瞳を閉じる。
視界は闇に彩られ静寂が世界を支配する。
息を止めてしまえばかすかな心臓の鼓動しか聞こえない。
とうとうすべてを失ったかのように感じた。
今までの人生の、半分を費やし養った感情は拠り処がないままに溢れ出しぶつけようもない後悔と自責と絶望がのたうちまわる。
疲れてしまった。
憎み続けるのも、また新たな対象にその憎みを移すのも。
このまま息を止めて、いっそ窒息でもしてしまおうと思うくらいには疲れ切っていた。
闇の世界に控え目な雨の音が響く。
しとしと、終わりの日のように。
哀しい、雨が降る。
重い瞼をゆっくりと上げる、その世界はやはり闇色で、雨の匂いが広がっていた。
雲が空一面を覆っているのだろう、見えはしないけれども黒い雲が垂れ込んでいる様が容易に想像出来る。
ふと、雨が止む。
雨の匂いは未だ残り、雨音も続いている。
空色の傘を、唐突に思い出した。
母親に無理矢理持たせられた傘を、めんどくさそうに差して雨を弾くその後ろ姿を一体オレはどんな表情で見つめたのだろう。
振り返って、差し出された手と表情は、あまりにも眩しすぎて。
08:光
(シカマル、オレはいつだってお前に救われている)
100804改編