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「愛してる。」



そう言ってキスをしても、体を重ねても、お互い「付き合おう」なんて一言も言わなかった。

上忍と中忍。

砂の姫と木ノ葉の忍。

お互い好きだとわかっていても、他里であるという事と、その身分差が私達の邪魔をした。

それはどう足掻こうが、変わらない事実。


「ん…。」

電気を消した、月の明かりだけが頼りのシカマルの部屋。

もう何度も来て慣れてしまったが、夜になると忽ち雰囲気を変える。

ベッドの上でキスをする。甘く甘く、角度を変えて何度も何度も。


上忍と中忍。

砂の姫と木ノ葉の忍。


お互いどう愛していようが、求めていようが、付き合うなんてことはなかった。

この関係が一番いいのかもしれないと思った。

私は風影の姉。もうすぐ二十歳の、どこか嫁ぐにはいい歳をした女だ。

私は今目の前にいるこいつと同じくらい、砂隠れを愛している。我愛羅もカンクロウも、砂の民を大切に思っている。

だからこうなのだ。いつ政略結婚をしてもいいように。別れる別れないのいざこざがないから、私達は簡単に離れることができるのだ。

「……あっ…」

シカマルの指が、私の体を這っていく。

こいつの目と、男らしい大きな手が私は好きだ。

もう髪留めはシカマルによって外されてしまった。

この前風影室で見せられた、男の写真を思い出し、シカマルと会えるのもあと何回なのかと考えた。


上忍と中忍。

砂の姫と木ノ葉の忍。


この間柄だからこそ、私達は引き合ったのかもしれない。

初めて甘い思いを抱いたあの時が懐かしい。

今となってはもう叶わない恋。

私とシカマルだけの、秘密の逢い引き。

白いカーテンを通して差し込む月明かりに照らされた、シカマルの肌。それが思ったより白くて、私を扇情的な気持ちにかきあげる。


「シカマル、」


ああ今となって思うは、こんな形でこいつと関係を持ちたくなかった。

汗ばんだ腕を伸ばし、胸元でシカマルの頭を包み込む。


このまま二人、一緒になってしまえばいい。







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