奈良家の一日は、朝早くから始まる……。


ドタドタドタ…

家中に響く慌ただしい音が耳に入り、それが段々こちらに近づいて来るのを感じてシカマルは布団の中に身を隠した。

次の瞬間勢いよく部屋のドアが開けられ、容赦なくシカマルの上に何かが重くのしかかる。

「うぐっ……。」

「おとーさあん!朝ごはん!」

「…アスカ、父ちゃん死んじまうぞ?」

「だって、おかあさんがこうしないと、起きないって。」

毎朝恒例になったこのやりとり。シカマルは渋々布団からはい出た。目の前にはニコニコ笑う小さな女の子。

もう察しの通り、この子はシカマルの愛娘、アスカである。

キリリとした大きな目に長い睫毛、勝ち気に笑うその口元。サラリとした綺麗な黒髪は正にシカマルとテマリの子そのもの。

アスカは現在5歳。
なんでも覚えて、今では口達者な娘に育ってしまった。

されどまだ5歳。上手く回らない口で、「おとうさん、はやくぅ!」なんて手を引っ張る姿はなんとも可愛らしい。

シカマルはアスカを抱き上げて、茶の間へと下りて行った。




茶の間へ下りると、朝食のいい匂いが立ち込める。キッチンで朝食を作っているテマリが目に入った。

「おはよ。」

「……ん、おはよ…。」

寝起きのヘラリとした笑顔を向ける。そんな彼に、テマリは「しゃきっとしろ。」と微笑み返した。


テマリが作った朝食の鯖味噌を食べ終え、支度をしてシカマルは任務に行く。

しかし玄関に向かおうと廊下に出たとき、何かに両足を掴まれてしまった。実はこんなことは日常茶飯事。シカマルは自然と零れる笑みを感じながら、足元を見た。そこには両足に抱き着いているアスカの姿。

「おとうさん行かないでえ…。」

ぎゅうっとして離さないアスカにやれやれと、アスカを足に抱き着かせながら玄関へ向かう。

「やー!」

アスカは嫌がるような、しかし半ば楽しそうに声を上げた。

と、そこにやってきたのはテマリだ。

「アスカ、お父さんの邪魔するなよ。」

「だって…」

「だってじゃない。お父さん困ってるぞ。」

するとアスカはムッと拗ねてしまった。シカマルとテマリは共に顔を見合わせ、苦笑いをする。

「アスカ、父ちゃん今日の任務はそんな対して危なくないからよ、すぐ帰ってくるぜ。」

「本当…?」

「ああ。だからお前、父ちゃんの変わりに母ちゃんの事守ってやれ。」

シカマルはしゃがみ込んでアスカの目線に合わせた。

「なんたってお前、姉ちゃんになるんだからな。」

「……うん!アスカ、おかあさんの事、守るよ。お手伝いとか、する。」

その会話を聞きながら、テマリは自分の大きくなった腹を愛しそうに撫でた。

実はテマリは今、妊娠していた。二人目で7ヶ月である。


自分が姉になると知ったとき、アスカはすごく喜んだ。両親が現役の忍であるアスカ。いつも祖父であるシカクの家に預けられて少し寂しかった。それに、周りの友達に兄弟がいることに羨ましくも感じていたのだ。

だからアスカが喜ばないはずがない。テマリのお腹が大きくなるにつれアスカの姉意識も大きくなっていき、今ではなんでも手伝うようになった。


シカマルはアスカの頭をくしゃっと撫でてやった。するとアスカから「いってらっしゃい」と頬にキス。

それが嬉しくてシカマルの頬が緩んで、アスカに「土産買ってきてやるよ。」なんて約束してしまった。

「……テマリ、あんたからはねーの?」

「馬鹿、アスカが見てるだろうが。」

アスカがキスしてくれたんだからテマリからも…と言ってみるがあっさり拒まれ。拒まれたくせに少し楽しそうな表情でシカマルは家を出た。

「んじゃ、行ってくるぜ。」

「気をつけろよ。」

「バイバーイ…。」



愛する家族に見送られながら。

END



完成しました、アンケート第二位、家族(シカテマ+子供)でした!

今回はアスカです。なんかシカマルくんデレデレさせすぎたかな。ちなみにテマリさんのお腹の中にいるのはシカイチくんです。うふふ。

微妙な終わらせ方ですみません(汗

ここまで読んでいただきありがとうございました!
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