僕には二人の姉さまがいます。

一人は朝の太陽のように明るく朗らか。
一人は夜の月のように冷たく静か。

鏡合わせのようにそっくりで、反転したかのように正反対。そんな二人はそれでいて、誰よりも仲良しです。

「姉さん」
「「なぁに、ニコル」」
「今日のおやつ、何がいいかな?」
「わたし、ケーキがいいなー」
「………私、マカロン」
「あら?ルナはこの前マカロンは嫌いだとか言ってなかったかしら」
「……セシリアが好きって言ってたから、今は好き…」
「覚えていたの?嬉しいっ!」
「セシリアのことなら…全部、覚えてるよ…。……何をしたかも、何を言ったかも、全部、ぜんぶ、忘れないで覚えてる」

ヤンデレのような発言をしたのは月のような姉、ルナリア。

「ふーん、記憶力いーんだねー」

その発言を見事なまでにスルーしたのは、太陽のような姉、セシリア。

二人は双子の姉妹で、この僕、ニコルの姉たちだ。ルナリアは童話作家、セシリアは写真家と、職業は違えど、二人とも何かを表現することが得意なのは変わらない。

もっとも、ルナリアは家から離れずにすむから、セシリアは人とふれあえるからとその職に就いたのだけど。

「あ、わたしこれから次のモデルさんと打ち合わせだから、もう行かなきゃ!」
「姉さん、仕事頑張ってね」
「うん!ありがとー、ニコル!」
「……行っちゃうの?行っちゃいやよ、一緒にいよう?セシリア」
「早く帰るから待っててね、ルナリア」
「………ええ、待ってるわ、待ってる。セシリアの帰る家は、ここだもの、ここに帰ってくるんだもの」
「じゃ、いってきまーす!」

バタバタとセシリア姉さんが出かけると、残された僕たちの間には会話という会話は無くなります。……けして、きょうだい仲が悪いという訳ではありません。ただ、
「…セシリアセシリアセシリアセシリアセシリアセシリアセシリアセシリアセシリア……ねぇ、ニコル。セシリア、まだかな」
「…今出かけたばかりだよ」
「ふふ、うふふ、早く帰ってこないかしら、まだかしら、あぁ、セシリア!」
…ルナリア姉さんがセシリア姉さんのこと以外のものに、興味を示さないだけのことで。

「はぁ…、掃除でもしよう」
ふと、屋敷の電話が鳴っているのが聞こえました。時計を見れば時刻は12時ちょうど、受話器を取れば、聞き慣れた声。
「もしもし」
『ニコル?わたし、セシリアよ。二人とも元気?大丈夫?病気にはなってない?怪我はしてない?わたしのこと待っててくれてる?わたしのこと忘れてない?』
「あー、うん、元気元気。僕ら二人とも、姉さんが帰るのを心底楽しみにしてるよ」
『本当?本当?本当?あぁ、早く帰りたい、二人に会いたい、顔が見たい、愛してるよ、ニコル、ルナリア』

休憩時間のたびに電話で僕たちの安否を確認してくるセシリア姉さんに(やっぱり似た者同士なんだなぁ)と思うのは、いつものことだったりする。




***

(家族以外に)愛情がないヤンデレと、(他以上に)家族を愛するヤンデレの二人

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