※ちょっと注意








 肌寒さを感じて意識が覚醒し、気だるい身体をむくりと起こした。腹のあたりでシーツが滑ってたけれど、肌のほとんどが空気に晒されていた。申し訳程度に身に着けていた下着だけではあまりに寒い。起きぬけのぼんやりとした視界の中で寒さの原因を捉える。白いシーツにくるまってこちらに背を向け身体を丸くして眠り込んでいるシカマルはおそらく気持ちよさそうな顔をしているのだろう。どうせ目覚めるなら恋人の腕の中がよかったと思いながらふあ、とあくびをこぼした。
 ベッドサイドにあるゴミ箱に目をやると遠くから投げ入れようとして失敗したと思われる丸まったティッシュペーパーが転がっていた。はあ、溜息をついて手を伸ばしゴミ箱に捨てる。中身はほとんどがティッシュペーパーで、その間から覗くラテックス素材に気づき一瞬手を止めたが、そのままベッドに腰を落ちつける。後処理の面倒を避けようと出来るだけ汚さないよう心掛けたシーツはシワや多少の汗臭さと青臭さはあれど十分に快適な睡眠を取れるだけの様態をとどめていた。


 いつも思うことではあるけれど、どうしていつもシカマルは避妊具を使うのだろうか。感染症を気にしているとか、それなら納得はいくのだけれど、これが、ただ後処理が面倒だからという理由だったら、とつい考えてしまう。直後はお互い疲労が隠せない。まだ若さ溢れる十代の性生活はけっこうハードだった。その後の処理はどちらかというとシカマルに任せがちなのは事実であって、それはたしかに負担ではあると思う。すぐさま眠りたいのが本音だろう。しかし、行為においての負担は受け身であるオレの方が多いのではないだろうか。だから、少し甘えてしまっているのかもしれない。負担なのか、もやもやと考えて横たわる。
 何もつけない方が気持ちいいだろ、と思う。オレもだけれど、シカマルも。何度か持ち合わせが無くてそのまま致したことがあったけれど、そのときはかなり良かった。そんなことを考えているとそういう気分になってきて、熱を持ちつつある下半身に情けない思いがする。そういえば、そのまま致したときも、結局中に出さなかったよなあとシカマルの後頭部に話しかける。当然眠っているシカマルから返事がくるはずもない。散らばった長い髪を掴んで軽く引き寄せる。そのうち本格的に寒くなってきて独占されているシーツをシカマルから引きはがした。

「ん……んん?」

 強制的に覚醒させられたシカマルがもぞもぞと動いてこちらに身体を向けた。眠たそうに目を薄く開いて手を伸ばす。いつもより暖かい指が頬を撫で、自分が思っているよりも冷えていることに気付く。

「…どした」

 掠れた声で囁かれ、腕を引かれる。腕の中に抱き込まれその上からかけられたシーツの温もりにふう、と安堵の溜息がもれた。お前がシーツ独占してっから目が覚めたんだよ、とは言わないで胸に顔を押し付ける。柔らかくもなんともないそこはなぜか安心感をくれるものだから不思議だ。高まりかけの熱は放っておいてぎゅう、と抱きつく。一度抜いておいた方がよく眠れるかとも思ったけれど、いい具合に訪れた眠気にそのまま誘われる。
 あ、と先ほどの考え事を思い出し、眠気に抗いながら少し顔を上げた。無防備に薄く開いた唇に柔らかく口づけるとシカマルも重そうに目蓋を押し上げふわ、と表情を緩めた。

「……なんだよ?」

 甘さを乗せた柔らかな音が耳をくすぐる。いつもいつも、シカマルには我がままばかり言っている気がして(今日だってキスの続きを強請ったのはオレだし)、まだ何か求めるのかと呆れられてしまうかもしれない。大体行為の後始末は任せっきりで自分は寝ていたりするから大いに手間ばかりかけている。それでもまだ、物足りないと言うのだからオレは一体どんな欲張りに見えるだろうか。

「…つぎは、さ。つけないでしようぜ」

 眠気を耐えながら言葉を紡ぐと勝手に甘えたような声が出た。ぴたりと重なった肌のおかげでシカマルの心臓がとくとく脈打っているのが分かる。生きてんなァ、と関係のないことが頭を過ぎりシカマルが何か言ったのを聞き取れなかった。

「…ん?」
「ん? …なんでつけないでしたいんだって」
「あー……なかに、だしてほしいから」

 後処理はオレがするから、と続けていると急に激しくなった鼓動にこちらまでドキドキしてしまう。そんなに嫌なのか、とぼんやりした頭で少し落ち込んでいると下肢に違和感を覚えた。兆しを見せ始めているシカマルのそこに早速出してくれんのか、と思うけれど訪れた心地好い睡魔はなかなかの強敵だった。シカマルに応えようにも穏やかな温度と心落ちつく匂いに包まれた状態では睡魔に勝てるはずもなく、一度閉じてしまった目蓋はとても重い。薄れていく意識の中でシカマルの声が聞こえたけれど、言葉として認識することも出来ず、オレはそのまま夢の中に落ちていった。



そのままの
お前がほしい




110208


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