雨の多いこの時期。例年に比べ降水確率は低いそうだが今日、雨が降っていることは変えがたい事実だ。雨粒はさも自慢気に里を走り、太陽は随分と長い休暇を取っているようだった。さながら少し早い夏休みといったところか。夏本番になれば太陽は大活躍、自重するそぶりすら見せずオレを苦しめる訳だ。迫り来る夏の前に現在の梅雨。長雨にはそろそろうんざりで、気分も陰鬱になりテンションもだだ下がりだ。部屋干しにも限界はあるので洗濯物は溜る一方。それに加えオレを苦しめるものがひとつ。ある特定の人物に出会うと、動悸、呼吸過多、体温の上昇を感じている。何もすることが無ければその人物のことを考えているし何かすることがあっても上の空だ。つまりは。オレは恋をしている。

 窓の外は灰色の重そうな雲が垂れ込み雨粒を落としている。こんな天気の日は奴も雲の流れを見れずさぞ残念に思っているだろう。もしくはそんなことを考える暇もなく任務に勤んでいるのかもしれない。部署が違えば、滅多に会えるものでもない。五代目のお気に入りの奴なら忙しくしていることだろう。オレは非番だ。暇だ。暇があると、考えることはひとつ。だから、何かをしていたいとは、思うのだが。全部屋隅々まで埃ひとつなくなるまで掃除をし、なお時間を持てあましている。本を読むにも集中出来ないことにはどうしようもない。

 頭の中は奴のことでいっぱいいっぱいで集中出来ない。その上この恋は歓迎されるはずもない。自分の立場をわきまえない手前勝手な感情。何も生むことはない不毛な恋。だから何だと強がってみても、溜め息ばかりが溢れた。

「馬鹿みてえ」

 口に出してしまえばなんてことはない。まったく言葉通りオレは馬鹿だ。部屋のベッドに寝転んで、天井をにらみつけた。テーブルに置いてある煙草と灰皿。ただのポーズに過ぎなかったそれ。すぐにでも「大人」になりたかった。そうすればきっと、なんて小さな望みを持っている自分は随分と小さい。ゆっくりと煙草に手を伸ばす。慣れた手付きで、なんておかしな話だ。息を吸って、吐いて、すぐに火を揉み消した。

「別に、美味くねえんだよな」

 少し甘い香りのする輸入物の煙草。大人ぶる為に、子供じゃないとでもいうように。でも、どうしようもないくらい子供だった。

 突然、インターホンが鳴った。平日の3時にオレの家を訪ねる奴?全く心当たりはないが暇潰しに玄関へ歩く。ドアを開けて客に向かった時、オレの時間は止まった。

「……、シカマル」
「よー。上がってもいいか?」

 あーうん、とか気のない返事しか出来なかったのはオレの所為じゃない。
どう考えてもシカマルの所為だ。




01:シカマル
(何か部屋超綺麗じゃねえ?)(…、いいだろ別に)

 

100804改編

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