※現パロ
※下品



 サスケは頭を抱えた。頭が痛い。痛いのは頭だけではなかったけれど、とにかく頭を抱えた。どうにかして意識を反らしていないと耐え難い痛みだった。どうしてこんなことになってしまったのか、ぎゅっと目を閉じたあと、霞む視界の先にいるシカマルの顔を睨みつけた。


 そもそもサスケは、今のところ恋人が欲しいとは思っていなかった。建前としては一人の人間だけと関わっているより、色々な人間に触れてみたかったから。本音は、相性のいい男を探していたから。相性、とはもちろん身体の相性である。サスケは身体の相性がいい男を探しながら気まぐれな性生活を送っていた。
 シカマルと出会ったのはそんな時だった。性的な意味でも親しく付き合っていた友人のアパートから出たところで、サスケはシカマルとすれ違った。友人と同じアパートに住んでいたらしい。一目見た時の印象は、好みの顔だ、だった。けれどすぐにノンケだと感じた。ノンケを開発してこちらの道に引きずり込むのも悪くないが、手間だ。見た目は好きだけれど、諦めるか。何事もなく足を進めていると、突然腕を掴まれ、サスケは驚いて後ろを振り返った。そこで自身の行動に驚きの表情を浮かべたシカマルと目が合った。
 それから。初めて見た瞬間のシカマルはノンケ、という直感は正しかった。正しいはずなのに、猛烈なアプローチを受けた。シカマル自身が自分はノンケだと言っていたにも関わらず、だ。

「別に男は好きじゃねェよ。サスケが好きなんだ」

 そんなありふれた言葉がサスケの胸を打った。ノンケの男に好意を寄せられたことがなかったのが敗因だったのかもしれない。それからシカマルの顔が好みということも理由のひとつに違いない。
 シカマルの告白に対して頷いたサスケは、初めてノンケの男と付き合うことになった。
 最初こそ、シカマルと付き合ったのは顔が好みだから、それから物珍しさから、だったけれど。シカマルに触れて、キスをして、そんなことを繰り返しているうちにほんのりとシカマルに対して恋愛感情を抱き始めた頃。
 シカマルに噛みつくようなキスをする。薄く開いた唇の間に舌を差し込んで、奥に引っ込んでいる舌を絡め取る。髪を高くに結い上げた髪紐を引くと、長い髪がはらはらと落ちてきた。艶やかな髪をくしゃりと掴む。頭ごと引き寄せて舌を吸う。引きずり出された舌に歯を立ててからシカマルを解放する。荒くなった互いの呼吸が触れ合う。とろりとした瞳を覗き込んだあと、ピアスの光る耳に舌を伸ばした。シカマルが首を捻る。逃がさないように身体を抱き込んで、そのまま押し倒そうとすると、くんっと身体の動きが止まった。

「ン?」
「サスケ……」

 僅かに上擦ったシカマルの声に心臓が跳ねる。早く抱いてしまいたい。そのままソファーに身体を横たえさせようとした時、急に地面が揺れた気がした。気がつけば背中に柔らかな感触があり、ソファーに押し付けられたことを悟る。シカマルの熱っぽい瞳に、シカマルのせんとすることを察してサスケは俄かに慌てた。

「ちょ、ま、待て」
「なんだよ……今からってとこだろ……空気読めよ」
「空気読むのはお前だバカマル。なんでオレを押し倒す」
「なんでって……そんなのお前、……えっもしかしてサスケ……オレを抱く気だったのか?」
「ッたり前だろ! オレはタチだ!」

 長くタチで回ってきただけに、まさかノンケに尻を狙われるとは思いもしなかった。お互いに困惑した表情を浮かべ、シカマルは頭を掻いた。

「つってもよ、サスケにゃ悪ィがオレは無理だぜ?」
「何が無理なんだよ」
「いやお前に抱かれるとか無理だろ」
「何マジなトーンで言ってんだ普通に傷つくわ」

 さらに困ったような表情を浮かべるシカマルにサスケは溜息の出る思いがした。今までにタチの争いなんてしたことがない。そもそも互いにタチだと分かれば行為に至る前にお互い何もなかったことにしてしまうことばかりだった。
 困った。けれどサスケにしても、自分が抱かれるなんて想像もしたくない。

「お前男抱いたことねえだろ。とりあえず最初はオレに任せとけよ。心配すんなオレはテクニシャンだぜ」
「いや一応調べたし大丈夫なんで」
「大丈夫じゃねえよオレの尻が大丈夫じゃねえんだよ」
「まあまあ騙されたと思って試してみよーぜ」

 そう言ったかと思うとシカマルに手首を掴まれ、そのまま胸を抑えつけられた。シカマルは器用にサスケのベルトに手を伸ばし、片手でかちゃりと外してしまう。サスケの背中にひやりと汗が伝った。少しだけ、シカマルの方が体格はいい。なんてことだ。サスケは自身に忍び寄る危機をいかにして避けるかを懸命に考えた。

「待て、ちょっと待てってちゃんと話し合った方がいいだろおい聞けバカ!」
「聞こえねーなー」

 口を動かしながらシカマルは手を動かし、サスケは頭を働かせた。あれよあれよと言う間に下半身を剥きだしにされてしまったサスケは天を仰ぎたくなった。しかしまだ諦めるには早い。なんとかして阻止せねば。
 カチッという音がして、すぐに下腹部に冷たいものが触れてサスケは息を呑んだ。

「つっめてえな! いきなりローションぶっかけるウスラトンカチがどこにいる!」
「へ? ああ……悪ィ」

 ローションがとろとろと肌を伝う感覚に眉をひそめる。後ろにまで流れついた感覚がある。最悪だ。唸り声を上げたサスケをよそにシカマルはそこへ指を伸ばした。

「痛ッ!?」

 予想外の痛みに声を洩らしたサスケはそこへ目をやる。自分の身体が邪魔してどうなっているのか見えない。とにかく痛い。しかし問答無用でシカマルの指が動いた。

「いってェよウスラトンカチ! 急に指捻じ込んでくんじゃねえよ! 抜け!」
「いやローションあるしそのうちなんともなくなる……だろ?」
「なるか!」

 サスケの罵声を物ともせずにシカマルは指を抜き差しした。その度にサスケはくぐもった声を上げる。シカマルは人差し指で入口を撫でたあと、中指を少し引いて、その隙間に人差し指を差し込んだ。広がる後孔にサスケは唇を噛んで痛みを逃そうとした。数秒二本の指が中を蠢いたあと、二本とも引き抜かれる。サスケは深く息をついた。
 パリッと何かを破いた音がサスケの耳に届いた。ぴりぴりと痛む尻のせいでその音にすぐさま反応できなかった自分を後から呪うことになる。ひたりと後孔に何かが触れ、その温度にサスケはまさか、と目を見開いた。膝の裏を抱え上げられる。そのまさかだった。馴らしきっていない後孔に捻じ込まれたシカマルの昂りに、サスケは色気のかけらもない声を上げた。呻き声とも唸り声ともとれる、地を這うような声だった。そして、冒頭に戻る。

「……あとで覚えてろ……とりあえず、抜け……」
「ン、入んねー」
「聞いてんのか……!」
「や、せっかくここまで来たんだし最後まで」
「どこまでだ! ろくに馴らしもしねェで入るか女じゃあるまいし濡れねェんだよ、だからオレがちゃんとやってやるって言っただろうが! いいからさっさと抜きやがれ」

 先のほんの少しだけをサスケの後ろに収めたシカマルは悩ましい表情を浮かべた。しばし迷ったあと、後ろめたそうに口を開いた。

「童貞卒業する前に処女喪失するとか、オレがあまりにも可哀相だろ!」
「おっ……まえ……童貞かよ!」

 耳を赤くしたシカマルは気恥ずかしげに目を反らした。その反応にこんな状況でも思わず可愛いと思ってしまう。

「つーか……童貞ならなおさらオレがやった方がよかったじゃねえか……先に言えよ……」
「言ったら間違いなく抱かれると思ってな」
「……とにかく、抜け。話はそれからだ」

 シカマルはしぶしぶ、という風に昂ったそれを抜いた。ふう、とサスケが深く息をつく。ひりひりと痛む尻に眉をひそめて、それから目の前にいるシカマルを呆れた目で見遣った。

「オレのハジメテはサスケにもらって欲しくてだな」
「それ、童貞じゃなくてもいいよな、処女でもいけるよな?」
「オレの童貞をもらってくれ」
「いらねえ」
「じゃあサスケの処女をオレにくれ」
「オレは処女じゃねえよ残念だったな。観念してオレに抱かれろシカマル」
「は!? 後ろの経験あんのかよ」

 シカマルに肩を掴まれ揺さぶられる。何度も経験したわけではないけれど、何度か。数える程度に。残念ながらハジメテは文字通り奪われてしまった。別に減るものでもないし、まったく気にしてはいないけれど。

「経験あんならタチ譲ってくれたっていいじゃねーか」
「いやだ」
「男の矜持に関わる問題だぜ?」
「互いに男だろ何言ってんだ」

 口論は平行線、なかなか収束を見せなかった。



上下争奪サバイバル



120212

 

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