テマリは声を出さないように唇を噛み締め、静かに涙を流した。


任務の失敗、というもの程テマリにとって悔しいものはない。まして自分が原因となると、テマリは絶対許せない。


テマリの頭の中では先程の任務での出来事が、繰り返されていた。




今日は砂と木ノ葉の合同任務で、砂からはテマリと砂の上忍、木ノ葉は奈良シカマルと木ノ葉の忍という四人一組で行った。

任務はたいして難しいものではない。

木ノ葉と砂の大名が会談するとの事で、その会場付近である国境に出没する抜け忍を退治、拘束しろとのことだった。

テマリが隊長として事が運んだこの任務。テマリが抜け忍の情報を集め、それを頼りに抜け忍を討伐する。

粒ぞろいのこの隊には本当に簡単な任務である。

しかし、一つだけ厄介な事があった。その班の一員である砂の上忍(大柄な男なのだが)が、今だに五代目風影をよく思っていなかったのだ。

もう砂に住む民や忍の殆どが風影を信頼しているのに対し、ごく少数ではあるが上層部に近い忍には、まだ風影を信頼していない者がいた。

五代目風影とは、我愛羅。つまりはテマリの弟である。

テマリは任務前、少し嫌な予感がした。

その上忍は上層部に近いということに付け上がり、嫌味を言うことで有名なのだ。

テマリの予感は的中した。

任務中、彼女は大きな失敗をする。人質に致命傷を負わせ、抜け忍の頭を逃がしたのだ。

隊長として、自分が指示を出して進めた任務が失敗に終わってしまった。テマリはそれが悔しくて悔しくて。

任務後、病院でテマリは砂の上忍に、すれ違いざまにこう言われた。

「どうしてあんな初歩的なミスするかね。」

自分が悪い、ということはテマリが一番分かっていること。しかし上忍のその行動があからさまで、流石の彼女もカチンときた。

が、テマリは何も言い返そうとしなかった。反論の言葉はいくらでも出てきたのだが、なんだか負け犬の遠吠えのような気がしてならないからだ。
そして何も言い返さないテマリが面白くなかったのか、上忍は再び口を開いた。

「風影の姉が…聞いて呆れる。」

「風影の庶務で腕が鈍ったか。全く、今の風影は本当に昔から手を掛けさせる。」

「上忍と言っても所詮は女か。結局男より劣ってるんだからな。」




……………

それらの言葉が、何度も何度も繰り返される。テマリの心を刺しては痛め、涙を誘った。

風影…我愛羅を馬鹿にされ、女であることを馬鹿にされた。おまけに任務も失敗したのだ。

プライドを傷つけられたテマリは、そのまま誰にも知られないように病院の屋上に行き、静かに泣いた。


「お。…テマリ…?」


そこにやってきたのは奈良シカマルである。一眠りしようと屋上にやってきたのだ。

テマリは俯いて肩を震わせていた。声を掛けたシカマルだが、そんな彼女を見てドキリとした。

一目で分かった。テマリが泣いているのだと。

気の強いテマリが泣くのを見るのが初めてなため、シカマルは驚いてしまった。

「なんでここにいるんだ…。」

シカマルに気付いたテマリが言った。泣いているため、話すのがもどかしく感じる。

「何って、昼寝しにだけど…。」

「……っ…こっち来るな!あっち行けぇ…。」

いつも「泣き虫くん」と笑っていた奴に、自分の泣き虫を見られるのが恥ずかしい。シカマルがうざったくて、テマリはますます下を向き目の前の彼の肩を押す。

「んな事言われても…あんた泣いてるじゃねーか。」
「泣いてない!」

「何があった?」

「言いたくない!」

「…心配なんだけど。」

「うるさい!」

「意地張ってんじゃねー。」

「!」

突然、テマリの視界が真っ暗になる。優しい温もりに通常より速い心音。自分がシカマルの腕の中にいるのに気づくまで、そう時間はかからなかった。

「…離してくれないか。」

「離さねえ。」

「……。」

「気ぃ強いあんたがこんな状態なんだ。心配するのが当たり前だろ。」

「……シカマル…。」

「まずは落ち着け。その後はあんたの好きにすればいい。」

シカマルの胸に耳をつけているから、シカマルの鼓動がよく聞こえた。普通より速い心音から、今奴は緊張しているのだとテマリは分かった。

シカマルは、テマリを抱きしめることなんて滅多にない。手を繋ぐことも、唇を重ねることだってない。

不慣れなことにシカマルは微かに震えていて。

そういえば自分の心音も速くなっているのにテマリは気付いて、照れ隠しに「お節介なんだよ」と呟いてみた。

「馬鹿…」と小さな返事が返ってきただけで、余計に照れてしまった。


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