どうにも雨の日が苦手だった。
 理由、なんて考えたって無駄だろうと思う。きっと原因は心のどこかで気付いている、認めたくないだけなのだ。
 ずきずきと痛むこめかみに眉をひそめ起きているのも辛くなり大人しくベッドに潜り込む。もうすぐ梅雨入りしそうだというのにベッドにはまだ毛布がかかっている。毛布を手繰り寄せ頭からかぶってしまえば頭痛も幾分か引いた気がした。

「サスケ」
「………ん」

 毛布の上から頭を撫でる手が心地好い。頭に響かないように囁くような小声が柔らかく耳に届く。閉じた瞼の裏に浮かぶシカマルの顔が恋しくなり毛布から顔を出す。口許を緩めたシカマルはもう一度囁くように名前を呼んだ。

「頭痛、ひどいのか」
「……今はそうでもない」

 同じく横になったシカマルが邪魔に思ったのか髪をひとつに纏めた髪紐を丁寧に解き、はらはらと長い髪がベッドに流れていった。艶のある黒髪と白いシーツのコントラストが視神経に刺激を与える。シカマルの肩に額を押し付けるようにして身を寄せた。
雨の日は、苦手だった。
 永遠に続くように思える頭痛と一人で戦わなくてはならないことがなにより苦痛だった。雨音が静かな部屋に響き渡り自分以外の人間が存在しないことを思い知り何度絶望したか知れない。情けなくも一人無意味に枕を濡らしたことすらあった。
 男の手の平が優しく髪を撫でる。耳を澄ませば心音さえも聞き取ることが出来そうな距離がくすぐったくもあり面映ゆい。つきん、と痛んだこめかみに柔らかい唇が触れた。

「お前は雨が嫌いかもしれねーけどよ、オレは嫌いじゃねーな」
「理由は?」

 シカマルの言葉に気分を害すこともなく、純粋にその真意を問う。少し上にある顔を見上げるとシカマルは穏やかに笑った。先程こめかみに触れた唇が次は額や瞼に触れる。しかし一向に唇に落とされないことに焦れて毛布から手を伸ばしその唇に触れ、首に腕を回して唇を重ねた。じわりと暖かくなるのは唇だけではない。軽く舐めたあと離れて見た顔は相変わらず穏やかな笑顔だった。

「人恋しいサスケが甘えてくるだろ?」
「悪いか」
「甘やかしたいからな、オレは」
「じゃあもっと」

 いまだ頭痛は引かない。雨も止まない。しかし、それもあまり気にならない。雨音は心地好いシカマルの声音に掻き消され頭痛は口づけの雨に上書きされる。
雨の日は苦手だった。
 でも、今は嫌いじゃない。




レイニー



「シカマル、好き」
「オレも好きだ」
「もっと」
「好きだサスケ、愛してる」
「………はは、ばぁか」
「なんだよ」




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雨の日は無能なサスケとかいいじゃんちょうど火使うんだし、とか思ったけれど雷も使えるんだから別に無能じゃなかった…(←)
久々なのに短くて申し訳ない


100530


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