ドンッという大きな音が身体の内部に響いて、夜空に大きな花火が上がった。それは一瞬だけ鮮やかに輝き、すぐに消えていってしまう。そしてまた打ち上げられ、夜空が彩られる。花火大会に出向くほど、この行事に興味はない。けれど、自宅から見えてしまうから、なんとなくシカマルと並んで空を見ていた。じっと空を見上げていると、隣でシカマルの笑い声がした。疑問符を浮かべて首を傾げ、シカマルの方へ振り向く。くつくつ笑うシカマルと目が合った。

「口開けて間抜けな顔して花火見てっからさ」
「……うるせっ」

 自分のことを笑われたことが分かって唇を尖らせ、口元を覆った。つい、花火が綺麗だったから口が開いたままになっただけだ。それを、シカマルのやつ!

「拗ねんなよ」
「拗ねてねえよバーカ」
「拗ねてんじゃねーか」

 シカマルの指が宥めるようにオレの目元を撫でた。目を細めて、シカマルを見つめた。目尻を下げたシカマルが口端を上げて、すいと顔を近づけてくる。一瞬重なった唇はすぐに離れてしまった。目元を撫でた指が頬に滑り、そこから髪をかきわけ耳へ触れる。くすぐったくて身を捩ると、シカマルがまた笑った。

「何笑ってんだよ」
「何でもねー……」

 へらりと笑ったシカマルは突然距離を詰めてきて、気づけばオレはシカマルの腕の中に招かれていた。当然のようにシカマルの背に手を回して顔を胸に押し付ける。はあ、と深呼吸をして目を閉じた。けれど、直後にドンッと花火が打ち上がった音がしてぱっと目を開いてしまう。シカマルの肩越しに見る花火は、先ほど見たものより大きかった。
 ちゅ、ちゅ、と顔中に口付けられて、思わず笑みがこぼれてしまう。鼻先に唇が降りてきたときついに笑い声を洩らしてしまった。

「サスケこそなんで笑ってんだよ」
「何でもねえよ」

 笑いながらシカマルの鼻先に噛みつく。優しく歯を立てると、シカマルはくすくす笑いながらオレの背中を撫でた。ふふ、とつられて笑って、鼻先から唇へと矛先を変える。押し付けるように重なった唇が薄く開かれて、ひたりと舌同士が触れ合う。その温度にくらりとして、ゆっくりと目を閉じた。舌を吸われて、鼻から息が抜ける。シカマルはオレの首の後ろを一撫ですると、身体をやんわりと倒した。呼吸のために唇を離したシカマルは鼻先同士を重ねて、囁くようにオレの名前を呼んだ。それに応えようと唇を開くと、途端にシカマルが噛みついてくる。そのままキスに応えることにして、シカマルの頭を掻き抱いた。
 ドンッ、ドンッと、続けて大きな音がした。二人して動きを止める。そう言えば、花火大会の真っ最中だった。ちら、とシカマル越しに花火が見える。シカマルは振り返ることもなく、オレを見下ろしていた。

「花火、見るか?」

 顔のすぐ横に手をついたシカマルは、もう片方の手でオレの頬をゆるりと撫でた。熱のこもった瞳は、たとえ花火を見たいと言ってもそれを許しそうにない。シカマルの顔に手を伸ばして、両手でその頬を包みこんだ。

「別に、いい」

 ゆるゆると頬を撫でる手は止まらない。シカマルは微笑んでちゅっと唇を押し付けてきた。すぐに離れていった唇を目で追い掛けていると、息遣いを感じる距離で、シカマルが再び唇を開く。

「花火見れんの、今日くらいだぜ」

 どうする、なんて目を細めるシカマルだけれど、その目は明らかに先を見ている。その瞳に飲まれてしまったのか、無意識のうちにシカマルの顔を引き寄せていた。重なった唇をやんわりと食まれる。耳に届いてくる音に花火を感じる一方で、それを邪魔に思う自分がいてどこまで貪欲なのかと笑ってしまいそうになる。はあ、と上がった息を隠せないまま口を開こうとするが、すぐには言葉にならない。息を整えようと深呼吸をするけれど、すぐに唇を奪われてなかなか言葉を紡げない。やっとのことでシカマルの唇から逃れると、整い切らない呼吸のまま口を開いた。

「……っ、花火より、シカマルがいいに……決まってんだろ」

 驚きに目を見開いたシカマルが目元を赤らめてふいと顔を反らした。滅多に見ることのできない表情に心臓が騒ぐ。ぎゅう、とシカマルの身体を抱き締めると、シカマルが抱き締め返してきた。ぎゅうぎゅうと音がしそうなくらいに抱き合って、腕の力を緩めてお互いに顔を覗きこみ、笑い合う。ドンッと花火が打ち上がる。それを気にすることなく、また唇を重ねた。




空の花より、隣の君



110825





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