ヒュウヒュウと、風の吹く音がする。

秋も過ぎ、空気がどことなく冷たさを孕んできた季節。

人のいない山道を、一人の少女が走っていた。青い髪をしたその少女は、小さな腕を大きく振り、風のように駆け抜ける。ただひたすらに前を見据えるその顔は、期待と喜びに満ちていた。

青い少女が立ち止まる。そこにあるのは、水底まで透けて見えるような湖が一つ。
少女は深呼吸を一つして、誰かを探すように辺りを見回す。

「まだ来てないのかなー。……あたいを待たせるなんて、ナマイキね!」

ぽつりと、少女はつまらなそうに呟いた。

「だれが、生意気だって?」
「そりゃ、あの雪だるま女に決まってるじゃな……、」

ぐるりと、少女は勢い良く振り向く。
そこにいたのは先程の声の主。
白銀の色をした、冬を告げる存在−−レティ・ホワイトロック。

「ふふ、久しぶりね、チルノ。元気そうで何よりだわ」
にこにこと、嬉しそうにレティは言う。
「………ふん、あたいはさいきょーだもの、当然よ!それよりそっちは、鈍ってなんかないでしょーね」
言葉とは裏腹に、チルノの顔は楽しそうに笑っていた。
「ええ、もちろんよ。…試してみる?」
「じょーとーよ!かかってきなさい!」

雪の精と氷の精は互いに笑いあい、今年も出会えたことを祝いあう。

冬はまだ、始まったばかりだ。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -