「……おや。」

「……げ」

ああしまった。
この道を通るんじゃ無かった。

兄の真似で行っているパトロールの最中、嫌な奴に会ってしまった。

「……骸。」

「そう露骨に嫌な顔をしないでくださいよ、姶良。」

六道骸。
お兄ちゃんの…何て言えばいいんだろう。ライバルでは無いし、もちろん仲間でも無いし……。
まぁ、とにかくお兄ちゃんが嫌いな奴だ。

お兄ちゃんが嫌いなものは、もちろん重度のブラコンである私も嫌いな訳で。

「……なんでここにいるの。」

「理由無く僕が並盛を歩いてはいけませんか？」

「いけません。並盛がパイナップル臭くなったらどうしてくれる。」

「おい。」

骸に対して優しさなんてものは欠片も持ち合わせておりません。

「そもそもその言い方はパイナップル好きな人に失礼でしょう。パイナップルの匂いって人によっては良い匂いだと思いますよ。まぁ僕は嫌いですけど。」

「嫌いなのかよ。じゃあなんでそんなパイナップルみたいな髪型してるんだよ。」

「決まってるじゃないですか、似合うからですよ。顔が良いというのは罪ですね。」

「うわぁうざい。お前よりお兄ちゃんの方が100倍かっこいいわ。」

そう、お兄ちゃんはこんなパイナップルと比較にならないくらいかっこいいんだぞ。

私を虐める奴はお兄ちゃんが全員かみ殺してくれるし、何より私にだけ見せてくれる笑顔が可愛くて可愛くてね！雲雀家に生まれてよかったと心から思うよ。

「全く、君はいつもいつもお兄ちゃんお兄ちゃん…。ブラコンが萌えるのは二次元だけですよ。」

「うるせー。自分だって二次元でしか萌えない敬語キャラのくせに。」

「うるさい黙れ。」

「お兄さん敬語忘れてますよ。」

つーかほんとにこいつ何しに来たんだ。
あんまり並盛に長く居るとお兄ちゃんがかみ殺しに来ますよー。

「骸いつまでここにいるの？むしろいつまで生きるつもりなの？踏切ならそこの角曲がって右だよ？」

「何気なく自殺を促さないでもらえませんか。……そうですね、アヒルが来る前にそろそろ帰りましょうかね。目的はもう果たせましたし。」

「目的？」

「ええ。」






「今日は、君に会いにここに来ましたから。」


「………は？」

ポカン、と。
思わず口をあんぐりと開けてしまった。
まさに間抜け面と言うべきか。

私の間抜け面を見た骸が、見下した様にあの独特な笑い声を漏らした。

「クフフ…なんて顔してるんですか。まさか本気にしました？」

「…まさか。」

そんな事あるはずが無い。
だって、お兄ちゃんが嫌いなこんなパイナップル野郎なんかに…！

(一瞬ときめいちゃっただなんて、まさか、そんな事！)


「…ねぇ、君。僕の妹に何か用かい？」

ほんのり赤くなった頬を隠す様に抑えていると、突然、とても聞き覚えのある低い声が耳に届いた。

うわぁ、ナイスタイミング……、っていうか

「お兄ちゃんそのトンファー降ろしてほんとお願いだから。」

現れたと思うや否や、お兄ちゃんはチャキリと骸の喉にトンファーを突き付けていた。
もう！お兄ちゃんたら相変わらず戦闘愛好家！そんなところも好き！

「待ってて姶良。すぐにこの南国果実をかみ殺してあげるから。」

「いやいやお兄ちゃん。気持ちは嬉しいけど…。」

「姶良、もっとしっかりお兄ちゃんを止めてくれませんか。このままだと僕は死にます。」

「ワォ、君、姶良を呼び捨てにするだなんていい度胸だね。……かみ殺すよ。」

「はいはい、ストーップ。」

このままじゃ本当に血を見かねないので、殺る気満々といったお兄ちゃんを無理やり骸から引き離した。
「邪魔しないでよ」と不満そうに口を尖らすお兄ちゃんに、こっそり「今日の晩御飯ハンバーグだよ。」と耳打ちすると、ようやく帰る気になったのか渋々と骸に背を向け歩き出した。あぁもうハンバーグに釣られるお兄ちゃん可愛い！

「姶良。」

お兄ちゃんの後を追いかけようとした私の手首を、骸が軽く掴んだ。
訝しげに首を傾げると、骸はふわりと優しく笑って。

「…また、会いに来ますね。」

そう言い私の頭を軽く撫でた後、背を向けスタスタと黒曜に向かって歩き出した。

ああ、もう、こいつ…！

「さっさと黒曜帰れ！あわよくば死ね！」

私が大声で骸の背中に叫ぶと、骸はこちらを振り向く事はせず、背を向けたままヒラヒラと軽く手を振った。

「…もう来んな、馬鹿…。」

あいつが背を向けていてよかったと、赤くなった顔を抑えながら思った。

私の一番はお兄ちゃん！
そのはず…だったんだけど。
よりによって、お兄ちゃんの嫌いなあいつなんかに…！



「…驚きましたね。まさか、あんな表情をするとは。」

『君に会いに来た』
そう伝えた時の、姶良の表情。

あれは、あの顔は、あの頬の赤みは。

「……少しは脈があると思っていいんですかね？」




＊＊＊＊＊
姶良様にリクエストいただいた「雲雀さん妹と骸のほのぼの夢」でした！
せっかく素敵な設定をリクエストしてもらったのにこんな出来で申し訳ありません…！
雲雀さんの妹になったら絶対お兄ちゃん大好きになるよなぁ…と思ってたら夢主が重度のブラコンになってしまいました（笑）
この度はリクエストありがとうございました！これからもよろしくお願いします(*^^*)


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1010 (20:31)