もしもシカマルとサスケが堅気じゃなかったら(現パロ)!
彫り師×若頭





 シカマルの父親はいわゆる極道と呼ばれる一家の専属彫り師だった。物心ついた辺りから父親がそういう人々との繋がりがあることは薄すら感づいていたが、中学入学してしばらくの間まではシカマル自身がそちらの世界に関わることは皆無だった。しかし何を考えているのか、父親は突然シカマルを仕事先に連れて行くと言い出した。父親の仕事場で大男の背中に墨が入れられるのを見て背筋に走る何かを感じた。針捌きや、描かれていく刺青に完全に目を奪われてしまった。

「……親父、オレも」

 父親の仕事を見て、シカマルはいずれ自分も、と思った。初めて見たというのにまさしくこれが自分の進むべき道なのだとシカマルは自覚したのだった。その時、後ろの襖が開け放たれた。そこに目をやったシカマルが見たのは一目で堅気でないと分かる厳めしい、しかし整った風貌の男だった。見た目からすると父親より幾分か年上のようだが、周りの反応からして彼が組頭であるようだ。彼の視線がシカマルに移り、シカマルの背筋が自然と伸びた。

「お前がシカクの息子か」
「……ッあ、そう、ッス」

 自分に答えを求めていることは理解出来たが気迫に圧され中々声を出すことが出来なかった。父親がシカマルを見て軽く笑うのを睨みつけ、再びシカマルは彼に視線を戻した。若い頃はさぞ女性に騒がれていたであろうことが見て取ることが出来た。

「うちのと同じ、だったか。いくつだ」
「14ッス」
「ああ、同じだな。よければせがれが奥にいる。シカクもしばらく仕事があるしな。行ってやってくれ」
「…ッハイ!」

 返事と共に立ち上がり、シカマルは彼の示した方へ向かった。彼の横にいた、比較的若い男がシカマルを誘導し奥に招いた。ぶっきらぼうに「この先だ」と男が言って歩みを止めてしまった。シカマルは若干悩んだが、先に進み障子を開けた。そこにいたのは美少年と呼ぶに相応しい容貌の少年だった。視線がかち合うが互いに言葉が出ない。

 それがサスケとシカマルとの出会いだった。

「……誰だ?」
「……奈良シカマル」
「奈良……、ああ彫り師の?」
「そ、息子」

 見た目ほどの冷たさは言葉にはなくシカマルは恐る恐るだが部屋に足を踏み入れた。黒い髪がワックスで固められ、今時の中学生といったところだ。学校では女生徒に騒がれているのだろうと思い、先の組頭との血の繋がりを思い知らされた。

「あんた、名前は?」
「サスケ。お前も彫り師なのか」
「……いずれは。つっても親父の仕事を見たのは今日が初めてだったんだけどな」

 サスケは、へえ、と意外そうな顔をした。若い頃から彫り師は修業をしておくのだろうか、シカマルの知るところではなかった。互いに多く喋る性格ではなく、ぽつりぽつりと会話を交わすだけだったが不思議と居心地は悪くなかった。シカマルはおもむろにサスケの背中に手を伸ばし、掌を押し付けた。

「俺、親父以上の彫り師目指すからよ、お前の背中に刺青いれんの俺にさせてくれねーか」
「……失敗したらただじゃおかねえぞ」

 冗談にならない台詞をそれは艶やかな笑顔で吐いたサスケに、シカマルは息を飲んだ。






 その出会いから5年が経過した。既にサスケもシカマルもそれぞれの高校を卒業した。卒業後、シカマルは彫り師の修業に打ち込み、サスケは幾らかの部下を束ね着々と次期組頭就任の準備をしている。高校を卒業した時に父親から譲り受けた道具を扱い修業を重ねていたシカマルに、7月のある日サスケの部下から連絡が入った。出会いから5年の間、しばしばサスケの家を訪ねることはあったがサスケから訪ねてくるよう連絡があったのは初めてだ。それも仕事で、だ。シカマルは逸る心を抑えながらサスケの家を訪ねた。彼はいつもと変わらず、自室にこもっていた。ここ2年は会うこともなかったがサスケはより精悍さと美しさを増していた。シカマルは口角を吊り上げる。

「最初の仕事は絶対サスケだって決めてたんだ」
「そうか、それはなによりだ」
「で、どうするんだ?」
「お前の父親は……というよりお前の一族はリクエストには答えないんだろう?」

 口元を緩めたサスケはシカマルを近くへ呼び寄せる。シカマルは父親の言葉を思い出していた。ただ肌に在るべきものを彫り出すだけでいい、彫っているんじゃなく彫らされていると言った方が正確だろう。まだ見たことのないサスケの背中に、何が浮かぶだろうか。服の上からサスケの背に触れる。5年前に触れた時よりも明らかにしっかりとしている。上半身を露わにするサスケから一旦手を引き凝視する。当たり前のように白い肌には幾つもの傷があった。今度は実際に指で直にサスケの肌に触れる。思った以上に滑らかな肌にシカマルは驚きを隠せなかった。

「なあ」
「あ?」

 サスケの言葉に咄嗟に肌から手を引く。どうしたことか騒がしい心臓を押さえつつサスケの言葉を待つ。

「あんま痛くねえように頼むぜ」
「……んな無茶な。まあ出来る限り優しくするよ」

 よく考えたらあやしい会話だと二人同時に思い至ったのか同じように噴き出した。笑いながらシカマルは道具を並べ、サスケは横になる。白い背中に指を滑らせ、シカマルは肩甲骨に唇を押し付けた。なぜ自分でそのような行動に至ったかはよくわからない。

「なんだ?」
「いや……儀式、みてーなもん、かな」
「かな、って」
「ちょっと俺にもよく分かんね」

 そう言いつつ、シカマルは逆の肩甲骨にも唇を押し付けた。サスケは何をするでもなくただされるがままになっている。

「今回ではねえんだけどな、また彫ってもらおうかと思う」
「……どこに?」
「取り敢えず、隠し彫りだな」
「……まじで」
「大まじ」

 シカマルはサスケの言葉に驚きつつ針を握った。サスケの肌に墨を入れると考えると緊張で手が震えてしまう。一度背筋を伸ばして深呼吸をする。

「おいシカマル」
「なんだよ」
「……失敗したらただじゃおかねえぞ」

 5年前と全く同じ台詞にシカマルは体の緊張が解けるのがわかった。声を出して笑って任せろと言い放つ。サスケはそれを聞いて満足したように目を閉じた。



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捏造万歳!な拍手小説でした
正直自分にはそちらの知識は皆無と言っていいほどですのでおかしい部分はたーくさんあるとは思いますがあくまで創作ですので大目に見て下さいorz
激しく需要がなくて申し訳ない
ですが楽しかったです←


再び余談ですが
イタチは別に団扇組(笑)から破門されたり絶縁されたわけではなく彼は彼の仕事があるんです
組への資金繰り等々…彼はそちらの才能の方があったと思ってくだされば…
サスケ母はきっと普段は穏やかですが決めるところでは決める極道の女であるはずです



〜101018拍手


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