※性描写注意
※学パロ













 狭いトイレの中で、しゃがみ込んだままどれくらい時間が経ったか分からないが、そろそろ膝がだるくなってきて足を動かすと、小石でも踏んでいたのかジャリ、と床と固いものが擦れる音がした。膝をつきたいと思ったところで、自分のいる場所が決して綺麗とは言えないことを思い出してその気持ちを留める。見上げた視線の先でシカマルと目が合い、その瞳に情欲の色が映っているのを確認したあと、先端をいたずらに刺激していた舌を引っ込めて全体を口に招き入れた。どくどくと脈打っているのが分かり、もうすぐか、と思うが少し困らせたくなった。喉の奥と舌の根元で刺激していた先をあっさりと解放してちゅっと音を立てて唇を離した。髪を梳いていたシカマルの手が止まる。オレが立ち上がるのを待っているのだろうが、意地悪したい気分なので先端だけ咥えて吸い上げた。

「っちょ、も、いいって…!」
「はんへ?」
「〜〜っ!」

 咥えたまま喋ったことでさらに追い打ちをかけられたシカマルの焦った表情を十分に堪能して、ポケットに忍ばせていたコンドームを取り出し封を切る。とりあえずゴミは床に落として、昂ったシカマルの熱に装着して、大人しく立ち上がる。一方的に息を荒げているシカマルの唇に噛みつきながら自分のベルトを外して、ジッパーに手をやるとシカマルの指が重ねられた。シカマルの指は下りたジッパーの先の昂りをするりと撫でたあと後ろに回る。ぐっと腰を抱き寄せられて、指が窪まりを撫でる。腰を抱いていた腕が解かれ、口元へ差し出される。意図を理解して指先を口に含んだ。見せつけるように舌を絡め、唾液で艶やかになる指先から滑らせるように視線を上げるとシカマルの眉を寄せた顔が目に入る。自然に上がる口端に重なった唇は勢いを殺しきれずに軽くぶつかった。キスの最中だというのに合ったままの視線に気分をよくしていると、いつの間にか後ろに回った指がぬるりと中に侵入してきた。

「……んっ!」
「やけにすんなり入るな?」

 侵入した二本の指で中を掻き回され、その先の快楽を思い出した身体はすぐにぐずぐずと溶け出し始める。シカマルの言ったように難なく指を受け入れたそこはすでにそれでは物足りないと疼いていた。指が三本に増えてそこを押し広げるように動く。カシャンとベルトのバックルが床に落ちた音が聞こえ、制服が汚れることを一瞬気にしてしまった。その途端ぐっとイイところを刺激されて目が眩んだ。

「聞いてんのかお前は」
「ん、あ…朝ヤッた、からな?」
「誰と」

 不機嫌そうな顔をしてシカマルは指を動かしたまま、背に回していた手でオレの顔を掴んだ。んむ、と場にそぐわない声を上げてしまったのはオレのせいではない。しかしこのせいで今の空気が違う方向に行ってしまうとオレが困る。シカマルの下半身を考えると可能性は低そうだったけれど、時には鬼のような仕打ち(おあずけ的な意味で)をしてきた過去の履歴を考えるとそれは避けたい。ていうか別に今回は浮気とかしてないし怒られることでもないと思うのだけれど。

「…ふ、あッ…! ひとりで、」
「…どうだかなあ」
「ァあ、んっ…だから今日遅刻、した」

 オレの言葉を聞いたシカマルは、ほんとしょうがねーやつだな、と呆れたように笑って掻き回す指を抜いた。
 しょうがないやつだと言われても、実際にそうだから仕方がない。元はと言えばここのところ相手をしなかったシカマルが悪いのだ。おかげで遅刻はするし、結局一人でしても物足りずに休もうかと思った学校にわざわざ出向いた挙句、こんな狭いところで致すことになってしまった。いや、まあ場所はオレが決めたのだけれど。ていうかオレがもう我慢出来なかっただけなのだけれど。
 する、とシカマルの手のひらが太腿を滑る。制服から足を抜こうとして、上履きが引っ掛かり舌を打つ。いら、としながら荒々しく足を抜いたところで膝を掬われた。シカマルの首に腕を回して体勢を高くすると、下にシカマルの熱が触れるのが分かってこくりと喉を鳴らした。この後に待つものに背筋が震え、小さく声がもれる。耳元でシカマルが笑ったのを感じた。

「ひ、あ、あぁ…!」
「サスケ、声抑えろ、よ」
「っふ、ん…んん…っ!」

 じわじわと内部を圧迫しながら腰を進められ、熱がすべて中に収まったときにはすでに息が上がってしまっていた。圧迫の不快感はずいぶん前に頭の中で快感にすり替わってしまったようで、この刺激ですら自分を高めるものにしか感じられない。シカマルが囁いた、声を抑えろという言葉もきちんと頭に入ってはくるものの、目先にある快楽に流されてしまってなかなか抑えることが出来ない。シカマルの少し荒い呼吸音と結合部からする粘着質な音も、自分の声で掻き消されてしまう。シカマルが動くたびにびりびりと痺れが走って、身体を支える片足が震える。結合部から溶けてしまいそうな感覚に陥りながら、シカマルの首に縋った。とん、と背中が壁に触れてそのままそこに押し付けられる。少しだけ楽になった体勢にほっと息をつく暇もなく突き上げられてあられもない声を上げてしまった。

「だから、あんま声出すなって」
「ひぁ、や、絶対、むり…っあ、あ」
「いくらなんでも、バレんだ、ろ」
「……ッあ…!」

 誰かに聞かれたら、と思った途端きゅう、とナカを締め付けてしまいシカマルの形をリアルに感じてぞくぞくする。この反応で、今の状況にも興奮していることもシカマルの知るところとなってしまっただろう。そうは言ってもこのバレるかバレないかぎりぎりのスリル感とバレることへの羞恥を都合よく快楽へと変換してしまうのは自分の身体に違いない。そもそも気持ちのいいことには滅法弱いことは自覚済みだった。

「なに興奮してんだ馬鹿」
「んっ、あ…ッおまえも、な…!」
「っく、」

 ぐっとナカを締めて挑発するようにキスを仕掛ける。いつもより腰の動きが速いのも、やけに目がぎらついているのも分かっている。自分だって興奮してるくせに、と責め立ててやりたいが、思わず声を出してしまったことで躍起になったシカマルがイイところばかりをガツガツと突き上げてくるのでそれもままならない。第一、声を我慢しろと言うならもう少し控えめな腰使いをするだとか、シカマルが出来ることだってあるだろうに。もっともそれをもどかしく思ってもっと、と強請る自分が簡単に想像出来てしまうあたり本当にどうしようもない。

 そろそろ膝が限界を迎えている。それに、少し前から熱を吐きだしたくてしょうがない。それでもこの気持ちのよさを手放してしまうのが惜しくて昂りの根元を握る手に力を込める。力を緩めてしまえば途端に達してしまいそうな悦楽が身体中を襲って、シカマルの肩口に押さえつけて殺している声も、もはや殺しきれていない。目を閉じるとちかちかと光を感じる気がした。すっと熱を戒める手に何か触れる感覚がして、目蓋を押し上げると涙で滲んだ視界に、自分の手に重なるシカマルの手を見つけた。その手がオレの手を握ってそのまま解放を待ち望んだそこを擦り上げた。

「やっ! あ、待っ、あんッあ、出る、から…!」
「も、授業終わるから、…つか、そろそろオレも…限界っ」
「あ、や、やだ、はっ…あ、まだ、イきたくなっ、や、ああ!」

 後ろを深いところまで抉られながら、前を扱かれてしまえば、崩れ落ちそうになる膝でなんとか身体を支えることしか出来ない。ぐ、と奥を突かれて、先端を押しつぶすように刺激されて、情けない声を上げて達してしまった。全身に広がる甘い痺れに何も考えられなくなって、その余韻に浸っているとナカでどくりと熱が脈打ったのが分かり、甘ったるく声を上げた。熱に溶けた瞳でシカマルを見上げると同じような目をしていた。それが嬉しくて唇を重ねて、はあ、と同じように甘く息を吐いた。
 ず、とナカから引き抜かれたそれに少しの寂しさを感じる。やっと両足で立つことが出来て楽にはなったけれど、今にも座り込んでしまいたい疲労感だった。トイレットペーパーを片手でやりにくそうに巻き取ったシカマルが、オレが吐き出した熱に濡れた二人の手を拭う。それを見ながらふと足元に目をやると、足跡の付いたオレの制服が申し訳なさそうにしていた。よく見ると吐き出したものが飛び散って白い模様が出来ていた。顔を上げると役目を終えたコンドームが口を閉じられシカマルの指からぶら下がっている。

「流れっかな」
「…詰まったらなんて言うんだよ」
「『ゴム流したら詰まりました』?」
「言えるのかシカマル」
「…やめとくか」

 どうしよ、と行為の名残のそれを手で弄びながらシカマルは器用に乱れた制服を直し、ベルトまで締めていた。オレも仕方なく汚れた制服を引き上げる。どうやったって隠れない白い染みに、こっちこそどうしようと思う。まあ、別にどうでもいいかと思考を諦めてシカマルに視線をやった。

「中身だけなら飲めるけどな」
「…超馬鹿興奮させんな」
「変態か」
「お前に言われたくねーよ」

 軽口を叩いて鍵を外して外に出る。トイレの窓を開けたシカマルは目についたゴミ箱と数秒見つめ合ったあと、手に持っていた使用済みコンドームを投げ入れた。その様子を横目に見てから、手を洗って乱れた髪を直す。隣に並んだシカマルにハンカチ、と言うと持ってねーよ、と笑って返された。まだ若干弛緩している身体と、酷使してしまった片足が少し辛かったけれど、そのままトイレを出る。ちょうどチャイムの音が鳴り響いて、授業の終わりを告げていた。

 その日のホームルームで使用済みのコンドームが男子トイレで発見されたことが問題になったのは言うまでもない。




狭隘ロマンス



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