授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。残り五分は今日すべき内容を終え時間が余ったのだろう、雑学を垂れはじめていた教師はチャイムの音と同時に話を止め教室を出て行った。数人の生徒は一位を争うかのように立ち上がり教室を飛び出して行く。四限目が終了した今、生徒が走る目的は購買のパンだ。安くて美味しい、まさに学生の為にある購買のパンだが人気故にすぐに売り切れ続出、パンを売り出す昼休みは小さな戦争が勃発する。
 しかし廊下を一際早く走り出した生徒の中飛び抜けている生徒が二人いた。運動部で鍛えられた俊足を披露するナルトとキバである。それにしてもナルトもキバも三限に早弁を決めただろうに、きちんと昼食を取るとは凄まじい食欲である。また食べ過ぎでマネージャーに怒られることになるのだろう、とシカマルは頭の隅で思った。頬杖をついたまま、立ち上がるのも億劫で空腹を訴える自分に無視を決め込んだ。キバとナルトは直ぐに大量のパンを買い込んで六組に来ることだろう。購買のパンが直ぐに売り切れる大きな要因のひとつはあの二人に違いない。八組に所属している二人は購買から他クラスに比べかなり不利は位置にもかかわらず、まったくサッカー部と陸上部のエースは伊達ではない。
 ぼんやりと教室を眺め、ふと窓際の席でシカマルと同じくぼんやりしているサスケに目が止まった。しかしサスケはすぐに立ち上がり、コンビニの袋を片手に教室を出て行く。ゆったりと歩いていったサスケが出ていった扉をシカマルは暫く見つめた。毎日昼休みはどこかへ消えていくサスケはどこかミステリアスだと評判である。深く考えたこともなかったがサスケは誰かと特別親しい訳でもなく、真面目に授業を受ける訳でもなく、頻繁に学校を休み、尚且つ定期テストでは学年一位を落とさない。誰もサスケについての詳しい情報は知らない。それでも多くが気にするのはひとえにサスケの容姿が原因である。確かに綺麗な顔をしているのは認める、と頷いて、シカマルは意を決したように立ち上がった。毎日無理矢理母親に持たされる弁当とペットボトルのお茶を手に取り廊下に出る。そこでよく見知った幼馴染の姿を目にして立ち止まる。


「あれ、シカマルどっか行くの?」
「ちょっと野暮用。ナルトとキバによろしく頼むわ」


 うん、と快く返事をしたチョウジに軽く手を振って歩きだす。サスケが歩いて行った方向をとりあえず歩いてみるが行き先が分かるわけでもない。なんとなく上の階への階段を上っていると立ち入り禁止の看板が下がっている場所まで行き着いた。僅かにその看板は揺れている。不良かよ、と呟きながらシカマルはその看板を跨ぎ、階段を上る。高等部の校舎に通うようになって二年目だが屋上に来たことは一度もない。ドアのぶに手を伸ばし回す。が、意に反しドアが開くことはない。立ち入り禁止となっているところなのだから鍵がかかっていて何ら不思議ではない。ガチャガチャとドアを開けようとはしてみるがやはり鍵がかかっている。どうしたものかとシカマルは頭を掻いた。目線をずらしていくと古くなった窓が目に入る。とりあえずその窓に触れ開けようとするがやはり閉まっている。しかしガタガタと動かしているうちにあっけなく開いてしまった。存外簡単に開いたことに少し驚いたがシカマルは窓から屋上へ出る。眩しい日射しがシカマルを襲う。焼けつくような日射しは屋上を照らし下からの照り返しもきつい。間違ったか…とテンションが下がるシカマルだった。

 それにしても暑い。どうしたものかと立ち尽くしていると後ろからおい、と低い声がかけられた。うだるような暑さに苦しみながらのろのろと振り返ると日陰に涼しそうな顔をしたうちはサスケが座り込んでいた。どうやらシカマルを呼んだのはサスケらしい。そういえばちゃんとサスケの声を聞いたのは初めてであるように思う。なるほど、見た目に合ったいい声だ、と見当違いのことを考えながら手のひらをかざし日差しを遮る。しかし、本当にこんなところにいるとは思わなかった。


 サスケが眉を潜めてシカマルを見上げる様子を見ながらシカマルは日陰に入り向き合うように腰を降ろした。


「あっっっちィよ」
「……だよな」


 苦笑してトマトジュースを飲むサスケの顔が輝いて見えたのはきっと暑さのせいに違いない。




ファースト・コンタクト
(この日の行動の意味とそれから派生する未来)(…まさかな!)



 
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