もしもシリーズ!
勇者×魔王 編 第二弾!



 魔王は動揺していた。上位の魔物は美しい容姿と優れた知能を持ち、それに対抗し得る人間は限りなくゼロに近いはずであった。その魔物の頂点に立つ魔王サスケにとって、たとえ人類の将来を背負った勇者であったとしても、敵ではない、と思っていた。しかしなにが理由かは知れないが、いとも簡単に勇者シカマルに拘束されてしまった。自分と比べてしまえばまだひよっこにすぎない年齢だろうと見てとれる勇者シカマルの、ぎらりと光る野性的な瞳に背筋に悪寒が走る。そもそも身動きの取れない状況で、相手にマウントポジションを取られているうえに身体をまさぐられたあげく急所を探られている状態になってやっと身の危険を感じたというのは遅すぎると言ってもいいくらいである。だがそこはサスケも魔王である。人間に拘束されたくらいで完全に身動きが取れなくなったかと言えば答えは否であった。

「やめろこの人間風情が!」
「おわっ!?」

 あらん限りの力で勇者シカマルを自らの上から振り落とした魔王サスケは乱れた息と着衣を整えた。奪われた唇をぐい、と拭って腰をしたたかに打った勇者を睨みつける。一方急に動きを見せたサスケに驚いたシカマルは腰を押さえながら立ち上がった。再び伸ばした手で魔王の肩をぐっと掴む。またしても簡単に距離を詰められたことに苛立ちを隠せない魔王サスケはその腕を引きはがそうと掴んだ。

「ちょ、待てって、落ち着けよ、な?」
「なぜオレが待つ必要がある!」
「とにかくオレの話を聞けって」
「話なんかしてなかっただろう!」

 憤慨しながら魔王サスケは、腕は掴んだままに勇者の言葉を待つ。そこまで簡単に敵の言うことに従っていいのか甚だ疑問である。話すならさっさと話せ、と怒鳴りながらシカマルに促す魔王はどう見てもいい人であった。

「さっき疑問に思ったんだけどよ、あんた、なんで人間を殺しちまおうと思ったんだ?」
「……貴様になんの関係がある」
「いくらなんでも理由も知らずに殺されるわけにはいかねーだろ?」
「理由を言えば素直に殺されると言っているように聞こえるが?」
「いや、和解狙い」
「オレにそれを言ってどうする馬鹿者め」

 放せ、と腕を払おうとする魔王だったが勇者も伊達に勇者と名乗っているわけではないらしい。強い力は魔王の力をもってしてもなかなか外すことが出来なかった。そもそも勇者は前回自らが選ばれた理由を不運として話していたが、シカマルを選んだその村も随分と強運の持ち主である。

「和解が望めねーなら、退治だろ?」
「人間ごときに何が出来る」
「それが違うんだなー勇者の武器と言えばなんだよ?」

 そう言って不敵に笑った勇者は腰に携えた剣に触れるのかと思わせておきながら、その手は自らの下腹部へと伸びて行った。それを見ていたサスケはシカマルの言わんとすることを理解したのかこめかみに青筋を立てた。

「この聖剣、エクスカリバーさえありゃ魔王の力を封じることが出来るってわけだ!」
「それのどこが聖剣だ! どう見ても性剣だろうがこのウスラトンカチが!」
「おっと甘く見てもらったら困るぜ?」
「見たくもねえよ!」

 怒張した股間の聖剣を露わにしたシカマルは不敵に笑う。その様子にサスケは青筋をピキピキと立て、片腕だけになった自分の肩を掴む手を引きはがそうと躍起になる。しかしその腕のどこにそんな力があるのか、勇者シカマルの手は魔王サスケの肩から離れる素振りすら見せない。

「使い方は、」
「聞いてねえ! さっさとその物騒なものをしまえ!」
「いやこれから使うから」
「使わねえ! 一生だ!」

 シカマルの腕から逃れようとするサスケの地味な抵抗は大した意味を持たず、せっかく片腕だけだった状況から、シカマルのもう一方の腕が伸びてくる。抵抗も虚しく再び両肩をホールドされてしまった魔王サスケは恨めしそうに勇者シカマルを睨んだ。魔物の頂点に立つ魔王がこのような体たらくでいいのか実に不安である。

「ところで、気になることがあるんだが」
「……なんだ」

 しぶしぶ、といったようにサスケが反応する。魔王にしてはガードが甘すぎるのだが、もしかしたらこれが他の魔物を従える秘訣なのかもしれなかった。そして、真剣そうな眼差しで勇者シカマルは口を開いた。

「魔物って時々雌雄同体のやついるよな? あんたって」
「貴様何を考えてる!?」
「いやオレのエクスカリバーでサスケと合体して子供とか」
「頭おかしいだろ貴様! 雌の機能など持ってない!」
「そうか、残念だ。まあ大した問題じゃねーか」
「なにが、ちょ、やめっ!」

 ぐっと肩を押され、足を払われ魔王サスケは再び地面と仲良くなる羽目になった。思っていたよりも衝撃は少なかったが、見上げた先の勇者シカマルの姿にデジャヴを感じる。腰を跨がれ、魔王サスケが行動を起こす前に、気付けば唇を奪われていた。乱暴な仕草で押し倒したくせに、触れる唇はやたらと優しく、抵抗する気が殺がれていく。

「…ぅ、や、め…ッ!」

 急所をさわ、と撫でられサスケがぴくんと反応した。に、と口端を上げたシカマルが熱い舌を吸い上げる。唇を離して、潤んだサスケの瞳に口づけを落としてやわやわと熱に触れる。少しではあるが兆しを見せているそこに気をよくしたシカマルは服を剥いで直に握り込んだ。

「んっ……、く、そが…ッ! …ぁっ」
「まあそう言うなって、素直じゃねーな」
「誰がっ、ぅ、…っ」

 絶え間なく与えられる刺激にくらくらしながら、サスケは唇を噛む。魔王サスケはどうして自分が今の状況に陥っているのか分からなかった。熱に浮かされながら、なんで大人しく勇者シカマルの話を聞いてやったのだろうかと頭を抱えたい気持ちに駆られ、ちらりと盗み見たシカマルの顔に、まあ仕方ないか、そんな風に思った自分に全力で突っ込みを入れたくなった魔王サスケであった。



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なんか本当にすみませんでした…
ていうかこんな魔王だったら人類の未来は明るいと思う。



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