「別れよう。」

さっきから俺の頭の中で、テマリの言葉が渦巻いている。

テマリと別れた。

それは、いきなりのことだった。

五代目から「テマリが任務で来るから案内しろ」と命じられ、柄にもねーが浮足立って門へ向かった。

何ヶ月ぶりかに見るテマリ。しかしどこか表情が曇って見える。

「どうした?」と聞けば少し躊躇った後、テマリは意を決したように俺を真っ直ぐ見た。

そして冒頭に至る。

全く訳がわからない。勝手に別れようと言われ勝手に別れさせられて。

彼女はこうも言った。

「お前の未来に私は一緒にいれない。」



「何言って…」

「私がお前の隣にいることは相応しくない。」

つまりなんだ、自分が俺といつも一緒にいれない事に不安を覚えたらしい。

俺とテマリは他国の人間だ。それを百も承知で俺はこいつを好いているのに、何を今更。

「ずっと悩んでいた。お前の側にいたい時にいれない。それがすごく寂しくて。お前が離れていくんじゃないかと思うと辛くて仕方なかった。」

「んな事ねーよ。」

しかしテマリは力無く笑い、「私には自信がない。」と呟いた。

こうなる決め手になったのは、以前俺が里の女と一緒にいるのを見たことと言うのだ。

「私以外の女といるほうが、お前は幸せだ。私の事は……忘れてくれ。」

そう言ってテマリは俺の前から去った。



あれから数日。

やっぱり俺の頭の中はテマリの事ばかり。任務にも力が入らない。

テマリはまだ木ノ葉にいるようだが、俺は会わないよう避けられていた。

テマリ……。

彼女の名前を口にして、少し笑えてきた。「めんどくせー」が口癖の俺が、一人の女に執着するなんて昔の俺には想像がつかないだろう。

…それくらいあいつが好きだった。今も好きだ。

中忍試験で一戦交え、気がつえー女だったのに、サスケ奪回任務であいつの笑顔を見て印象が変わった。

それからよく会うようになって、あいつの案内係になって…。

甘栗甘によく一緒に行ったし、俺ん家の縁側で将棋をさしたりした。

思えば俺はあいつの笑顔に支えられていた。

何が忘れてくれだ。今まで散々あんたの我が儘を聞いてきた俺だが、今回ばかりは聞けねえ。

あんたを、テマリを忘れる事なんて出来ねえよ…。



テマリの宿は分かっている。俺は無意識に家を出ていた。

宿に着いたが、テマリはいない。どこに行ったのか。宿の女将さんに聞くと、「今日里を出ていくから先程宿を出た」と言うのだ。

あいつのことだ。用がないならすぐに帰っちまう。

俺は門まで急いだ。

幸いテマリは木ノ葉の門をくぐり抜けるところだった。

そしてまたいいことにテマリはこっちに気づいていない。俺に背を向けて歩いていた。

コテツ先輩やイズモ先輩もいるけど、この際かんけーねー。


…テマリにどうしても言っておきたいことがある。

「テマリ!」


俺の未来はあんたと一緒に笑っていること以外考えつかない。

テマリはゆっくりと振り返った。


END



水崎はのん様リクエストでした!大変お待たせして申し訳ございません!

別れ話からのハッピーエンドというお題を頂いたのですが、お題と全然違いますね…。ごめんなさい。でも設定てきにハッピーエンドになりますよ。

同じような話になってしまったなあ…。

水崎はのん様、リクエストありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

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