恋人の誕生日を祝いたいというのは人の情というもので、オレも例に漏れずその為のいいアイディアを練る。ありきたりなものしか思いつかない自分を情けなく思うが仕方ない。プレゼントなんて気の効いたことが出来るはずもなく、恋人の好きな料理を自分で作り、ケーキでも用意するかと思ったがそういえば以前甘いものは洋菓子より和菓子の方が好きだと言っていたのを思い出した。しかし誕生日ケーキの代わりになりそうな和菓子も思いつかない。仕方ないから小さなケーキを自分で作ることにした。誕生日に鯖の味噌煮なんて色気がないとも思うが好きだと言うのだから納得しておこう。別に料理は下手なつもりはないが好きではないので頑張った方だと思う。

 などと考えながら出来上がった鯖の味噌煮を味見してみる。自他共に認める味覚オンチのオレが味見をしたところで何の意味もないのだが一応。既に完成し冷蔵庫で冷やされている小さなケーキと鯖の味噌煮、その他の料理を見てこんなものでいいのだろうかと首を傾げた。駄目だと言われても今更変えるつもりはないしここまでの努力を認めて欲しいところだ。

 他の数品を作っているうちに待ち人の気配が近付く。最近忙しいらしく中々家に帰ってこない上に帰ってきてもオレに構うことなくベッドに潜り込むろくでなしのためにここまで考えてやるオレはきっといい嫁になる。もちろんシカマル限定で。うわ、めんどくせえ。自分で考えておきながらうんざりした。悪くねえなとか思う自分に特にうんざりした。

「ただいまー」
「おかえりー」

 やる気なくかけられた声にこちらもやる気なく答えぺたぺた足音を立ててシカマルの方へ近付く。もはやトレードマークとなりつつあるシカマルの隈は史上稀にみる濃さだ。しかし鯖の味噌煮の匂いに気付いたのか少し照れたようにこちらを見る。そんなシカマルがいい年した男の癖に可愛く思えるオレは多分末期なのだろう。

「風呂入るか?」
「あー一応シャワーは浴びてっから後で。腹減った」

 服脱げば、と言い残して料理を温めにキッチンへ戻る。出来上がった料理をテーブルに並べてシカマルが部屋着に着替えるのを盗み見ながらケーキにろうそくをさした。オレに遅れること二ヶ月弱。やっと同じ年だぜ?なんて揶揄するように言うとバーカと笑いながら返してきた。椅子に座り、向かいあってろうそくに火をつけ、ケーキを差し出す。

「ん」
「…消す?」

 黙って頷くとシカマルは一息でろうそくを吹き消した。

「誕生日おめでとう」
「あー…ありがとう」
「何、照れてんのかお前」
「らしくねー」

 なんだよ!などなど言いつつシカマルが今日のメイン、鯖の味噌煮を口にするのを凝視した。食べづらそうにしているがこちとら必死だ。

「食べづらいわ!」
「うるさいいいから食え」
「………」

 黙って口に入れ、齟嚼する。お、だのあー、だの言うから感想を促すように視線をやる。

「なんか……」
「なんか?」
「すっげー………うまいです」
「………だろ」

 素直に照れた。自分で感想を促しておいてだが料理を誉められるとどう反応していいか困る。妙な笑い方をしてオレも料理に箸をつけた。

 あっと言う間になくなった料理に安堵して頬杖をついてシカマルを観察する。どうやら口の中のものも無くなったようなのでケーキを勧めてみる。フォークでケーキを少し掬い上げ、シカマルに差し出した。

「……あーん」
「あーんてお前」
「…早く。手がだりぃ」
「お前な…」

 なんだかんだそのケーキを食べるシカマルに満足した。今度はフォークをシカマルに渡す。

「あんまり甘くなくてうまい」
「甘さ控え目で愛情たっぷりだ」
「…なるほど。てかお前これも作ったのか」
「スポンジから頑張ってみた」
「……可愛いことしてくれるなお前は」
「どういたしまして」

 甘さ控え目のケーキを半分ほど食べ終わると最初にオレがしたのと同じようにケーキを掬い上げ、差し出してきた。

「…いらねえ」
「甘さ控え目で愛情たっぷりだぜ」
「ウスラトンカチ」

 ずっと差し出したままにさせておくのもそれはそれで楽しいが、仕方なくケーキを口に含んだ。甘さ控え目でも甘いは甘い。一口で十分すぎる甘さだった。

「シカマル」
「何だ?」
「誕生日プレゼントには満足してくれたか?」
「バッチリだ。お前味覚オンチなのに料理うまいとか奇跡だよな。すげー美味かった。ありがとう」
「どういたしまして」

 穏やかに笑うシカマルを見て、シカマルの手を取りフォークでケーキを掬い上げる。

「ちなみに。もう一パターン誕生日プレゼントがあるわけだが」

 そう言ってケーキを自分の口に運ぶ。そして腰を浮かせてシカマルに口付けケーキを押し込んだ。味わえとでも言うようにシカマルの舌にケーキを押し付ける。どろどろに溶けたケーキをシカマルが飲み込んだのを確認してから唇を離す。腰を落として、目を細めてシカマルを見る。シカマルは、いやらしく笑って親指でオレの唇をなぞった。

「プレゼントは、サスケ自身…だって?」

 ポケットに忍ばせておいた長く赤いリボンをくるくると首に巻き付けリボン結びをする。

「欲しいなら、やってもいいぜ?」

 挑発的に笑ってリボンを指で弄ぶ。無遠慮に引かれるリボンに指を添え、また無遠慮に押し付けられる唇に答えるように唇を薄く開いた。まだ甘さが残る熱い舌に思考まで溶かされてしまいそうだ。

「遠慮なくもらうぜ、サスケ」
「どーぞ」

 久々にシカマルの腕に抱かれ、今日という日に心から感謝した。




祝福の日、誓いの口付けは甘く熱い
(すべてはいとしいかれのため)(あたえあうしあわせとあいはひどくあたたかい)


end
 
*****
なんかサスケはアホだしシカマルはスケベ親父っぽい←
これでも祝ってる!
ありきたりだけどこれが一番萌えるのですよう
拙宅のサスケは一人暮らしのせいで味覚音痴となっております…←

 
100730改編


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