水橋パルスィは嫉妬深い。

それは自他共に認められることであり、彼女のアイデンティティーでもある。
彼女は息をするように嫉妬をし、嫉妬をして生きている。彼女の嫉妬は留まるところを知らず、普通の人間にはそれに当てられて自らも妄念の鬼と化してしまう者だっている。
だが、彼女、水橋パルスィにとってそんなことはいくら自分が関わっているとしても、所詮他人事だ。むしろ「自分以外の人間が嫉妬するなんて、妬ましい」と新たな嫉妬の種火となることだろう。
空の蒼さに嫉妬し、笑いあう人々に嫉妬し、世界すべてに嫉妬する。
それが橋姫、水橋パルスィの日常である。

だが、たとえ嫉妬の鬼だなんだと言われていても、彼女も一人の女の子。悩んだりする時だって、なくはないのだ。

たとえば。

自分の恋人が、自分以外の人と話しているのを見てしまった時。
しかもその恋人が、楽しげに(そう、自分といるときよりも楽しげに!)話しているのを見た時。

嫉妬と共に訪れる、空虚な感情。
(…ああ、やっぱり。私なんかと一緒にいるよりも、彼女はああして、日の当たる場所の方が、)

ズルズルと引きずられる、暗い暗い思考の淵、底無しの嫉妬を持つ自分にお似合いの、どこまでも真っ暗な底無し沼。


「まぁた、そんな顔してんのかい?」
ふと聞こえた、恋人の声。肩にかかる重みと、ふわり、風に靡いた長い髪。
「きゃ、っ!!………ゆーぎ、びっくりさせないで」
ふぅ、と溜め息をつけば、からからと笑う声。ああ、きっと情けない自分を笑っているに違いない。
「…で?何の用なの」
「んー、デートのお誘い?かな」
「でっ…?!な、なな、何を言って…」
「さっき魔理沙と話してて、たまにはデートに行かないと愛想つかされるって言われたんだよ。そしたらパルスィを見つけてさ。これはいくしかないだろー、って」
「いくしかないだろ、じゃないわよ!もう少しムードってものをね、」
「はいはいそこまでー、っと」

途端に高くなる視界、ひょっとしなくてもまた、小脇に担がれているのだろう。恨みを込めた目で自分の斜め上を見上げれば、満面の笑顔と目が合った。じわじわと熱くなる頬を隠すように顔を背ければ、わずかに笑う声。
「…楽しくなかったら許さないわよ」
「おうっ!」
素直に伝えるなんてことはできないけど。触れたところから少しでも、この思いが伝わればいいと思う。ぎゅう、と勇儀の腕にしがみつきながら、パルスィは前を向く。
晴れ渡る空、きらきら光る澄んだ川。
嫉妬ばかりの自分がこんな感情を持つなんて、笑ってしまうけれど。

ああ、世界はなんて美しい!


恋は鬼をも姫にする



***************************************初書き勇パル!!…のはずだけど着地点ドコー?!( ;∀;)とりあえず精進します…


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