※性描写注意










 人間を殲滅する。そう誓って何百年経ったことか、それを知る者はサスケ以外にはいなかった。そうして、その誓いが風化してしまうことなどないと、サスケは自らに絶対の自信を持っていた。しかし、ならばこれは一体どういうことなのであろうか。
 魔王サスケが根城としているその城は、かつて栄華を極めた王国の王城であった。たしかに古くはなっていたが、サスケ自身が綺麗好きということもあって清潔に保たれている。床は豪勢な大理石。天井には毎日埃を落としてくすみひとつないシャンデリア。サスケはその大理石に身体を横たえて、髪を散らしながら、天井のシャンデリアを見上げていた。

「なんだよ、こんなときに考え事か? さっすが魔王様は余裕だなァ」

 ふいと覗きこんできた男は、少しつまらなさそうにそう言ったあと、意地悪くニィと唇を歪めた。勇者シカマルが魔王の城に乗り込んできてから、サスケは完全に自分のペースを崩されていた。シカマルがサスケの首元に顔を埋め、べろりと鎖骨を舐め上げる。柔らかく歯を立てると、ぴくんとその身体が反応した。

「物好きな……」

 最初こそその場で殺してやろうか、という気持ちがあったが、今ではすっかりされるがままになっていた。シカマルの瞳に捉えられたとき、すべてを殺されてしまった心地がした。はあ、とその場にそぐわない溜息がサスケの口からこぼれる。どうしてこうなったのか、まったくもって理解できなかった。

「何が物好きなんだ?」
「貴様のこと以外に何があると言うんだ?」
「へえ、オレを前にオレのこと考えてくれてたってことか、嬉しいねェ」

 にんまりと笑ったシカマルはサスケの額にちゅっと唇を落とした。それに対して嫌そうに眉を寄せたサスケはシカマルの顔を掴んでぐいと押し返す。長い爪がシカマルの顔に食い込んで、痛い痛いとシカマルがサスケの腕を掴んだ。シカマルが掴んだその腕は、成人男性の平均よりも少しばかり細く、そして白かった。爪が食い込んだ肌からじわ、と血が滲んできたあたりでサスケは仕方なくその手を離した。
 血が滲んだ腕を擦って、シカマルはサスケの身体に馬乗りになったまま部屋をぐるりと見回した。玉座があるその部屋の大理石に転がったサスケはそれを忌々しそうに見上げ、再び溜息を吐いた。

「サスケ、アンタここに住んでるなら寝室とかあるんだろ? どこにあるんだ?」

 突然すっくと立ち上がったシカマルはマントを翻し、ブーツをかつかつ慣らして奥の扉へと足を進めて行った。床に転がったままだったサスケはのそりと身体を起こしてシカマルの方へ振り向いた。

「勝手に歩き回るな馬鹿者!」
「なあここ寝室? 違うよな……こっちか? お、当たり」
「ばっ……勝手に入るな誰の寝室だと思っているんだ貴様!」
「なんか見られて困るもんでもあんのかよ思春期でもあるまいし……綺麗にしてんなー」
「やめろ!」

 ばっと立ち上がったサスケはシカマルの後を追って寝室へと足を踏み入れた。特に見られて困るものがあるわけではなかったが、個人的なスペースに侵入されることが気に障り、サスケはシカマルのマントを掴んだ。足を止めたシカマルが振り返り、マントを掴んでいた腕を取られあっという間にサスケは放り投げられた。どさ、とベッドに転がったサスケが体勢を整える前にシカマルは再びサスケの腰の上に跨り、へら、と笑いかけた。

「やっぱり硬い床よりこっちだろ?」

 何の配慮だ馬鹿者!、とサスケは怒鳴ろうとした。しかし、先の発言を終えたシカマルがその口を塞いでしまったためにその言葉が出て行くことはなかった。シカマルの舌がサスケの口内に侵入して、つるつるとした歯を撫でて行く。人間よりも発達した犬歯を撫でて、奥で縮こまった舌に触れると、サスケの舌は逃れるように動いた。

「んっ……ふ、ん……」

 顔を背けても、シカマルの手がサスケの頬に触れ、唇が追いかけてくる。すぐにまた塞がれてしまう唇に息苦しさを感じてサスケはシカマルの服をぐしゃりと握った。シカマルの指がサスケの襟足を撫で、首の裏にぞくぞくと痺れが走る。舌を食まれたっぷりの唾液とともに吸い上げられるとくらりと眩暈を感じた。

「もっと……知りたいんだよ、アンタのこと」

 シカマルはサスケの頬を親指で撫で、真剣な目をして言った。その瞳に、ごくりと息を飲む。ぼんやりとした視界の中で見上げたシカマルの顔を直視できず、サスケはふいと視線を外した。
 一体どうしてこうなった。何度目になるか分からない自問をする。答えは返ってこない。そのうちにシカマルの唇がサスケに触れる。息を飲んで、反射的に目蓋を下ろした。

「キスしたら、そういう顔をして……じゃあ、その先は? どういう顔で、どういう声で、どういう反応をするんだ? 教えてくれよ」
「何……あ、やっめろ……ッ」

 するりと伸びたシカマルの手が、兆しを見せ始めていたそこにそっと触れる。サスケは慌ててその手を止めようとするが、簡単に絡め取られてしまった。絡め取られたその指に優しく口づけを落とされてサスケは歯噛みする。どうして抵抗できない。唇だけでそう呟く。シカマルが目を細めた。

「本当に嫌なら、オレを殺してるだろ? サスケ、好きだぜ……」

 シカマルの言葉が耳に吹き込まれてぎゅっと目を瞑った。思考まで奪われてしまいそうだった。ゆるりと熱を持ったそこに触れる手を止めたい。自由なはずの腕が動かないのは、きっとシカマルが勇者で、何か魔法を使ったからだ、サスケは自身にそう言い聞かせた。
 衣服の上から触れていた手がする、と中へ侵入する。直に触れた手に思わず声を上げそうになり、サスケは咄嗟に口を押さえた。形を確かめるように指が動いて、全体を手のひらで包みこまれると背中が粟立った。

「……随分ヨさそうな顔してるけど」
「……誰がだ馬鹿者ッ! っう、あ」

 キッとシカマルを睨みつけて反論した途端にグリ、と先端に触れられ声を上げた。熱っぽい瞳でサスケを見つめるシカマルは口端を引き上げて先に触れる指をぐりぐりと動かした。唇を噛んでそれに耐えようにも洩れていく声にサスケは耳を塞ぎたい衝動に駆られた。

「つーか、こんな状況だしよ、名前呼んで欲しいんだけど?」
「……ん、ふっ……誰が、呼ぶ、か……!」
「ふうん?」
「あッ、やぁ……!」

 昂り始めたそこを握り込んだ手が上下に動かされてサスケの口から声が洩れる。次第に粘着質な音が聞こえ始め、サスケの呼吸もそれに合わせて乱れていった。自らでは滅多に触れることのないそこは簡単に熱の解放を求めて、サスケの身体を苛む。身体を震わせて背筋を走る痺れを逃そうとするが、シカマルの手はそれを許そうとはしなかった。

「やっ、は……あ、ン……ぅッ、も……!」
「イきたいだろ? オレの名前呼んでイかせてって言えば、ちゃんとイかせてやるよ」
「ひ、ぁっ……や、う、あっ……」

 人の悪い笑みを浮かべたシカマルは至極優しい口調でそう言いながらも、サスケを攻める手を止めようとはしなかった。サスケが達することができないように根本をぎゅうと掴んで、もう片方の手でそこをなぶった。しとどに濡れたそこは今すぐにでも解放を求めていた。

「な、言ってみろよ」

 シカマルの囁きはサスケにとって悪魔の囁きだった。人間に好き勝手にされたあげく、そんなはしたない懇願を強いられるのはサスケの魔王としてのプライドを酷く傷つける。しかし、脳内では熱の解放を求める気持ちがどんどんと大きくなっていく。口にしてたまるか。そう思いつつ、サスケの唇はわなわなと震えながらゆっくりと開いていった。

「はっ、ん……ッ、ぁ……シカ、ま……イかせて……ッ!」

 快楽で蕩けた瞳に涙を揺らしながらサスケはシカマルに解放を求めた。ニィとシカマルが唇を歪める。根本を戒めていた手を離すと、シカマルは先端をすこしばかり強めに引っ掻いた。

「んっああぁあ!」

 びくびくと身体を揺らしてサスケは熱を吐き出した。身体を弛緩させ、乱れた呼吸の音だけが響く。シカマルは手のひらに吐き出されたサスケの熱を見せつけるように舐め上げて、男臭く笑った。




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