「どう?終わったわよ。」
強引な奴…。こいつ、家の母ちゃんよりこえー女だな…。
自分が手こずった相手を、一撃で倒すとは。
「どんなもんだ?」
俺のほうに振り向き、いたずらっぽく笑うテマリ。
次の瞬間、俺は自分でも分からない感覚に襲われた。
なんだこれは…。
さっきから自分がおかしい。息苦しい。
指が折れた痛さに耐えれなくなったのかと思いながら、木ノ葉病院へ向かう。
看護師に治療してもらう。このおかしな息苦しさも治まるだろうと思っていた。
治療を終え部屋を出ると、テマリが椅子に座って俺を待っていた。
「痛そぉだな。」
そう言ってテマリは俺の手をとり、包帯の巻かれた指をまじまじと見つめた。
とっさに俺は右手をバッと上げ、テマリから離す。
「痛ぇーから触んなっ。」
ぶっきらぼうにそう吐き捨てる。
「すまん…。」
しゅん、と悲しげな目でテマリは下を向いた。
「あ…。」
ズキッと胸が痛んだ。そこで俺は気づいた。
この息苦しさ…。胸の痛みのせいだと言うことを。
しかし、どうして痛いのか分からない。さらに息苦しさが増す。
何なんだよ、一体?
すると、さっき治療してくれた看護師が部屋から出てきた。俺に用があるらしい。
「シカマルくんよね…?」
「?…はあ…。」
看護師はためらいがちに、少し間をおいて言った。
「あのね、あなたと一緒に任務してたチョウジくんとネジくんとキバくん、重傷らしいそうよ。」
「!!!」
その後、仲間の状況と隊長という職の重さを感じた俺は、テマリの前でうんと泣いた。
それから数日後。
俺はまだモヤモヤしていた。
あの日からというもの、テマリに会う度に動悸が激しくなり、息苦しくなる。
なんでなのかわからない。…病気なのかも。
チョウジの見舞いがてら、診てもらおうかな。
そう思いながら木ノ葉病院へ向かった。
チョウジの病室に入ると、いのも見舞いに来ていた。
「あ、シカマル…。」
「よぉ…。」
ここ数日、いのの雰囲気が暗い。
そりゃそーだ、こいつもサクラと同様、サスケの事が好きなんだから。
俺は申し訳ない気持ちになる。
チョウジはというと、秘伝の丸薬を飲んで体格が変わり、一目みただけでは誰だか分からない。
だが、ポテチをバリバリ食うのだけは変わっていなかった。
…リバウンドする日も近いな…。
俺はチョウジに土産のポテチを渡し、「あんま食うとデ…」のところでいのに止められると、いのと共に病室を出た。
家へ帰る途中、俺はいのに謝った。「サスケを連れ戻せなくて、すまん。」と。
しかしいのは、「何言ってんの!あんた達が無事で帰ってきてくれればそれで十分よっ。」と言って笑った。
よく任務の打ち上げをする焼肉屋、「焼肉Q」の前を通ったときだった。
ドクンッ。俺の心臓は大きな音をたてた。
前方にテマリの姿。
鼓動が早くなる。息が苦しい。何でなんだ?
いのもテマリに気づいた。
「あ、テマリさぁん!」
「ああ。」
「一人なんですかぁー?」
「ああ、そこまで買い物をな。…ん?」
テマリが俺に気づく。顔が熱い。…やっぱ俺病気だ。
「シカマル、顔が赤いぞ。さっきから無口だし。熱でもあるんじゃないか?」
そう言ってテマリは俺のでこと自分のでこに手を当て、熱をはかる。
「!!」
驚き、更に動悸が激しくなった俺は思わず後ずさりした。それも豪快に。
いのは何故かニヤッと笑う。そして、「ごっめーん、テマリさん。こいつちょっと熱あっておかしくなってんの!なんで今は失礼しまーす!」テマリにそういうと俺の背中を押し、足どり軽くテマリと別れた。
つづく。