だらだらといつまでも惰眠を貪る。どうせ今日は任務もない日だ、昼過ぎまで寝ていたって誰にも文句は言われまい。あーでも母ちゃんの小言をくらうかもしんねー…。だが、眠い。寝返りを打ってうつらうつら再び眠りに落ちる。あー落ちる。完全に寝ちまう。


 ………べろり。


 べろり?しっとりと水分を持った、そして熱くざらりとした感触の、今までの経験から考えると恐らくは生き物の舌。耳をなぞるように蠢く舌はオレの頭を覚醒させていく。何の舌だ…猫か…いや、昨日部屋に猫は入れなかったし戸締まりはちゃんと確かめたはずだから有り得ない…。そして、やっと思い至る。昨日は夜も遅かったこともありサスケを泊めたのだった。つまり先程からべろべろと耳を舐めている頭のおかしい奴はサスケ以外にいない。寝返りを打ち恐らくサスケがいるであろう方に向いて腕を伸ばす。髪に触れたので柔らかい髪を撫でてやる。

「〜〜サスケぇ」
「んー?」
「なーにやってんだよ」
「んー……」

 甘く鼻から抜ける声を耳元で上げられては黙っていられない。様子を見ようにもサスケは未だ耳への口づけを続けている。やわやわと歯で甘噛みされるとさすがに甘い痺れに襲われる。

「……ッ、サスケ、やめ…ろ、って……ぁ、」

 ふふ、と笑う声が聞こえたかと思うとサスケが肘をついて上半身を起こした。乱れた髪があちらこちらに散っているがそれすら麗しいと見えるのは男前の特権だ。見た目で人生得してるよなあ、と少しどうでもいいことに思考が向かう。

「いつになったら起きるのかと思ってな」
「……起きたわすぐに」
「馬ッ鹿お前気づいてねえだけだぜ。色々悪戯しちゃった」
「こらってめ! 何したか言え!」
「シカマルって案外……」
「なんだよ!」

 サスケの冗談(希望)に突っ込みつつサスケの身体を眺める。首筋には昨日つけたキスマークが散らばっている。しかし確か昨日はちゃんと服を着せてやったはずなのだが何故かサスケは上半身裸だ。布団を被っているため下は確認出来ないが足に触れる感覚から恐らく生足。しかもオレまで上半身が肌蹴ている。…悪戯ってこのことだよな?服脱がせちゃった、的なことですよね?

「サスケ服着ろよ風邪引くから。ただでさえ季節の変わり目で体調崩しやすいんだしよ」
「平気だ布団に入ってるし、ほら、こうしたら暖かい」

 そう言ってサスケはオレに覆いかぶさってきた。直に肌が触れ合う心地よい感覚に背中に手を回す。これならオレより体温の低いサスケは暖を取れるだろう。背中を滑る指にサスケが身じろいたところで唇にキスを落とす。相変わらず綺麗な肌は指に吸い付いてくるようだ。小さな傷やら大きな傷やらたくさんあるがそれすら愛おしい。そういえば、服を脱いだところを見るまでは、きっとサスケの肌には傷ひとつないのだと思っていた。そんなはずはないというのに。オレよりもきっと、危険な任務についてきたはずだ。そして現実を知る。生きている人間なのだと思い知らされた。
 軽いキスを繰り返しているともどかしく思ったのか強く唇を押し付けてきた。開いた唇からは先程まで俺の耳を撫で回していた舌が覗いている。希望に沿うように舌を絡めて口内を蹂躙する。皮膚よりも遥かに熱い舌はキスをしているうちに蕩けてしまいそうだ。しばらくキスを続けるが頃合いを見計らって唇を離すと溢れた唾液がサスケの口端を垂れ舌と舌は銀の糸で繋がっていた。口端を舐め上げて再び軽く口づける。甘い息を吐くサスケを抱きしめた。

「なあ、なんで耳?」
「……ん、耳ってすげえ、敏感だろ。……いやがおうでも反応すると思って、よ」
「オレよりも、サスケのが耳は弱いよな…? つか全身性感帯だしな。他の奴に耳、触られても喘ぐなよ」
「は……馬鹿言うんじゃねえよウスラトンカチが。触ってるのがお前だからどこもかしこも感じるんだよ」

 フン、と鼻で笑ったサスケを覗き込むと若干恥ずかしげに目元を朱く染めていた。だがサスケの瞳に映るオレのほうがよっぽど恥ずかしそうだ。負けじとサスケの耳に噛み付いた。サスケの背がびくりと揺れる。耳元で声を殺すのが聞こえるのでさらに舌と歯でくすぐる。

「……ッやあ、も……シカマル!」
「なんだよ」
「ッ……耳元、で喋んな、あ!」
「喋ってねーでもっとしろって?好きなーお前も」
「言ってね…!ンン…ッぅあ……だ、めだって…やッ…!ちょっ…その気に、なる……だ、ろ」
「なれよ」

 オレにしがみつくようにしな垂れかかるサスケは余程感じるのか背中を震わせている。耳を攻めるのは如実に反応があるから楽しいが顔を見ることが出来ないのが難点だ。声を我慢しつつ快感に眉を寄せて打ち奮える姿はそれだけで勃起ものなのだ。想像だけでもかなりの破壊力がある。破壊されるのはオレの理性と呼ばれるものだ。サスケを押し倒して潤んだ瞳と上気した顔を見つめる。可愛いなこの野郎。ていうか一々エロいんだよ! と心の中でサスケに文句を言いつつ額に唇を落とした。腰を撫で回すとかろうじて下着をつけていることが分かる。最初からその気だったのか長い足を絡ませ腕は首に回る。口だけは拒否するくせに身体は正直ってやつですかね、とかなんとか既にどうでもいい。サスケの下着に指をかけた時、嫌な予感がした。その予感は的中し、足音が部屋に近づいてきている。サスケとの関係は親公認だがいくらなんでも最中に出くわすのは今後の親子関係を考えると避けたい状況だ。そんなオレの葛藤を分かっているのかいないのか(恐らく前者だ)サスケは構うことなく甘え倒してくる。

「サスケやべえぞ」
「何が?」
「白々しい! 誰か来てるだろ」
「……お前の母親だな」
「なんで分かんだよ」
「なんとなく足音で」

 気にする様子もなくサスケはオレの首を引いてキスをねだる。可愛いなちくしょう。しかしそれにキュンキュンしている場合ではない。いかにこの現状を切り抜けるか思考を巡らせるが何も思い浮かばない。そうこう悩んでいるうちにドアがノックされた。

「開けんな!」
「はあ…? あんた起きてたの? 早くいらっしゃいご飯は出来てるんだからね」
「分かってんよ、すぐ行くって」
「全く…朝から元気なことね! サスケくんに無理させないのよ!」
「……!」

 さすが我が母だけあって、行動も思考も筒抜けのようだった。一気に脱力してサスケを押し潰さないように身体を布団に落とした。オレの寝床であるというのにそこはサスケの匂いばかりが主張している。サスケの腕が伸びてきてオレの頭を胸に抱き込む。心臓の音が心地いい。

「で、シカマル?」
「……で、ってなんだよ」
「続きは?」
「お前、なあ……とりあえず終わり! 朝飯食いに行くぞ。ほら、服着る!」
「なんだよその気にさせといて」
「仕方ねーだろ。また後でな」

 不服そうなサスケに唇を落として服を渡す。丁度首元が隠れる服でよかった。まだ行ってみないと分からないが親父がいたらちょっかい出されるに決まってる。サスケの手を引いて立ち上がった。部屋を出ようとドアを開けると後ろから抱きすくめられる。なんだ、と振り返ろうとしたとき生暖かい感触が左耳を襲う。

「…っ」
「オレお前の耳好き」
「……そりゃどーも」

 サスケが可愛すぎて廊下の先でニヤつく親父とかやかましい腹の虫だとか、全部どうでもよくなった。どうせ後で散々からかわれることになるんだ、サスケも一緒に、な。



バカップルの日常
(耳フェチで耳が弱い彼)
(そしてその恋人に甘すぎる彼)
(自覚有りのバカップル!)


 
100804改編



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -