「はあ…。」
「………。」
これで何回目だろうか。シカイチの事でアカデミーから呼び出されたのは。
アカデミーからの帰り道。
私がアカデミーの先生に呼び出された理由はこうだ。
なんでもシカイチと、同じクラスの男の子が取っ組み合いの喧嘩をしたらしい。それで相手に怪我を負わせたと。
一回だけならまだしも。
実はもう何度も同じことで呼び出されているのだ。
そんな事になった理由はわからないのだが…。
シカイチを見ると、俯いたまま口をへの字に曲げていた。
……こいつはシカマルと私の子だ、何も理由なしに殴るということは決してないだろう。
そう思えばますます理由がわからない。
私はシカイチに、直接聞いてみることにした。
しゃがみ込んでシカイチと目線を合わせる。
「シカイチ…なんでいつも同級生を殴るんだ?」
「………。」
「母さん、お前はただ理由もなく殴ることはしないと思ってるんだが…。」
「………。」
ダメだ。シカイチは余計に口を固く結んでしまう。
目線を逸らすシカイチを見て、また溜息をついてしまった。すると呆れられたと思ったシカイチは、慌てて口を開く。
「わりぃ…その……母ちゃんには言えねーんだ。」
「…?」
母ちゃんには言えねーって、なんだよそれ。私には都合の悪いことなんだろうか。
しかしアカデミーの先生だって喧嘩をする理由はわからないと言う。
こうも口を閉ざすんだとしたら、いじめとかじゃ…ないよな?
「……そうか。」
深く聞けなくて、まだ理由がわからないままシカイチの手を引いて帰った。
「はあ…。」
「どうした?」
夕方、夕食を作っている時にまた溜息がでてしまい、任務から帰ったシカマルに聞かれてしまった。
無意識に溜息を出すほど私は悩んでいたらしい。比較的サバサバしている私が悩み事なんて思うと少し恥ずかしくなった。しかし、心配して声をかけてくれたシカマルに、少し嬉しくも感じた。
ここは一人で悩むより、シカマルに頼ったほうがよさそうだ。
「シカマル。シカイチのことなんだが…。」
「ん、おう。」
「また喧嘩したらしい。さっきアカデミーから呼び出されて行ってきた。」
「またかよ?」
さすがのシカマルも驚いていた。
呼び出される度ではないが、私はシカマルに前から相談していたのだ。
「…理由を聞いたら、シカイチのやつ私には言えねーって言うんだ。」
「ん…。」
「なんでこんな事するのか先生もよくわからないって。」
「なんだそりゃあ…。」
シカマルは参ったという風に頭をかいた。
私に言えないと言うことは、私が関係していると言うことか。もしかしてシカイチはホントにいじめられているのかもしれない。私が砂出身でどうとか…。
私のせいでシカイチが…。
「大丈夫か?」
シカマルの声でハッとした。シカイチの事を考えて手が止まっていた。シカマルは心配そうな表情で私を見ている。そんなシカマルに笑ってみせるが、苦笑いしかできない。
「シカイチが心配か?」
「そりゃそうだろう…。」
らしくもないが悪い方向に物事を考えてしまう。胸が辛くなって一息おくと、温かいものに包まれた。シカマルの腕だ。
「ちょっと……。」
「わりぃ。でもよ、あんたがすげー辛そうな顔してっから。」
「…慰めてるつもりか?」
皮肉まじりに返すと、シカマルは小さく笑った。
「あいつは大丈夫だ。あんたが思ってるようなことにはなってねーよ。」
「そうか…?」
「あぁ。シカイチのやついつもアカデミーの話楽しそうに話すからな。…でも一応あいつに聞いといてやるよ。
「シカマル…。」
シカマルの言葉に、少し気が楽になった。夫の優しさに、胸が暖かくなる。シカマルの腕に触れると、頬にキスをされた。
「バカ、シカマル。」
「いいだろ少しくら…」
ガチャッ
「母ちゃん喉かわいたー……って、何やってんの?」
シカイチがキッチンに入ってきた。顔が一気に熱を持ち、心臓が飛び跳ねた。シカイチは恥ずかしがる様子はないが眉間にしわを寄せ汗を流して私達を凝視している。
私は咄嗟にそこにあったフライパンをとった。
「うわあああああああ!!」
「テ…テマリやめろ!!」
ガスンッ
…………………。
「父ちゃんすげえたんこぶ。」
「うるせー。」
あの後テマリにフライパンで殴られた俺はシカイチと共に湯舟につかっていた。
テマリに風呂に入ってこいなんて怒鳴り散らされたからだ。……それにしてもフライパンはねーんじゃねーの…。
できた俺のたんこぶを触ろうとするシカイチを抑止させ、じっと見つめる。
テマリには前々から聞いていたが、こいつが喧嘩なんてめんどくせーことをするなんてなあ…。
「なんだよ父ちゃん?」
「いや…お前、またアカデミーで喧嘩したらしいな?」
「!………。」
シカイチは不機嫌そうな表情で目をそらし、口を閉じてしまった。
「黙ってんのかよ?」
「………。」
「母ちゃん心配してっぞ。」
そう言うとシカイチは渋々話し出した。テマリがどうとか言えばいつもシカイチは折れる。こいつは母であるテマリの事が好きだからだ。
「……わかったよ、俺もうそんなことしねーから。」
「それもそうだけどよ、んな事聞いてんじゃねえよ。」
少し睨んだが、シカイチは一向に話そうとせず、「父ちゃんには関係ない。」と言うだけだった。
結局、もう喧嘩はしないと約束しただけで終わった。
それからはシカイチは喧嘩するということはなく、普通に日常を送っていた。ただ、理由だけはわからないまま。
それでも私は少しだけ安心できた。
……しかし。
一ヶ月程たって、またアカデミーに呼び出されることになる。…また取っ組み合いの喧嘩が起こったというのだ。
アカデミーから出たとき、私はいても立ってもいられなくなりその場でシカイチを叱ってしまった。
「シカイチお前…。」
「………。」
息子の目線に合わせるためにしゃがみ込んだときだった。シカイチと少し離れたところに、女の子がこちらを見ているのに気づいた。大人しそうなその子は、ブランコがついている木の後ろに隠れて、こちらの様子を伺っている。
凝視していると女の子は意を決したようにこちらに近づいてきた。
「あの…シカイチくんのこと、怒らないでください…。」
「え?」
「あ!お前!」
シカイチは女の子を見ると慌てたように声を荒げた。その子は「ご…ごめんね。」とシカイチに謝ると、私に向き直る。
しかし、どうしてこの子が謝るのか全く意味がわからない。
「どういうことだ?」
「…わたし…いつもクラスの男の子にいじめられてて…シカイチくんいつもわたしの事助けてくれるんです…。だから…シカイチくんは何も悪くなくて…。」
「!」
と言うことは、シカイチはこの女の子のために喧嘩していたというのか。
シカイチは照れ臭そうに頬を赤らめて俯いてしまった。
…もしかしてこいつ……。
女の子は「ありがとうシカイチくん。」と息子の手を握って行ってしまった。そんな女の子に、ますます顔を赤くするシカイチ。
「俺もう帰るからな!」
ぶっきらぼうに言い捨て、足はやに家路についていく。
そんなシカイチが可愛くて、思わずクスリと笑ってしまった。
END
つばき様リクエスト、「シカテマ+子供」でした!それにしてもアスカがでてない!無駄に長い!で、グダグダですみません…。文章力なくてすみません…。
要するにシカイチくんはあの女の子が好きなんですよ。うふふ。
つばき様リクエストありがとうございました!またよろしくお願いします!