<外の世界>がクリスマスムード一色に染められる、冬のとある日。
幻想郷の人里も、そんな<外>に影響されてか、どこかお祭り気分に包まれていた。そんな人里を眺める人影が二つ。一つは青い衣を纏い、簪を挿した女性。一つは顔に札を貼り付け、両腕を伸ばしたままの青白い肌色の少女。
「――あらあら、なんだか賑やかなこと。うふふ、羨ましいわねぇ」
「う゛ー?せーが、どーする?」
「ええ、ちょっと西洋の聖人の真似事でも、してみようかしらね」
「?」
「あら、芳香は知らないのね。西洋には、貧しい者の枕元に金貨を置いていたという、それはそれはお優しいヒトがいるのよ。持たざる者に分け与えるなんて、私にはとてもとてもとても、できないけれど」
そう言って、女性―――邪なる仙人、雀青娥はくすりと笑った。
視線の先には、だんだんと暗くなっていく人里。時刻は深夜、起きている者は少ないだろう。
「でも、持つ者からいくらかを貰っても、元々沢山あるものから少しを貰っちゃっても、元から沢山持ってるんだもの、構わないわよね?……そう思うでしょう、芳香」
「あ、あ゛ー、わからな、い。けど、せーががゆー、なら、ただしい」
たどたどしい口調で言葉を紡ぐ少女に微笑みながら、青娥は人里への道を歩く。
「そう。正しいなら―――いいのよ」


次の日。

人里では壁をすり抜けて家内に侵入し金品を奪っていく「青い壁抜け女」の噂が真しやかに囁かれるのだが、それはまた別の話。


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