※大学生パロ




 唐突に浮上した意識に、一瞬で身体が反応した。反射で伸ばした手の先に掴んだ携帯電話で時間を確認する。思考停止。アラームが機能した形跡があるが、なんてことだ、寝過したらしい。幸か不幸か着用していたのは下着だけで、洗濯が終わってすぐのTシャツとジーンズを素早く身につけ、寝室を飛び出した。
 乱暴にドアを開けると、そこには椅子に腰かけてニュースを聞き流しながら新聞に視線を落とし、優雅な仕草でマグに口をつけているサスケがいた。

「ん、おはよ」
「あ、ああ…おはよ…じゃ、なくてさあ! なんで起こしてくんないの!?」
「あんまり気持ち良さそうに寝てたからな。起こすのが忍びなかった」
「サスケの優しさが! オレを窮地に追い込んでる!」

 流し目でオレを見るサスケは若干の含み笑いをしながら、とん、とマグをテーブルに置いた。新聞を閉じるとそのまま立ち上がり、キッチンへと姿を消す。時計を見ると朝飯を食べている暇も無さそうだった。

「つーかよ、サスケも今日ゼミあるだろ! なんでそんな余裕なわけ?」
「今日は休講でな」
「……ひ、人で無し…!」
「サンドイッチ、作ってやったから持って行け。向こうで食べるタイミングくらいあるだろ?」

 キッチンから顔を覗かせたサスケの手にはタッパーに入れられたサンドイッチがあった。他に入れ物なかったのか、とも思ったけれど、そんなこといちいち気にする奴じゃないことはとうの昔に知っている。何よりご飯を作っておいてくれたことにじんとして、小さな声でありがとうと呟きながら洗面所に向かった。
 パシャ、と顔を洗って歯ブラシを口に突っこみ乱暴に歯を磨く。ここから学校までそう距離はないし、不幸中の幸いかバイクの整備は昨日終わって愛車が帰還している。なんとか間に合うか、なんて思いながら水を含んで、歯磨き粉ごと吐き出した。






「今日の授業終わったら真っ直ぐ帰って来いよ」
「へ?」

 サンドイッチを受け取ったあと、慌てて玄関に走ってサンダルを引っ掛けていると、後ろから声を掛けられた。少し眠たそうに小さなあくびを噛み殺したサスケは腕を組んで首を傾げる。さも問題でもあるのか、と言っているようだった。普段なら言うこともないのに、わざわざ言ってくるってことは、今日は何かあるのかもしれない。

「なに呆けてんだよ」

 オレが黙ったままだったことに不満を感じたのか、サスケは眉を寄せた。ぐいと伸びた手が胸元を掴んで引き寄せられる。されるがままに引っ張られると、ふに、と唇に柔らかい感触があった。閉じる間もなかった目とサスケの真っ直ぐな目がかち合ってどくん、と心臓が鳴った。ふと離れた唇を追いかけるようとすると、白い指がオレの唇に触れた。

「お前の欲しいもん好きなだけくれてやるから早く帰って来いっつってんだろ。……誕生日だろうが馬鹿犬」

 オレの唇に触れていた指が離れて、その指がサスケの唇へと触れる。そっとなぞったあと赤い舌がぺろ、とその指を舐めていった。首を傾げているおかげで首筋が無防備で、白い鎖骨がやけに目についた。
 誕生日、だなんてすっかり忘れていた。いや、そういえば今日は誕生日だったけれど、サスケが何かくれるとは思っていなかった。呼吸が浅くなって、思わずサスケに手を伸ばした。首の後ろに触れて、噛みつくように唇を奪うと、今度は緩やかに目蓋が閉じられていくのが見えた。熱い舌を心行くまで堪能していたかったが、舌を強めに噛まれて現実に戻る。

「……遅刻するぜ?」

 近距離でふっと笑ったサスケはくらりと眩暈を覚えるような色気を漂わせていた。ここでゼミなんか放っておいてサスケをいただいてしまえたらどれだけよかっただろうか。断腸の思いでサスケから離れ、くるりと背中を向ける。ドアノブに手を掛け、玄関のドアを開き、サスケに振り返った。

「……っ、シャワー浴びて、待っとけよな!」

 ぴしっと指をさしてそう言ったあと、サスケが楽しそうに唇を歪めたのを見て、玄関を飛び出し、学校へと急いだ。



hurry hurry!



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