猫っ毛の黒髪が首元にかかり、実にくすぐったい。それ以上に首元にかかる、あるいは耳元で聞こえる息遣いに内心ドキドキだ。後ろから羽交い締め…いや、言い方がよくない。後ろから抱き締められた…いや、少しニュアンスが違う。そう、後ろから抱きつかれた。抱きつかれた状態で、その腕はオレの腹にまで回っている。もちろん体の密着度はこれ以上ないほどで、しまいには足まで体に絡んでくる。オレより少し低い体温が心地いい。というよりこの密着によってオレの体温は上がるばかりだ。

「なぁ」
「…なんだよ?」
「暑い」
「…あの、なあ」

 自分からくっついてきておいて何を言い出すかと思えば。だが腕が離れることはない。それどころか首元にある頭はぐりぐりと押し付けられる。

「何だお前……」

 疑問を口にしても返ってくるのは唸るような声ばかり。その間にも押し付けられる顔。いや、非常に可愛いとは思うのだが。すると突然顔があげられた。腹に回っていた腕は首に、まるでおんぶするように。より近くなった息遣いに、血が耳に、特に右耳に集中するのが分かる。

「っとーにお前は…」
「シカマル?」
「甘えたさんかお前」
「甘えたさんってお前」
「可愛すぎんだよめんどくせーな。好きなだけ甘えさせてやるからちょっと顔見せろ」

 そう言ってグイと体を反転させると女共から騒がれる端正な顔がオレだけを見つめている。無理に腕を解いた所為か少し不機嫌そうな、それでいて楽しそうな瞳は引き込まれそうなほど黒い。サスケが何かを言おうとしたがそれを遮るように唇を寄せた。触れるだけ、と言い聞かせて唇を離すと細められた瞳が続きを促す。その誘いを渾身の決意で振り払い顔に手を伸ばした。滑らかな肌はきっと女のそれより美しい。頬にキスを落として猫っ毛を絡めとるように頭を撫でる。オレに頬を擦り寄せる様子はさながら猫で、喉を鳴らしはじめればきっと本物だ。

「シカマル」
「そんなに急ぐなって」
「……好きだ」

 耳元でサスケの甘い低音ボイスは腰にくる。相変わらずとんでもないことをするやつだと思いながらも「オレもだ」と返す。が、何か不服だったようでふわふわした空気が一転する。もっとも理由なんて分かり切っている。

「悪かった、オレも、好きだ」
「よくできました」

 もう一度触れるだけのキスをした。これ以上続けると収拾がつかなくなるので抱き合ったり撫でたりで誤魔化したかったのだが、サスケがゆっくりとオレの唇を舐めて挑発してきたおかげでオレは理性とお別れをすることになった。

「シカマル」
「何だ」
「トイレ行ってくる」

 あらゆる意味で信じられないやつだった。そんなところも好きすぎるオレが一番信じられないということは言うまでもない。



日曜日、現在午後三時
(甘えたさんってより甘えん坊のが可愛くねえ?)(お前は可愛さを追求していくのか)

 

100730改編


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -