もしもシカマルとサスケが兄弟だったら!
兄シカマル+弟サスケ





 昨日は夜遅かったこともあり、目を覚ますとカーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。かなり高い位置にある。もしかしたら昼過ぎなのかもしれない、と重い身体を強引に起こし携帯を開いた。新着メール一件。長兄からのメールを開き、彼が今夜も帰れないことを知る。これはまた、面倒なことになりそうだ。シカマルは時間を確認しまだ十時を過ぎたところであることに安堵した。寝癖がついた髪を無理矢理ひとつにまとめ、大きく伸びをしたあと立ち上がった。その時、一人しかいないはずの部屋で物音がした。明らかに寝返りを打った音である。シカマルの部屋は一人で使うには広い。ゆえに、弟と共有していた。一応は仕切りを隔てているために向こうの様子を見るには回り込む必要がある。覗いてみれば、やはり末弟のサスケがベッドで熟睡していた。本日は平日である。高校生のサスケは当然学校に行っていなくてはならない。ちなみにシカマルは大学生で本日は全休の日であり寝坊してもなんの問題もない。はあ、溜息をついてサスケの布団を剥いだ。

「……んん」
「んん、じゃねーよ起きろ馬鹿」

 ぺし、とサスケの頭を軽く叩くが再び小さく唸るだけで覚醒には至らない。睡眠の深さと寝起きの悪さは兄弟一だけのことはある。シカマルは仕方なく肩を掴んで大きく揺らした。さすがのサスケも物理的な刺激には睡眠を阻害されたのか眉間にしわを寄せ、やっと薄く目を開けた。しばらく見つめ合っていた二人だったが、サスケは再び目を閉じ寝返りを打って眠りに戻ろうとした。

「いやいやいや、起きろって」
「…ねむい」
「学校はどうした」
「…やすみ」
「んなわけあるか超馬鹿」

 学校を度々休むのはサスケの悪癖であった。それもここ最近の話ではない。両親を亡くしてから長兄は生活費のために家を空けがちになり、シカマルもバイトに出ることが多く末弟のサスケは家に一人でいる時間が多くなった。サスケは賢い子供であったが、その賢さを間違った方向に発揮した。出席日数を逆算して最低限の出席しかしなかったのである。この悪癖は、かろうじてまだ長兄の耳に入っていなかった。もっとも既に気づいているのかもしれない。サスケにひどく甘い長兄のことである、出来る限り好きなようにさせたいと思っている可能性もある。しかしとにかく、サスケは本日も高校を欠席するつもりらしい。
 起こされたことが不満なのか不機嫌そうな顔をしたままのサスケはシカマルに促されるままゆっくり身体を起こした。父親の髪質を色濃く受け継いだサスケのくせ毛は長時間の睡眠によって芸術的な形態になっていた。

「お前髪やべーぞ」
「うるさい」
「午後から学校行け、な?」
「…だりい」
「分かったイタチ兄に報告する」
「え、いや、それはお前…やめろよ……」
「じゃ、行くんだな」

 不服そうに唸ったあと低く分かったと答えたサスケは時計に目をやり眠そうに目元を擦った。長兄の名前を出せば、サスケのコントロールはたやすかった。昔からずっとこうである。長兄は末弟のサスケを猫可愛がりであるしサスケも長兄にとても懐いている。時々、シカマル自身も自分だけ本当は血の繋がりがないのではないかと思ってしまうほどである。それはそれで都合はいいが、と独りごちてシカマルはひどい寝癖のサスケの髪に触れた。

「なんでお前はそうなんだろーな」
「ほっとけ」

 そうじゃねーよ、と口には出さないもののシカマルは苦笑する。高校生ながらまだ長兄には無邪気な姿を見せるし(最近長兄に対しても少し反抗を見せるようになった、シカマルには常に反抗しているけれど)、無防備にも風呂上がりに下着姿でふらつくし。もちろんそれは家族、兄弟だからこその特権ではある。無論男兄弟で下着姿を気にする方がおかしいのである。分かってるよ、シカマルは自嘲の笑みを浮かべるがサスケは素知らぬ表情を見せる。もちろんサスケはシカマルの葛藤など知るはずもないし、知られては困るというのがシカマルの本音である。実弟に対してやましい気持ちを抱いているなんて、口が裂けても言えやしない。
 シカマルは思いついたように顔を上げて壁にかかっている時計に目をやった。午後の授業から出ることを考えれば、まだまだ時間に余裕がある。おもむろに未だベッドの上で名残惜しそうに布団にしがみ付いているサスケを布団もろとも抱きしめてベッドにダイブした。

「うわっ!? なんだよ!」
「…まあ、なんだ……もうひと眠りしよーぜ」
「起きろっつったり寝ようっつったり忙しいやつだな…」


 そうは言うものの嬉しそうに唇を弧の字に変えたサスケはシカマルにすり寄って安堵の息をもらした。安心する、だなんて高校生にもなって気恥ずかしいとは思うが事実としてこうやって抱きしめられると心穏やかになるのだから仕方がない。タイミングよくやってきた眠気に誘われるようにサスケは目を閉じた。
 腕の中で安心しきった顔を見せるサスケにシカマルは胸が痛くなるほどの愛しさを感じて抱きしめる腕に少しだけ力を込める。ただでさえ幸せな二度寝が腕の中の存在によってさらに心地の良いものになった。

 無論、結局寝過して二人が目を覚ましたのは日も暮れようかという頃になってからで、もちろんサスケが学校に行くことはなく、シカマルも貴重な休日のほとんどを睡眠に使ってしまったのではあるが、それもまた二人にとっては穏やかな日々の思い出として胸にしまいこまれるのであった。




おまけ
「兄貴は?」
「帰れねーって」
「今日も!?」
「仕方ねーだろ」
「いやだ!」
「…オレがいるだろ」
「ええ…シカマルはいいよ…」
「てめ! 晩飯作ってやんねーぞ!」




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