情事後独特の、緩やかで甘い空気が部屋に満ちる。決して不快ではない気怠さが体を包む。シカマルは隣でぼんやりと天井を見つめるサスケに視線を落とした。もちろんサスケは何も身に付けておらず、申し訳程度に薄い布団が掛けられているだけで非常に目のやり場に困る。全てを暴いておいて今更だが事実、情事を物語るサスケの表情にシカマルは欲望を理性で押さえ付けるように目を閉じた。隣でサスケが身動きをしたのが分かり目を開けると黒い瞳がパッチリとシカマルを見つめている。先程まで焦点が合わずぼんやりと瞬きを繰り返していたとは思えない。けれどその瞳は潤み、色を含んでいる。シカマルはサスケの頭に手を伸ばして髪をくしゃりと撫でた。サスケは自らシカマルの胸に擦り寄ってくる。動物のような仕草が可愛くてしょうがない。口に出して機嫌を損ねても馬鹿らしいのでシカマルはサスケを腕に抱き込むだけにとどめた。くすりとサスケが笑い、シカマルの首筋に息がかかる。シカマルが息を詰めたのが分かったのか、サスケは先程よりも分かりやすく笑った。

「…笑うな」
「ああ…悪い悪い」
「欠片も思ってねーな」

 そこからまた会話がなくなる。居心地のいい沈黙が満ちる。
 突然サスケがシカマルの手を取って指先に唇を落とした。その仕草はやけに神聖なもののように思えて、シカマルは驚きに言葉を発しようとしたのをとどめる。人指し指から中指へと、当然のように唇が滑っていく。最中にもサスケが指にキスをしたりはするが、それとはまた別に、妙な倒錯的な気分に陥る。白い目元に長い睫毛の影が落ち、赤く色付いた唇が自分の指を滑っていく様子にシカマルは体の体温が上がるのを感じた。既に陽が昇り明るくなっている。行為に及んだのは今日の日付に変わってからだったが、それにしてもかなりの時間が経過している。幾度も行為を重ねたのだからサスケの体は既に限界だろう。
 いくら体力があるといってもこれは多少ベクトルが違う。しかしその行為にしてもシカマルは三回目を終えた時点でサスケの事を考え止めておこうとしたのだが、まだ大丈夫だと聞かないサスケに引きずられるように繰り返した結果日の出を見ることとなったわけだ。しつこく指にキスを落とすサスケに、そろそろじゃれ合いだけでは済まなくなると思い名前を呼ぶ。

「サス、ケ…っ」

 言葉が音になり丁度サスケの鼓膜を揺らした時、指先がサスケの口に含まれた。思わず言葉を失う。伏せていた瞼をゆっくり開き、真っ直ぐシカマルの目を見つめた。シカマルがごくりと唾を飲む様子を見て目を細めて見せ付けるように指を舐め上げた。サスケの真っ赤な舌が自分の指を這う様子に再びシカマルの欲が頭をもたげる。いよいよ冗談では済まなくなってきた。

「サスケ、お前、」
「…ん?」
「…止めとけって」
「………」

 シカマルの制止の言葉を無視し、指の根元や間までねっとりと舐め、すっかり自分の唾液で濡れたシカマルの指に音を立ててキスをする。その様子を見て、健全な男子が反応を示さないはずもなく、焼き切れそうな理性でなんとかシカマルは自分を抑える。しかし真っ赤な舌が覗く度に十数分前のように押し倒して息つく暇もなく舌を絡めてしまいたい欲望がシカマルを襲う。再び熱い口内に含まれた指に力が篭る。やわやわと歯を立てるサスケはシカマルの葛藤を楽しむようにしつこくシカマルの指にこだわる。

「…サスケ」
「…ん」
「…洒落になんねーから」

 べろりと大きく舌を出しシカマルの指に舌を押し付ける。シカマルの言葉を気にする風もないサスケにシカマルは途方に暮れた。最早後戻り出来ないくらいに熱を取り戻しているのだが最後の理性がギリギリのところでシカマルを踏みとどまらせている。そんなシカマルに構うことなく、人指し指と中指を付け根までくわえ込んだ。それはシカマルに数時間前の口淫を思い出させる。プツリとはっきり、理性が焼き切れる音がした気がした。サスケの口内に収まった二本の指を動かし、口内を柔躙する。時々苦しそうに目を細める様子はただシカマルを煽る結果に終わる。散々とサスケの口内を犯し、指を引き抜く。唾液が糸のように指と唇を繋いでいる。

「随分な誘い方してくれるな…覚悟しろよ」
「望むところだウスラトンカチ」
「足腰限界の癖によく言うな」
「大丈夫だろ、若いから」
「アホかよ」
「お前が中々ノってこないからもう勃たないのかと思ったぜ」
「…大丈夫だろ、若いから」
「…あーみたいだな」

 サスケを跨いで上半身を起こしていたために若さの象徴が目に入ったようでにやにやとシカマルを見る。そこばかりに注目するサスケに気恥ずかしくなったのかシカマルはサスケの目を隠した。

「なんだよそういうプレイか?」
「目隠ししたままがいいか?」
「ん…どっちかって言えば目隠しじゃない方が」
「じゃあそんなに見るんじゃねーよ」
「見えんだよ」

 口端を吊り上げ笑うサスケの唇を奪い息を止める。目隠しはそのままにバタバタと暴れるサスケを押さえつけた。抵抗する気が失せたのか暴れるのをやめたサスケの目隠しをやめシカマルはサスケの顔を覗き込んだ。

「どうかしたか?」
「いや、抵抗すんのも疲れんなーと思って」
「やる気だったんだろ、もともと」
「まあな。…ん、続けろ」
「女王様かテメーは」
「つべこべ言うな」

 挑発するような視線にシカマルは敵わないと首を振った。



不満足な女王様
(やっぱり眠いかも)(お前ここまで誘っといて…!)

end


100804改編



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