いのの家に連れて来られ、俺は訳も分からないまま椅子に座らされる。
何たくらんでやがんだ、こいつ…。
いのも向かいの椅子にドサッと座った。
「で」
「なんだよ…。」
「テマリさんの前でえらく挙動不審だったけど、どぉしたの、シカマル?」
何ニヤニヤしてやがるってめぇっ!
でもこいつなんか知ってっかも。
そんな気持ちになり、いのに相談した。
「…俺…どっかおかしいんかも…。」
「へ!?」
「なんか…あいつのこと見るだけで息苦しくなって…心臓バクバクいって…なんつーか、こう…しめつけられたような…。」
「うん、うん。」
相槌をうちながらときどき「くくっ…」と笑ういの。
お前、ちゃんと聞いてんのかよ…。
「お…俺は真剣だぞ!?」
「あ、ごめんって!あんたおもしろくて…。ねぇ、それってテマリさんだけでしょ?」
「?ああ…。」
「ふーん。じゃ、テマリさんに会いたいとか思ったりは?」
「へ…あ、会いたい…?会いたいとかそんな…あ、あのな…」
いのから目線を反らし、吃る俺に、いのは笑いを隠せないでいる。
「…(シカマル、完全にテマリさんのこと…。)シカマルの頭の中ってテマリさんのことばっかなのねー!」
「……。」
「ねぇ、何でだかホントにわかんないの?」
…は?わかんねーからお前に聞いてんだろ!
「…わかんねぇ。」
そう答えると、いのは呆れたような顔になる。
「あんたってホントダメねー…。いい?あんた、テマリさんのこと考えると息苦しくなるんでしょ?」
「お、おぉ…。」
なんか繰り返されると恥ずかしくなる。
「それってね、シカマル…」
いのが一息おく。そして続けた。
「テマリさんのことが好きなのよ!!」
俺は目を見開いた。
…そうなのか?この気持ちは、好きってことなのか?
俺が、あいつを…?
俺はガタッと席を立つと、フラフラといのの家を後にした。
しばらく街中を歩く。といっても、地に足つかない状態で、結構フラフラしてた。
電柱にぶつかりそうになり、石につまづき、向こうから歩いてくる上忍にぶつかり怒鳴られた。
それ程俺はダメージを受けたらしい。
まだだるくて仕方ない。
すると、また動悸が激しくなった。
…なんでこーゆー時に限ってよく会うんだ?
テマリがこっちに向かって歩いていたのだ。今度は我愛羅も一緒だ。
テマリはすぐに俺に気づき、「シカマル。」と言うと俺に近づいてきた。
や…やめろ。こっちくんな。死んじまう。
そんな俺のことを無視するかのように、テマリは俺に声をかけてきた。
「おい、熱はもう大丈夫なのか?」
「ああ。」
この男らしい口調。そうだ。大体、俺がこんなやつ好きになるわけがねぇ。
だって、背中のでっけぇ扇子を振り回すんだぜ?
家の母ちゃんよりこえーし。
顔だって。つり目だし睫毛長ーし目ぇでけーし小顔だし美人だし……………あれ?何言ってんの、俺?
「……。」
気づくと、我愛羅が怪訝そうな顔で俺を見ていた。
なんか見透かされているような気がする。
俺はさっと我愛羅から視線をそらした。
「お前、今日はホントに挙動不審だな。まだ熱があるんじゃないか?」
テマリは心配そうに言った。それに胸がズキュっというのを感じる。
「いや、もう大丈夫だぜ。」
「…そうか。」
その時だった。
「よかった。」
テマリのその言葉と同時に、俺の胸がキュンっとしめつけられる感じがした。
俺の大丈夫だという言葉を聞いて安心し、笑顔になるテマリ。
その優しい笑顔に、俺はこの前の親父との会話を思い出した。
「なあ…親父。」
「なんだ?」
「どうしてあんなキツい母ちゃんと結婚したんだ?」
母ちゃんに聞こえないように、俺は小声で親父に聞いた。
前からすごく疑問に思っていた。
だって、あんなキツいの、めんどくさくねぇ?
俺は無理だ。
「…そだな…あんな母ちゃんでも優しく笑う時がある…。それでかな…。」
「……………そんだけ?」
あの時は、親父の言ってる意味が分からなかった。
でも、今は分かる。
俺はテマリの笑顔が好きだ。
俺はあいつが笑ったあの時から…
「どんなもんだ?」
確信した。
俺はテマリが好きだと。
あれから三ヶ月。
俺はテマリのことが好きだと自覚したが、テマリとの関係は全然変わっていない。
すれ違ったときに挨拶する程度だ。
しかし時々俺に笑顔を見せるテマリに、俺は見とれてしまう。
そして、砂忍が帰る日になった。
「じゃあな…気ィつけて帰れよ。」
「ああ…。」
俺は木ノ葉の門の前まで、この三姉弟を見送りに来ていた。
木ノ葉と砂は遠い。だからいつ会えるかわからない。死と隣り合わせの生活をしている忍ならなおさらだ。
帰っていく三人の背中を見つめていると、テマリだけが振り向いた。
「また何かあったら助けてやる…。そん時はいいな泣き虫くん。」
泣き虫くんと言われ、テマリの前で泣いたことを思い出し、少し恥ずかしくなった。
が、その言葉を聞くと、俺はまたテマリに会えそうな気がする。
「一言多いぜ…。これだから女って奴は…。」
俺は三人が見えなくなるまで見送った。
おわり
ホント、最後ぐちゃぐちゃになります。
ありがとうございました!