※性描写注意






 つきんつきんとしたこめかみの痛みでサスケは目を覚ました。遠くの方でテレビの音が聞こえている。部屋は随分と寒い。霞んだ視界の中で上半身を起こすと、関節がぱきぱきと音を立てた。寒いと思ってみれば、上半身はさらけ出されており、下半身はジャージが膝辺りまでずり落ち、下着が辛うじて腰骨で引っ掛かっている状態だった。寒いに決まっている。年が明けてすぐだと言うのに、暖房のついていない部屋でこの姿でいれば当たり前だった。痛む頭を押さえて近くのこたつに肘をついた。ほのかに温もりを感じて足をこたつへ差し込む。身体を動かすのが億劫でずり落ちたジャージは気にしないことにした。
 起きぬけのぼんやりとした頭ではまともにものを考えることができない。ぼんやりと視界に入ったテレビを見つめるが内容は頭の中に入って来ない。昨日は大晦日で、酒を飲みながら過ごして、年が明けてからも飲み続けて、それからどうしたのか覚えていない。外はほんの少しだけ明るくなっているからちょうど日の出の時間なのかもしれない。日の出が何時だったか、知らないけれど。はあ、と溜息をつく。アルコールの抜けきらない身体は気だるさを残していた。

「っう!?」

 突如として伸びてきた手に腕を掴まれ、力任せに引き倒された。混乱を隠せないサスケはうろうろと視線を彷徨わせて、伸びてきた手を辿った。その先には薄く笑みを浮かべたシカマルがいた。相手がシカマルだったことに安堵の溜息をついたサスケはシカマルの方へ身体を寄せる。シカマルもサスケと同じように半裸の状態だった。おそらく酒が入って身体が火照り、服を脱ぎ捨てたのだろう。

「……寝てた」
「オレも」

 アルコールで焼かれて掠れた声でサスケが呟くと、シカマルが笑って頷いた。シカマルは緩んだ髪紐を解いてごろんと横になった。長い髪の毛が床に散る。それを掬い取ってすんと匂いを嗅ぐと、微かにシャンプーの匂いがした。くすりと笑ったシカマルの顔が近づいて額が触れ合う。気だるさとゆるりと訪れた眠気に流されまいとして、まばたきを繰り返した。

「眠い?」
「んん」

 シカマルの問いに唸って答えると、シカマルは息を洩らした。その後すぐに唇が触れる。首の後ろを撫でられて意識が一瞬反れた隙に、唇に歯を立てられた。反射的に開いた唇にぬるりとした感触がして、それが舌だと理解した時には自身の舌を絡め取られていた。
 強いアルコールの匂いがした。まだ互いに眠りに落ちてからそう時間は経っていなかったらしい。記憶の限り、シカマルが最後に口にしていた酒を思い浮かべながら飲んでもいないのにそのアルコールを口にしている感覚に陥る。触れた舌の熱さに溶かされる感覚が、アルコールに舌を焼かれる感覚と似ていたからかもしれない。薄目でシカマルを見遣ると、微かにまたたく度に揺れる睫毛がシカマルの目元に影を落としていた。ゆったりとした、それでいて長い口づけが終わる頃にはアルコールに因らない火照りが身体を襲い、忙しなくなった呼吸音がテレビの雑音と混ざり合っていた。

「今何時だろうな」
「っ、さぁな」

 ずし、と圧し掛かってきたシカマルに耳元で囁かれ、ぴくんと肩が揺れる。その声音が答えを必要としていないことを察して何も考えずに返事をした。
 シカマルの指が素肌を滑って脇腹をくすぐる。くすぐったさに身を捩ってその手を止めようと手を伸ばすがあっさりと阻止され、床に縫い付けられてしまう。また唇が重なって、優しく食まれると全身から力が抜けていった。
 するりと指が胸の突起に触れて息が詰まる。しつこく捏ねるように触れられて声を上げそうになるけれど、唇を塞がれているおかげでくぐもった唸り声が上がるに留まった。それからも執拗に右の突起ばかりに、左への刺激を身体が欲し始めるのと同時に下腹部が熱を持ち始める。シカマルの拘束から逃れた手で胸の突起に触れる手を掴む。非難めいた視線を投げかけるとシカマルの目がにやりと光った。

「どうした?」
「っふ……わ、かってるくせに……!」
「は……意地悪してェ気分なんだ仕方ねーだろ」
「何がッ、っあ」

 喋る度に唇が触れるような距離でシカマルは人の悪い笑みを浮かべたかと思うと、掴んでいた手を振り払うようにして下着の上から熱を持った昂りに触れた。ゆるゆると撫でられて堪えようもない感覚が身体を襲う。物足りない刺激に腰が動くけれど、手に押し付けるように腰を動かしたかと思えばシカマルの手が引いてしまい結局望んだ快感は得られない。潤んだ目でシカマルを見上げると、その瞳がぎらりと揺らめいた。
 上半身を起こしたシカマルが腰を跨ぐ。熱を持った互いの下腹部が触れてほのかな期待が胸を掠めた。意識が完全にそこへ行っていたところに、右胸の尖りを親指で押し潰されて喉の奥から引き攣った声が上がった。

「ひっ、ぅ……も、そこじゃ……ン、ん」
「でもココ、こうされんの大好きだろ?」
「ちっが、ぁ、はぁ……」
「好きって言わねーとここ触ってやんねェぞ」

 指でついと昂りに触れられて短い声が洩れる。いい加減直接的な刺激が欲しくてシカマルの言葉に何度も頷く。

「この可愛い口は何の為についてんだよ?」

 胸の尖りを弄り回していた指が唇を挟む。シカマルの望む言葉を口にするのは酷く羞恥を煽られたけれど、既にそれすら快感に変換してしまえるよう教え込まれた身体は昂りに熱を集めながら唇を震わせる。

「好きだ、って、ぁ……ッぁあ」
「やっらしーの」
「ッも……なんっで……!」

 昂りへの刺激を求めて恥を忍んで口にした言葉も虚しく、シカマルの手は再び胸の突起へと伸びた。弄られすぎて赤くなったそこはちりちりと小さな痛みが伴い始め、しかしそれも快感のひとつとしてしまうはしたなさに唇を噛みしめる。

「仕方ねェなァ」
「ンッ……は、ぁん……」

 ぐりぐりと捏ねまわされる刺激に身悶えしていると、シカマルの熱が下腹部に押し付けられ、欲していたものに比べて弱いものではあるものの、やっと満足のいく刺激を得られて安堵に近い溜息とともに鼻にかかった甘い声が響いた。

「……今の声はやべーな」

 途端に目の色が変わったシカマルが腰をぐんと押し付けてきた。昂りが布越しではあるが触れ合ったことで、背中を痺れが走る。けれどシカマルは、その後は先ほどと変わらず腰を軽く揺らすだけで微かな刺激しか与えてくれない。眉を下げてシカマルを見つめても厭らしい表情を浮かべるだけで動こうとはしない。

「シカぁ……」
「じゃあ交替するか」

 甘ったるく名前を呼ぶと、シカマルは心得たとばかりにサスケの腕を取った。引かれるままに上半身を起こすと、シカマルに腰を抱かれてあっという間にシカマルの身体を跨ぐ格好へと誘導されてしまった。
 触れた互いの熱にシカマルの言う「交替」の意味を理解して、腰を揺らした。間接的にではあるけれど、やっと欲しい刺激を得ることができたことに身体が打ち震える。懸命に快感を得ようと腰を振っていると、起きた時から脱げ掛けていた下着がさらに下がり、昂りが露わになりそうになった。直接的な刺激が欲しくなって腰の動きを止め、下着を取り払ってしまおうと手を伸ばしたところにシカマルの手が重なる。脱がされると思い手を止めると、意思に反して下着を引き上げられた。

「っ!」
「ダーメ。このまま、な」

 そう言ってぐいと腰を引かれて布越しに昂りがぐりと触れ合う。言葉にならない感情が胸の内を巡るが、それを口にするよりも早く快感が欲しいと腰が動いた。自棄になりながら腰を打ち付けていると視界が白み始めて限界が近いことを悟る。駄目押しのように押しつけた昂りに限界が訪れ、背が弓なりにしなる。

「あ、はっ……ァっあ! ン、はぁ……」

 下腹部の熱がじんわりと広がるのを感じながら、さらに気だるさを増した身体でシカマルを見下ろす。下腹部に感じるシカマルの熱は未だ硬度を留めている。落ち着いてくる思考とは裏腹に、物足りないと疼く後ろを感じてごくりと唾を飲み込んだ。
 シカマルの指が濡れた下腹部をなぞって、下着の中へ入り込む。吐き出した熱の絡んだ指を見せつけるように舐めるシカマルを恨みがましい目で見たあと、下着を取り払ってしまおうと腰を浮かせた。

「ふがっ」

 途端にその場に似つかわしくない声が聞こえてサスケはそちらに視線をやった。こたつの向こう側には見慣れた金髪の後頭部が転がっていた。ごろんと寝返りを打ったナルトの間抜けな寝顔がこちらを向く。すっかり眠り込んでいて何も気付いていないようだったけれど、サスケの身体はその場で完全に硬直した。
 瞬時に冷静になった頭は昨晩のことを鮮明に思い出していた。大晦日ではしゃいでいたのはシカマルとサスケの二人だけではなかった。任務がなかったナルトとキバも自宅に招いていたのだった。四人で騒ぎながら酒を飲んで、そのうちに潰れてしまって、目が覚めたのが先刻。ということは、この部屋にいるのはナルトだけではない。ぎこちなく首を動かした先には茶髪の後頭部があった。上下する背の動きが不自然である。キバの狸寝入りを悟った瞬間全身が熱を持つのが分かった。

「おお……全身真っ赤」
「シカマ……おま……え……!」

 わなわなと震えながらシカマルに目をやると、唇を歪めているのに気付いて、シカマルが分かって手を出してきたことを理解した。過ぎた羞恥に気が遠くなるのを感じながらもシカマルへ制裁を加えようと手を伸ばす。力ないその手は簡単に掴まれ、最初と同じ体勢へ逆戻りしてしまった。

「ン? 続き、する、だろ?」
「ばっ、な、っんぅ」

 周りで熟睡するナルトと狸寝入りを決め込んでいるキバを無視して事を進めようとするシカマルに慌てふためくが、巧みなキスを繰り返されているうちに身体が熱を取り戻してしまう。疼いていた後ろにシカマルの指が伸びて、サスケは息を詰めた。

「ああああああ!」

 再び場にそぐわない声を耳にして身体を揺らした。シカマルも何事かとそちらを振り返る。こちらに背を向けたキバが耳を赤くしながら起き上っていた。

「もう! 帰る! から!」

 そう叫んだかと思うと、キバの大声にすら気付かず呑気に眠り込んでいるナルトを抱えてキバは部屋を飛び出した。部屋に残された二人はしばらくキバが走り去った方向を見つめたあと、顔を見合わせる。

「……だってよ」
「な、にが『だってよ』だ! さっきの、聞かれてたじゃねえか……!」
「そうだな」
「おま、いい加減にしろ!」
「ンだよ。そうは言いつつ聞かれてると思いながらキスしただけでガッチガチじゃねェか」
「っア」

 すっかり熱を持ったそこを握られてびくんと肩が揺れた。思い出しただけで羞恥が身体を巡って昂りに熱が集まる。シカマルの言葉が図星でさらに羞恥が煽られた。

「新年早々最悪だ……!」
「最高の間違いだろうがよ」

 羞恥で溜まった涙が揺れたところをシカマルの舌が這う。何を言っても無駄だと観念して、失態を忘れるような激しい行為を期待してシカマルの唇に噛みついた。



敗北を知る


120102

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