■ 恋の相手は(精神年齢)小学生

私だけが、知っていたのに。

あームカつく。




「日吉くんかわいー」

「眼鏡似合うね!」




クラスの女の子たちが騒いでいた。


その中心に囲まれているのは、目の調子が悪いのか普段家でしか掛けない眼鏡を掛けた日吉若。




「……若なんてだいっきらいよ」




幼なじみの黄色い後頭部にそう吐き捨てる。


むしゃくしゃして、気分が悪くて、逃げるように私は教室を出た。





「誰が嫌いだって?」




独特の嫌みが籠もったような声が背後で響いた。




「来い」




は?



「ちょっ、放しなさいよ!」




若はそれっきり何も言わずに私の手を引っ張ってずかずか歩き、薄暗い階段下まで来てようやく立ち止まった。


その背中を見ているとやっぱり苦しくなって、




「アンタなんかだいっきらいだ」




私はもう一度言ってしまう。




「それ、本気で言ってるのか」




不意に背を冷たい壁につかされ、顔の横にダン、と手をつかれ、低く絞り出すような声で若は言った。




「俺のどこが気に食わない?」

「……」




わかんないよ。




「何も言わないとわからない」

「わからなくたっていいでしょ」

「よくない」

「なんでよ」




……本当はわかってる。




「お前に嫌われる筋合いはない」

「意味わかんない」




意味わかんないのは、私のほうだ。


若は深い溜め息をついた。

そして自分の肩のあたりで涙声になって俯いている私に「仕方ないな」と呟いて、




「俺はお前が好きだからだ」




私が言えなかった言葉を、いとも簡単に言ってのけた。


それで何か文句あるか、って。




「……馬鹿」




やっぱりだいっきらいだ、と私は若の胸板に頭突きをした。


あー我ながら可愛くないやつ。




****




恋の相手は(精神年齢)小学生
130120 パッツン少女の初恋

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