それなりにいい雰囲気になってから、そのまま行為に至ることも多々あったけれど、今日は互いに任務明けということもあって、それぞれ風呂に入ることにした。順番はいつも決まってサスケが先に入る。そしてオレがそのあとだ。そこはいつもと同じだったのだけれど、今日は普段より少しだけ、長い時間風呂に入ってしまった。
 風呂から出てすぐ寝室に行ってみると、そこにはサスケの姿はなかった。首をかしげながらリビングに向かう。テーブルに向かっているサスケの背中を見つけ、ひたひたと裸足でフローリングの床を歩く。上から手元を覗き込むと、どうやら今日の任務の報告書を書いているようだった。おそらくオレの長風呂に手持無沙汰になって報告書作成を始めてしまったらしい。そうは言ってもオレはもうすでにその気なわけだし、すぐに相手をしてもらいたい。
 オレが風呂から上がったことに気付かないわけもないのに、サスケは報告書作成の手を止めない。中途半端な状態で投げ出すのに気が引ける気持ちは分かるが、今は耐えて欲しいものだ。

「サスケ」
「…ん」

 後ろから声をかけても、生返事しか返ってこない。ペンを走らせる手が止まらないことに小さく溜息を吐いた。する、と首に腕を回してサスケの頭に顔を近づける。まだほんの少し湿り気を帯びた髪からはシャンプーの清潔感あふれる香りがする。鼻を押し付けて息を吸うと、爽やかな香りに満たされるけれど、この先に待つであろう汗と性の匂いを思い出してしまって、物足りない心地がした。
 襟足に指を滑らせて、その隙間から見える白い首筋を撫でる。襟足を掻き上げて生え際を露わにすると、そこに唇を寄せた。柔らかく吸い上げるとかすかにキスマークが残る。それをするすると撫で、サスケの手元に目をやるけれど、相変わらず白い指が整った文字を連ねている。なんの反応もないことを不満に思いながら、耳元に唇を寄せ、唇で食むと一瞬サスケの手が止まった。しかし、サスケはぴくりと動きを止めたあと、すぐに続きを書き始める。
 唇を尖らせてみても誰かが見ているわけでもない。無意識のうちにこぼれた溜息が、不意に耳へ吹き込まれたからか、サスケは再び手を止めた。それを好機としてペンを握るサスケの手に自分の手を重ねた。

「…もう少し待てよ」
「無理だろ」

 耳に直接吹き込むように囁くとペンがぐらりと揺れる。ペンを奪ってテーブルに転がし、指を絡め取る。責めるような視線とともにこちらを向いたサスケの唇を強引に奪う。息つく暇さえ奪うように舌を絡めて吸い上げる。上唇を食んで、舌でつつ、と唇を濡らすとサスケは目を細めて熱い溜息をこぼした。

「その気になったか?」
「…どうだか?」

 その答えは瞳を見れば明らかだった。サスケはそのまま何も言わず、椅子から腰を浮かせる。サスケはオレの首に腕を伸ばし、噛みつくようにキスを仕掛けてきた。舌を柔らかく食んで、上顎を舐め上げる。短く息をついて再び唇が重なる。唇を貪りながらも、ぐいと姿勢を変えてサスケをテーブルに押し倒した。咄嗟にテーブルについたサスケの手を取って指を絡め、縫い付ける。サスケの背中で報告書が音を立てたけれど、気にも留めず唇を食んだ。

「…は、あ、シカマル!」

 報告書のことを忘れていたのか、背中でぐしゃりと音がしてしばらくしてからサスケが咎めるようにオレの名前を呼んだ。まだ、他のことを考えていることが気に入らない。サスケの頬を撫でて唇がぎりぎり触れない距離を取る。

「いいから、オレのことだけ考えてろよ」

 掠れた声でそう囁くと、サスケの瞳がゆらりと揺れ、ゆっくりと目蓋が下ろされた。赤くなった目元や耳に唇が弧を描く。薄く開いた唇を舌でなぞると赤い舌がのぞき、舌と舌が触れ合う。その温度にくらりとしてそのまま唇を押し付けた。腰を撫でていた手を上に押し上げると白い腰が露わになった。直接肌に触れ、するすると服の中へ侵入する。滑らかな肌は風呂から出たばかりということもありいつにもましてしっとりと指になじんだ。

「…ベッド行かねえの」

 ようやくその気になったサスケが小さな声で囁く。硬いテーブルを背にして少し気が進まないのかもしれない。しかし、今はその移動すら惜しい。

「んな余裕ねーよ」
「ん…オレも」

 抗議の声を上げるかと思っていたところに、サスケのとんでも発言を受けてごくりと生唾を飲み込んだ。おかげでただでさえ活発だった心臓がさらに活発になってしまった。

「……煽んなよ」

 せっかく優勢にコトを進めていたというのに、なんだかその言葉で調子を崩されてしまった気がした。



Look at me



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