※性描写注意








 はっきりと言えば、物凄くムラムラしていた。
 別に最近ご無沙汰だな、とかそういうわけではない。むしろ昨日も結構励んだ、と思う。次の日、つまり今日がお互い休日ということもあって、かなり激しかったような、そうでなかったような。正直に言うと途中からよく覚えていない。起きた時の身体の調子から無茶したなとの実感があったから、記憶のない間もおそらく行為に臨んでいたらしい。だから、欲求不満であるはずが、ない。
 じっと視線の先で寛ぐシカマルを見つめる。ふい、と窓の外へ視線を向かわせているシカマルの横顔は唸り声を上げたくなるほどに男前だった。投げ出されている手のひらに目線を移すと骨ばった長い指先が微かに動いていた。あの指が、オレ自身も触れたことのないような場所に触れているのだと思うとじん、と身体の芯が熱くなる心地がする。薄らと無防備に開かれた唇が、口にするのも憚るような場所に口づけているのをオレは知っている。あの唇が時に羞恥に悶えさせるような言葉を吐くのをオレは知っている。あの唇が、蕩けそうなほどの愛の言葉を囁くのを、オレは知っている。
 どうしてくれようか、そう思って手を伸ばす。これでは少し、腕の長さが足りない。距離を少しだけ詰めて、つい、と裾を引いた。ん、と声を漏らしてこちらに顔を向けたシカマルの表情は穏やかで、あの唇は柔らかに弧を描いていた。唇に目を奪われる。上唇を薄く舐めて視線を目元まで上げるとシカマルの指が頬を撫でた。

「それ、癖だって気付いてるか?」
「…何が?」
「上唇舐めんの。キスして欲しいときの癖」

 そう言ってシカマルはそのまま唇を寄せた。乾燥した唇が触れる。自然と下りた目蓋のせいでシカマルの顔が見えない。
 癖。無意識にやっていたから気付かなかった。したいときじゃなくて、して欲しいとき。たしかに、もしキスがしたければ有無を言わさずオレはキスを仕掛けるだろう。シカマルは、オレがキスして欲しいと無意識のうちに発した信号を受け取って、キスをしていたのだろうか。考えてみればシカマルはいつもオレがして欲しいと思ったとき、必ずキスをくれる。ああ、愛しいな。柔らかく触れた唇を食んで、呼吸のために隙間を作る。けれど途端に舌が呼吸を奪う。少し酸素の足りないぼんやりとした感覚が心地好い。
 頬を撫でていた手のひらが後頭部に移る。くしゃ、と髪の毛を掻き回されてやっと目蓋を押し上げた。ふと離れた唇はもう一度重なり、再び離れて呼吸を互いの呼吸を感じるところで薄く開かれた。

「やけに大人しいな。身体だるいか?」

 昨日があれだったしな、と吐息交じりに囁いたシカマルは笑ってこつんと額を押し当ててきた。手を伸ばしてシカマルの首の後ろへ回す。顎を上げて一瞬唇を触れ合わせたあとふっと息を吐く。身体がだるいかと問われれば否定はしない。けれど、それは実に些細なことだ。気にするほどに深刻なだるさではない。腰に響く鈍痛すら今のオレには甘い痛みにしか感じない。
 大人しくされるがままになっていたのは、シカマルから与えられるもの何もかもが惜しいと思ったからだ。ひとつでも取り落とすことの無いように感じていたい。愛は惜しみなく与うと言うけれど、オレは今最高に与えられたい気分だった。シカマル、と名前を口にする。ここで名前など呼ばなくとも声を掛ける相手はシカマルしかいないというのに。ん、と返事を寄越したシカマルはちゅっと音を立ててキスをしてきた。もう一度、囁くように名前を呼ぶ。

「なあ、今すげえ抱かれたい気分なんだよ」

 きょとんとした表情をしたシカマルはその後すぐに破顔した。ぎゅうと抱きしめられたと思ったらそのまま身体が横になる。耳元で笑い声が聞こえ、はあ、と熱い息が耳に吹き込まれた。ぞくりと背中に走る痺れに喉を鳴らしてシカマルの顔を覗いた。

「昨日あんだけ抱かれてもそれかよ」
「昨日は昨日だろ」
「やーらしいなお前は」

 そういうの、淫乱って言うんだぜ。目を細めてオレの指を絡め取ったシカマルはそう呟いて唇を塞いだ。


 厚みのある舌が首筋をねっとりと這う。触れる舌はジリジリと肌を焼くように感じるほど、熱い。肌蹴た胸元を優しく撫でる手のひらにすら吐息をもらす。わずかに寛げられた下は初めに少しだけ触れられてからは一向に刺激を与えてもらえる様子はない。普段ならさっさと直接刺激が欲しいと文句を言うところだけれど、今はこのまどろっこしいくらいの愛撫も心行くまで受けていたい。
 舌が鎖骨に触れたと思うと、ちゅう、と音がして思わずそこへ視線を向ける。しかし、鎖骨を目視することなど出来るはずもなく、シカマルの頭頂部が見えただけだった。顔を上げたシカマルと目が合って、そのまま唇を食まれる。すぐに離れた唇に視線を留めながら、シカマルの背中へと腕を回した。

「痕ついたか?」
「少しだけな…すぐ消えるだろ」
「もっとつけてもいい。首とか」
「見えるじゃねーか」

 笑い交じりにそう言いながらも首筋にちゅうと吸い付いたシカマルの頭を撫でる。むしろ見せつけたいのだから、見えていい。もっとたくさん痕を残せばいいのに、そう思っているとシカマルの指が胸の突起を引っ掛けて息を詰めた。
 押しつぶすように指の腹で刺激されてそこがじんわりと熱を持つ。刺激に過敏になっていくそこを執拗に弄られて息が乱れた。すでに熱をもたげているところには未だ刺激はやってこない。腰を揺らめかせてシカマルに押し付けても素知らぬ風に今度は舌で胸の尖りに触れられる。甘噛みされてびり、と痺れが走る。鼻から抜けて行った甘い声にシカマルがくすりと笑う。

「そこはもういいって、分かってんだろバカ…!」

 そりゃ分かってるけどよ、と言って上体を起こしたシカマルはオレの腰を掴んだ。一瞬期待が胸を掠めるけれど、ぐるりと身体を反転させられただけだった。腰をぐいと引き上げられて何をするつもりなのかと考える間もなく下着に指が掛かって引き下ろされた。太腿の途中までで止まったままになり、下半身の動きがかなり制限される。肘をついて楽な体勢を探そうとすると、指が尻を滑ったかと思うとぬるりと熱いものが後ろに触れてきた。ぞわりと粟立つ感覚に息を呑む。そのままナカまで進んできた舌に悲鳴に近い声が出てしまった。

「さすがに何も無しはきついか。慣らす必要はそんなに無さそうだけどな。昨日の今日で…つか何時間か前だし」
「ケチってないでローションでもなんでも使えよ…ていうかそこでもねえよバカ!」

 ローションを取りに向かったシカマルの背中に文句を垂れる。昂ったそこにはほとんど刺激がないままで、いい加減に焦れていた。肩越しにシカマルを見上げると困ったような顔で笑ってぬらぬらと光る指を後ろに押し付けた。難なく呑み込まれて行った指はすぐに二本になる。

「だからっ…いつまで、っ…あ!」
「触ってやりたいのは山々だけどよ、昨日散々イカせたしそんなに何度も出せねーだろ」
「っう、ああ…ん、オレが…ッいいって、言って…あっ、…ッう、指止めろ…! …ひ、ぁ…!」

 言葉を続けようにもナカで蠢く指のせいで呼吸が乱れてまともに文句を言うことも出来ない。ほんの少しだけ指がイイところを掠めてもどかしさがさらに募る。この際後ろだけでイってしまうのでも構わないからシカマルが欲しい。

「も、いい…っから…あ、はっぁあ…ん、はやく…!」

 ぼやけた視界の中でシカマルを見上げながら上擦った声で告げると、シカマルがチッと舌を打った。その瞳がその気になったのを見て、その先に期待して静かに目を閉じた。



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