。それでも満ち足りた気分で、触れた指には少しずつ私の体温が移る。ポインセチアの花まで、その言葉通り私達を祝福してくれているかのようで。




「来年はポインセチアを贈ろうか」
「……じゃあ、一緒に育ててくださいね」




穏やかな幸福を抱きしめて、私達は笑った。




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