死ぬかと思った。

第四次忍界大戦最中のこと。

戦争も長期戦になり、俺は元いた第四部隊に戻り、我愛羅やテマリと合流した。

部隊長代理なんて重荷を背負いながら、頭をフルに使って何度も何度も考え、仲間に指示を出す。
それでも周りの忍はバッタバッタと倒れていき……。

プレッシャーに押し潰されそうになる日々が続き、精神が参っていった。


そんなある日のことだ。

俺は隙をつかれ、死角から敵の攻撃を受けた。気づいたときにはもう避けれないほどの距離で、死を覚悟せざるを得ない状況。

もう意味ないが、反射で腕を前に、自分の身を守る体制に入る。死を恐れて、俺は固く目を閉じた。

「…………。………?」

しかしいつまで経っても何も起きない。攻撃を受けないのに不思議に思い、恐る恐る目を開けた。

俺の目の前にいたのは。

「あ……。」

「部隊長代理がボヤボヤしてんじゃないよ。」

「……テマリ。」

俺の目の前にいたのはテマリだった。俺に向けられた攻撃を、テマリが跳ね返してくれたのだ。

「どんなもんだ?」

あの時と同じ台詞。もう3、4年程前にもなった、あの出来事を思い出す。音忍と戦ったときの、あの
テマリの笑顔。

昔と全く変わらないその笑顔に、不覚にもまた見とれてしまった。




それから数年。

俺は思い切ってテマリに告白し、恋人になった。頑張ってプロポーズもしてOKももらえた。

テマリと結婚して子供もできて。もうめんどくせーなんて言ってられない。家族のために任務をこなす日々が続いていた。

それが俺の幸せ。

今日も娘のリシカを風呂に入れた後のこと。

「こらリシカ!ちゃんと体拭いてから上がれって言ってるだろう!」

「きゃー!」

タオル一枚で風呂から上がってきたリシカにテマリは叱った。最近段々母ちゃんに似てきている気がする…。

リシカはテマリから逃げるようにして走り回っていた。

四歳だからまだ大丈夫なものを…。

思わずため息をついた。そして走り回ってこちらに近づいてきたリシカを捕まえてやる。髪を拭いてやると、リシカは嬉しそうな声を上げた。

「ったく、お前な…風邪引いても知らねーぞ。」

「別にいいもん!」

「はあ?」

そう言って笑い合っていると、周囲の空気が暗くなるのを感じた。それがなんなのか分かるまで、時間はかからなかった。眉間にしわ、仁王立ちの体制でテマリが俺達を見下ろしていたのだ。

あまりの怖さに俺達は口を開けて固まってしまった。

「何が風邪引いても別にいいだ!リシカお前な、風邪なんか引かれちゃ父さんも母さんも任務で忙しいから看病できないんだぞ。」

「それならおじいちゃんがいるじゃん!」

「何言ってる!おじいちゃんだって忙しいんだぞ。迷惑かけたくないだろうが。……シカマル、リシカと笑ってないでお前からもなんか言ってくれ。」

いきなり振られて驚いてしまった。が、テマリの意見もごもっともである。ここは父である俺からも言ってやらなくては。

一つ咳ばらいして、父の威厳を見せた。リシカはキョトンとしてたがそんなこと気にしない。

「母ちゃんの言う通りだぞリシカ。風邪引いたって良いことなんて何にもねえ。治るまで外で遊べねーんだぞ。」

「あっそー。」

「リシカ!」

俺の言葉を適当にあしらったリシカを、テマリが再び叱った。リシカは罰が悪そうに体を小さくする。

俺はテマリと顔を見合わせて、ため息をついた。



その後テマリは夕飯を作りにキッチンへ。俺はリシカの髪を乾かしてやるためにリビングへ向かった。

ドライヤー片手に手招きすれば、いつもリシカは俺の膝に乗る。さっきのテマリから解放されたリシカは、幾分清々しい顔をしていた。

「ねー、お父さん。」

「ん?」

髪を乾かしている途中、ふいにリシカがこちらを振り向いた。その瞬間ふわりとシャンプーの香りが俺の鼻をくすぐる。


「えっとねえ、お父さんにいいたいことあるの。」

「なんだ?」

「なんでお父さんはお母さんとケッコンしたの?」

「は?」

一瞬、何を言っているんだこいつは、と思ってしまった。しかしだ。よく考えてみると、子供ってそんなもんなのかと思う。これを見てみろ、純真無垢なリシカの瞳。

リシカは「ねえ、なんで?」と聞く気満々だ。逆に何故そんなことを聞いてきたのかを問うと、「お母さんが怒ると怖いしめんどくさいから。」だそうだ。

…やはりこいつは俺の子なのだ。昔、ガキの頃親父に同じことを聞いたんだから。それに理由まで同じとなると、俺のDNAをそっくり受け継いでんだなんて返って嬉しくなる。

昔親父が言った言葉を思い出し、笑みが零れた。

「そうだな…母ちゃんの笑顔が好きだからかな…。」

「…それだけ?」

「ん…まあ母ちゃんの笑顔が好きになったのに理由があんだけどよ…「お前が敵にやられそうになったのを助けてやったんだよな?」

「ちょ…テマリ!」

「しかも二回ともな。」そう言い付けたして、いきなりテマリが話に入ってきた。夕飯の支度をしているはずの彼女は、してやったりという顔をしている。

つーかそこんとこ、リシカにどう言おうか考えてたのによ…。そう言われちゃ親父としてかっこつかねえじゃねえか…。

テマリはふふんと鼻を鳴らすと、キッチンへ戻っていった。

リシカは俺の顔を面白そうに凝視している。

「お父さんほんとー!?お母さんに二回も助けられたんだ!二回も!!」

「そこ繰り返すなよ…。」

「やっぱりお母さんって強いんだねえ。」

「ん、まあ…それで助けられた後に見せてくれた笑顔が好きになったんだよな…。いつもキツかったから、笑ったときはすげぇ印象的だったな。」

「ふうん…。」

そうだ。あの時見た、テマリの無邪気な笑顔。

あのテマリの笑顔に何度も救われ、純粋に彼女が好きになった。

そして何年もの間想いつづけた彼女が、今は自分の嫁さんになっている。これほど幸せなことはあるだろうか。

この幸せをテマリにリシカに、俺が与えていく。今までだってそうだし、もちろんこれからも。

「お父さん!」

「ん?」

思いにふけっていると、リシカが俺を呼んだ。身を乗り出して、何か言いたそうな顔をしている。「どうした?」と聞けば「あのね、」と嬉しそうに口を開いた。

「あのね、お父さんの話聞いて思ったんだけどね。」
「おぅ。」

「要するにお父さんはお母さんより"女々しい"んだよね!」

「お前どこで覚えてきたそんな言葉!」


END


お待たせいたしました、玲子様リクエストでした!

文才ないくせにダラダラと申し訳ありません。何を伝えたいのかよくわからなくなってしまいました汗

玲子様リクエストありがとうございました!これからもよろしくお願いします!
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