シカマルとケンカした。
ほんの些細な事だったが、私はシカマルに「口も聞きたくない。」と言って扇子で殴り、シカマルの家を飛び出した。シカマルは殴られた頬を抑え、私をずっと睨んでいた。
風の国に帰ると、我愛羅に「話がある。」と言って呼ばれた。
いつになくかしこまっている。
なんだ…?
風影室に入るなり、我愛羅は私の顔を見て「何かあったのか?」と聞いてきた。
「え…?なんでだ?」
「いや、いつになく悲しそうな表情をしてるからな。」
「そうか?…なんでもないよ。」
無理矢理笑顔をつくって、我愛羅に微笑む。しかし、どことなくひきつっているのが自分でも分かった。
「それはそうとして、本題に入るのだが…。」
「ああ、そうだったな。
なんだ?」
すると我愛羅は躊躇っているのか、少し間を置いてから口を開いた。
「同盟国から縁談の話が来ている。」
その言葉を聞いたとき、一瞬時が止まったような気がした。
同盟国からの縁談…。要するに政略結婚。
「これについては、一応本人に話して検討してみると言っておいた。」
「……」
政略結婚…。これを断れば、戦争になり兼ねない。
「しかし、お前には奈良シカマルが「わかった。この話、承諾するよ。」
「!!」
我愛羅は驚いていた。縁談の話を保留にしておいてくれたのは、私とシカマルが付き合ってることを知ってるから。
「本当にいいのか?見ず知らずの男と結婚するんだぞ!?」
「我愛羅…何言ってる。ここで断ったら、戦争になり兼ねない。私は自分より、里の方が大事だ。」
「……」
「そういうことならあいつだって分かってくれる。それに…」
その時、私を睨むシカマルの顔が頭の中に浮かんだ。
胸がズキン、と痛む。
「なんでもない…。」
そう言って風影室を出た。
<シカマルSide>
綱手様に「急を要する用事だ。」と言われ、俺は火影室に来ていた。
「シカマル、落ち着いて聞け。」
「…何かあったんすか?」
あんなにかしこまって。なにかめんどくさい任務なのだろうか?
「…テマリが政略結婚するそうだ。」
「!!!」
体に電流が走ったような衝撃を喰らった。
テマリが…結婚?それも、見ず知らずの男と?
「テマリはこの縁談を承諾しているらしい。」
綱手様の言っていることが分からない。俺はただ茫然と立っていた。
テマリは本気なのか?俺の事はもう…。
そう考えていると、この前テマリとケンカした事を思い出した。
(もうお前とは口も聞きたくない!!)
(そうかよ。俺だって、お前みたいなめんどくせー女はごめんだぜ。)
我ながら、すごく酷い事を言ったと思う。あの後のテマリの泣きそうな顔を思い出すと、胸が痛んだ。
…もしかして、あれが最後の会話になったのか…?
「…シカマル?」
綱手様の言葉を無視し、俺は火影室を勢いよく飛び出した。
<テマリSide>
ついにこの日が来た。式が行われるため、私はドレスを着て、メイクもさせられた。
相手は大名ともあって、式は盛大に行われる。
ガチャッ
部屋のドアを開けたのは、後輩のマツリだった。
「テマリさん、時間です。」
「あ、ああ…。」
マツリについていくと、正装姿の男が立っていた。
「!あなたがテマリさんですか?」
「はあ…。」
どうやら、この男が私の夫になるらしい。結構若くて好青年だ。
…シカマルとは大違い…。
式は順調に進んだ。
そんな中、私はシカマルの事を忘れようと必死だった。
大丈夫。この人なら私を幸せにしてくれる。
そして式は終わりを迎えようとした。
そう、お約束の誓いのキスを残して。
神主の合図で、その時は来た。
彼の顔が近づいてくる。
その時、私は縁談を承諾したことを後悔した。忘れようとしていたシカマルとの思い出が一気に蘇る。
初めて会って、敵どうしとして闘ったこと。
シカマルが私のことが好きだといってくれたこと。
一緒に昼寝したこと。
初めてキスされたときは、あいつのこと殴ってしまったなあ…。いきなりだったし。
全てのシカマルとの時間が私をとりまく。
私はこんな結婚望んでいない。私が望んでるのは−
気がつくと、彼の顔が目の前まで来ていた。
私はとっさに目をつむり、心の中で叫んだ。
シカマルッ…
バァンッ
「テマリッ…」
勢いよく扉が開いた。扉の向こうに立っていた人物。それは−
「シカマル!!」
私は嬉しさのあまり、シカマルのもとに駆け寄り、シカマルの胸に飛びついた。
シカマルも私を受け止め、抱きしめる。
「テマリ…」
「ごめん…ごめんなあ…シカマル…。もう絶対お前の傍を離れない…。好きだ…。大好きだよ、シカマル…」
「ああ…」
二人幸せに浸っているも、それを見て会場は黙っていない。
特に向こうの国の大名たちが。
すると、戸惑いを隠せないでいるシカマルに、我愛羅は言った。
「行け。ここは俺に任せろ。」
「え?」
「心配するな。俺がちゃんと話す。」
それを聞いて、シカマルは「すまねぇ。」と言い、私の手を引いて走り出した。
どれくらい走っただろうか。二人とも息があがっときた。
「もうここらで大丈夫じゃねぇか?」
「そうだな。」
シカマルはふう、と一息ついた後、私を見つめた。
「なんだ?」
「テマリ…結婚してくれ。」
「!!」
いきなりすぎるシカマルの言葉に驚いた。
「ちょうどお前ドレス着てるし…。なんならここで結婚するか?」
「へ…」
冗談かと思いきや油断していたら、唇を奪われた。
それは深く、一生忘れられないものだった。
終わり。