もしもシカマルとサスケがファンタジーの世界の住人だったら!
勇者×魔王 編!






 人類の命運が、勇者シカマルにかかっていた。人類を滅ぼさんと画策する魔王サスケの指示により世界中で魔物が人間を襲い初めてから長い月日が流れている。魔物の王たる魔王に対抗する術を人類は持ち合わせてはいなかったのである。しかし、そこである一人の男が人類を救うべく立ち上がった。
それが勇者シカマルであった。

 勇者シカマルは次々と魔物を蹴散らし、仲間と共に魔王の城を目指した。そしてついに、魔王の城へと辿り着いたのである。だがさすがに魔王の懐というだけあり、中には強力な魔物が何体も存在していた。仲間をひとり、またひとりと置いていき、勇者シカマルはやっとのことで魔王の王室まで辿り着いた。意を決して重い扉を開き中へ入り込む。そこで王座に座り勇者シカマルを見下ろしていたのは、魔王サスケであった。

 勇者シカマルは魔王サスケの姿を見て言葉を失った。自分よりも遥かに長く生きているはずであるのに、自分と同程度の年齢にしか見えない。それどころか息を呑むほどの美しい顔の造りに人間と変わらない身体。魔物というにはあまりにも美しい魔王サスケに、勇者シカマルは一目で恋に落ちてしまったのである。

「来たか勇者。だが貴様ごときにこのオレは倒せない。人類の滅亡は決定だ」

 高圧的に自分を見下ろし不敵にその美しい唇を吊り上げる魔王サスケに、勇者シカマルは背筋に電流が走るのを感じる。触れたい、という思いが勇者シカマルの全身を巡る。人類を救うなんてことは既に勇者シカマルの頭からは抜け落ちていた。

「どうした。オレを前に言葉もないか」
「……いやあ、ぶっちゃけるとさあ」

 相変わらず麗しい魔王サスケの冷たい微笑みを眺め、唇が形作る言葉を聞いていた勇者シカマルはおもむろに言葉を発する。言葉を失っていた時間を取り戻すかのように。

「オレ好きで勇者になったわけじゃないんだわ。なんか村の会合に寝坊してったらいきなりお前は勇者になったから魔王を倒してこいとか言われてよ。いやいや何だそれ勇者の決め方雑すぎんだろ、とかいうオレの突っ込みは無視されて流され流されでこの状況なんだよな。人類の未来とかオレ知らねーし、それよりアンタのことのがよっぽど知りたくなったわけだ。だからオレは戦うつもりはない。めんどくせーし」
「………………」

 勇者シカマルの長い台詞にさすがの魔王サスケもポカーン顔である。その顔も可愛いと勇者シカマルが思っていることは魔王サスケが知る由もない。王座から立ち上がり戦闘を始めんとしていた魔王サスケは手持ち無沙汰に頭に手をあてた。

「……つまりなんだ、オレは人類の滅却作戦を続行していいんだな?」
「ああ。その代わりと言っちゃなんだが――」

 と、勇者シカマルは勇者らしく素早い動きで魔王サスケとの距離を詰める。それに魔王サスケは「ッやられた! こうして油断を誘いオレを倒すつもりか! 人間ごときが小賢しい真似を…!」と心の中で吐き捨てたが勇者シカマルの速度に対応することは叶わず、覚悟を決めた。しかし予想した衝撃が魔王サスケに襲いかかることはなかった。代わりに、どさりという背中へと軽い衝撃を受ける。何故か突然天を仰ぐ自分の状況に魔王サスケの脳内ではクエスチョンマークがひしめきあっていた。そしてやっと、自分の上に勇者シカマルがいること、つまり押し倒されたことを理解する。確かに魔王サスケの思ったように倒されてはいるのだが若干意味が違う。床に縫い付けられた両手首は自由に動かすことも叶わない。

「……なんのつもりだ」
「魔王さんが名前を教えてくれんなら答える」

 鋭く自分を射抜く魔王サスケの視線に、勇者シカマルはこの強気な瞳を涙で濡らしてやりたいという思いに苛まれる。手首を押さえつける掌に力を込め、笑いそうになるのを堪えながら魔王サスケを見下ろした。

「……サスケだ」
「へえ、なるほど。サスケね。オレはシカマルだ」
「貴様の名など必要としていない」
「まあまあ、後々呼ばせるから」
「…、は?」

 意味が分からないという風に眉をひそめる魔王サスケの眉間に優しくキスを落とした。それに魔王サスケは絶句する。

「なんのつもりだ、の答えは、ナニだよサスケ」
「……意味が分から」

 ない、と続けようとした魔王サスケの言葉を勇者シカマルは自分の唇で塞いだ。唇を舌で舐め無理矢理中に捩込んで歯列をなぞる。不用意に開いた歯の間からさらに奥に舌を進めると熱い舌とぶつかる。絡め取るように舌を動かして翻弄し、上顎を舐め上げ再び舌を絡める。鼻から抜ける甘い声が耳に心地よくキスに夢中になった。唇を離すと飲み切れなかった唾液が魔王サスケの口端を流れ酷く煽情的だった。押さえていた魔王サスケの手首をひとつにまとめ、空いた手で身体をまさぐる。魔王の身体がどれほど人間と同じなのかは分からないが触れた中心の感覚から自分のそれとそう変わらないだろうと勇者シカマルは衣服の中に手を滑り込ませた。ふと魔王サスケの顔に目をやると、ぼんやりと放心する様子が見える。

 勇者シカマルは、どうして魔王サスケが人類を滅ぼさんとしたのか理由が知りたくなった。






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