翌日、テマリとシカマルは三人一組で任務に出ることになる。

任務は昨日逃した抜け忍の頭を始末すること。

当然三人一組のフォーメーションなため、あの砂の上忍もいる。

実はこの任務とフォーメーションは、シカマル自らが風影に頼んでやらせて貰っているのだ。抜け忍の頭の居場所も彼が推測した。

「よし、準備はいいな。」

朝早くに病院を出る。隊長はテマリのままで任務は遂行される。テマリがシカマルの方を見ると、彼は軽く頷いてみせた。

昨日あの後、自分がシカマルに全て話したことや、シカマルの怒った顔、奴が「俺に任せろ」と言ったことを思い出す。シカマルが怒った顔をテマリに見せるのは珍しいことだった。こんなにも思ってくれているというのを実感し、テマリはどこかこそばゆく感じていた。

そしてやはりまた、よく思ってないのはあの砂の上忍である。シカマルとテマリはそんな上忍を横目に、任務に向かった。

「ここらだな。」

テマリ率いる三人は、抜け忍がいると思われる場所にたどり着いた。それは昨日の場所から少し離れた、小さな洞窟。三人は一旦前線付近に集まり、作戦を確認することになった。

「それではここまで来たわけだが…作戦を確認する。敵は抜け忍のリーダーだ。昨日のような数だけの下っ端とは訳が違う。」

地図を囲んで円を作り、テマリが話を進めていく。

「向こうも馬鹿じゃあない。今日も私達が来ることぐらい分かっているだろうから、他に仲間を呼ぶはずだ。…そこでだ。奴らに奇襲をかける。」

そう言ってシカマルに目を向けると、彼は頷いて答えてみせた。次にテマリは問題の上忍へと目を移す。

「その役を上忍殿にお願いしたいのですが。」

「…俺に?」

いきなり振られ、上忍は驚きの声を上げた。

「はい。この任務の結果は奇襲によって、良くも悪くも変わります。こんな重要な役は一番年上で経験豊富なあなたにしかできないと。」

そう言えば上忍は気をよくして、その奇襲の役を引き受けた。

「それじゃあ、仕掛けたら私達に分かるよう合図してください。援護に向かいますから。」

「ふん、分かっている。まあそんなことしなくとも、俺が全て片付けてきてやろうではないか。お前や木ノ葉の連中の助けなどいらん。」

「はあ…頼もしい限りです。」

テマリは顔を引き攣らせ、笑って見送った。密かに拳を握るテマリの姿を見てシカマルも唾を飲む。

上忍はと言うと、慣れたように洞窟の中に入ってしまった。

「作戦成功だな。あんたおだてるの上手いじゃねーか。」

「どうせ上辺でしか思ってないからな。…それより…。」

「あんたらしくねえ、心配すんなよ。今あの人を行かせたのに訳があんだから。」

実を言うと、昨日の任務の失敗は砂の上忍の協調性の無さが原因でもあったのだ。シカマルはそれを知っていて、わざと奇襲の役をそいつに行かせた。だからシカマルの作戦は、先程の奴をおだてることから始まっている。

「大丈夫だ、あんたは俺より強いし頭もいい。あの上忍に見せつけてやろうぜ。」

シカマルがテマリの肩を叩き、洞窟へ向かって歩いていく。するとちょうど、上忍からの合図が来た。

「いくぞ!」

「ああ!」

「う…うわあああーっ!」

途端に洞窟の中から悲鳴が聞こえた。あの上忍の悲鳴だ。

二人は声のした方へ向かった。

そこは洞窟の最深部だった。一目見て、テマリは目を見開いた。何人もの人、人、人。

抜け忍は山賊やら盗賊やらに助けを呼んでいたのだ。

その中に、砂の上忍がいるのを二人は見た。先程までのあの姿はどこへやら。敵に捕まって、すっかり戦意喪失していた。

するとシカマルが自身のポーチの中に手を入れる。何かゴソゴソと探し、シカマルが取り出したのは二つの光玉だった。

それを見たテマリは、シカマルの意図に気づく。シカマルに「目を閉じてろ。」と言われる前に彼女はそうしていた。

岩影からシカマルが光玉を投げた。それは強い光を放ち、敵の目をくらます。その間にシカマルは光によって自身の影を大きく伸ばし、敵を殆ど全員捕まえてしまった。

「テマリ、行け!」

「分かってる!」

目を開けたテマリは、背中の巨大扇子に手をかけた。

「大かまいたちの術!」

テマリが扇子を一振りすれば、シカマルに捕まえられていた敵が一瞬にして倒されていく。

目の前の状況に上忍と抜け忍の頭は呆気にとられ、シカマルはテマリに笑顔を向けた。

これで終わった、と思っただろうがそうはいかない。

呆気にとられる抜け忍だったが、クナイ片手に上忍の身柄を確保したのだ。そのクナイを彼の首元に持っていく。そしてニヤリと笑った。

「これで今までのようにいかねえぜ!昨日の人質のようにこいつもやってやる!」

「なっ…や…やめてくれ!」

そう請うのは上忍だ。上忍というには情けない姿。同じ上忍として信じられない姿だと、テマリは思わざるをえなかった。抜け忍は高笑いをして、シカマルとテマリに言った。

「いいかてめぇら、俺をやるってんならこいつを殺す!もしこいつの命が惜しけりゃここに武器を置いて立ち去れ!」

抜け忍の言うことは本気のようだ。上忍は間抜けな声を上げる。暫く三人とも動かなかった。睨み合い、一歩も動こうとはしない。

シカマル、テマリ、抜け忍の間に緊迫した空気が流れた。

ついに動いたのは抜け忍のほうである。向かいにいる二人に痺れを切らし、上忍を殺すことを選んだのだ。持っているクナイを更に首につきつけた…だけならまだ良いのだが、この抜け忍、何を思ったのか懐から何枚もの起爆札を出してきた。

「…てめぇらの答えはよく分かった。だがな、こいつは殺してもお前達は逃がさねえ!俺はお前らに捕まるようなヘマはしねえ…俺もろとも吹っ飛んでもらう!」

「…何馬鹿な事言いやがる!」

「馬鹿じゃねえ!むしろ潔いと言ってもらいてえな!捕まるくらいなら死のう…って……!」

「ギャーギャー喚くなよ…うるせえ。」

突然、敵の動きが止まった。
シカマルの影真似の術でる。

シカマルの合図でテマリはもう一度扇子を構え、敵の方へ走って行く。そして敵の真上から扇子を振りかざした。

「はああああっ!」

「ぎゃああああああ!」

ガンッ!


頭に巨大扇子の鉄部分を喰らった抜け忍は、その場に倒れてしまった。

その後、そこに残るのはシカマル、テマリと上忍の三人。テマリは上忍を解放すると、彼を見下ろしながら言った。

「全く…情けない。それでも上忍か。男のお前が私に助けられてどうする。」

「あんた見たろ。テマリ強い。この人を悪く言うなんて身の程知らずなんだよ。」

すると上忍は悔しそうに唸って、俯いてしまった。

「…悪かった。昨日の言葉は取り消そう。」





抜け忍の頭も拘束し、上忍との問題も一応解決した。これで任務完了。木ノ葉で休むよう言われたテマリは、任務の打ち上げとしてシカマルと甘栗甘へ来ていた。

「今回はお前に助けられたよ。恥ずかしい所を見られてしまったが…。」


甘栗を頬張り、口ごもらせるテマリ。だがシカマルはそんな事も知らないで、飄々と返事をする。

「いーよそんなの。俺も昔助けられたし、五分五分ってことで。」

「…そうか…まあ…そうだな…。」

「ああ。」

「…………。」

「…………。」

「………シ…シカマル…。」

「ん?」

「……その…ありがとう…な。」

「え?」

「なんでもない!」

END


Lark様…大変お待たせ致しました!相互記念小説でございます!
Lark様へ素敵な小説を送りたいと思い書いた結果…こんなにお待たせてしてしまいました。申し訳ございませんでした。

晴れて完成したこの小説。すごく嬉しいのですが、ツッコミどころ満載ですね!つじつま合わせるために、上忍が弱すぎる!シカマルくんやテマリさんのキャラが違う、頭が悪い!やらその他諸々(^p^)作戦もどこか見たことあるようなものです…。

Lark様、何かありましたら書き直したり致しますので、何なりとおっしゃってください!

ありがとうございました!お互い更新がんばりましょう!これからもよろしくお願いしますね!
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -