日だまりの出逢い

*捏造注意・ゲーム『大神』『大神伝』ネタバレ含みます。



「もしも月の民が全員揃ったら?」
というif話です。捏造無理!という方はバックプリーズ、構わない!という方はそのまま下にスクロール。












光が、見えた。

眩しさを感じて、クロウは閉じていた瞼をそっと開く。そこは何だかとても明るくて、穏やかで、花が咲き乱れていて、まるで
「パラダイス……楽園、のようだね」
そう、それはかつて絵巻で見かけた、この世の楽園、神様の住む地のよう。

「……?なんでミーはこんなところに…」
確かにあの時、自分はあの悪路王を倒すため、文字通り命懸けで戦ったのだ。…あの真っ白で小さな相棒と共に。だというのに、自分の周りを見ても、そこにあるのは美しい花々ばかり。
「確かに、あの時、ミーは……」
ならばここにいる自分は何なのだろうか。まさか本当に、天国にでもいるとでも?
「そんなこと、あるのかな…?」
ふと、視界の端で何かが動いた。
ざわざわと、周りの草花が揺れ動く。
ブワリと一際大きな風が吹いたとき、緑の隙間から、白が見えた。
「……ユー?」
思い出すのは、小さな相棒。背中に乗ってあちらへこちらへと、旅をした思い出。
「ユー、なのかい?」
ざわざわと、未だざわめく草影に近づく。しかし、ためらい、戸惑いながら伸ばした手が触れる前に、突然白いカタマリが飛びあがった。
「うわあっ?!!」
「ワンッ!」
どさり、地面に押し倒される。
「いたた……うわっ!」
目の前にいるのは、白い犬。どこかとぼけた顔が相棒に似ているその犬は、クロウの顔を不思議そうに見詰めたかと思うと、いきなり、顔をぺろぺろと舐めだした。
「えっ、ちょっ、ま…待って、……誰かー!へるぷ、へるーーぷ!!」
クロウの悲鳴(?)が草原に響き渡る。
それを聞き付けたのかは分からないが、救いの神は案外早く訪れた。
「ちょっとちょっと、アマテラスくん!そこまでだよー!」
軽い声とともに、白い犬がヒョイと持ち上げられる。その隙間から這い出したクロウは、声の主の方を見る。
「アマテラスくん、いくらミーに似てるとはいえ、出逢ってすぐあんなことするのはダメだよ?」
「わふっ?」
わかっているのかわかっていないのか、そんな返事をした犬に話しかけている男は、クロウと同じような金髪をしていた。
「ねぇ、ユー!助けてくれたのはありがたいんだけどさ、誰だい、キミ?」
「ああ、自己紹介が遅れたね。ミーの名前はウシワカ。人倫の伝道師、ウシワカさ!君の名前は?」
「……クロウ」
ウシワカ。記憶に新しい、自分の生まれた理由を知ったときに聞いた名前。
「そうか、君が……聞きたいことが沢山ありそうだけど、まずは君に会わせたい子がいるんだ。ついておいで」
そう言ってウシワカは歩き出す。その後をクロウとアマテラスは追っていった。
ウシワカを追ってたどり着いたのは、小さな湖のほとりだった。湖には睡蓮の花が咲き、魚も泳いでいるようだ。
「さぁ、ついたよ。待ち人はあっちだ」
「ここに、誰かいるのかい?」
見れば分かるさ。ウシワカはそう言って、すい、と白く細長い指でどこかを指す。
それを目で追うと、そこには一人の男と、見慣れた小さな白がいた。

男は自分たちと同じように金髪で、服装は自分のかつていた都で、政を行う者たちのする格好によく似ていた。

「アン!」
「ワゥンッ!」

立ち尽くす自分の横を、アマテラスがすり抜ける。大小揃った姿はまるで親子のように見える。
「あの、」
口火を切ったのは、クロウの方だった。
「ユーは、あなたは…、もしかして」
「……左様。私はミチザネでございます。その節は、大変お世話になりました」
「ちっ、違うっ…!あれはすべて、悪路王の企みだったんだ!貴方は悪くない!」
「だとしても、私があのようになったのは一重に私の心が弱かった証です。……止めてくれて、ありがとう」
微笑みながら、ミチザネはクロウの頭を撫でる。クロウは少し驚いたような顔をしたが、どこか照れくさそうに笑った。


「ふふ、感動の再会はできたようだ。ね、アマテラス君」
「わんっ!」
「……ところでそろそろ、チビ君のおとーさんが誰かミーに教えてくれてもいいんじゃないかなー、なーんて、ネ?」
「うー、わんっ!」
「ああっ!ちょっ、待ってよアマテラスくーーーん!!」
「わあああっ!でかい方のユーーー!?重い、重いよ!ぎぶ、ぎぶあっ…」
「おぉ、慈母様はお元気ですねぇ、チビテラス殿」
「あぉんっ!」
神様のおわす地、タカマガハラ。
いつもよりも賑やかなその地を、今日も太陽は照らしている。



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