七月 八日(晴れ)

季節は夏になろうとしている
この手帳に今日から日記を書こうと思う
何で書こうと思ったのかはわからない
ただ、なんとなく、ちょっとした気まぐれだと いいな



  七月 九日(晴れ)

今日も空は晴れている
クラスメイトの北川がむかついた
あと、山田もむかついた
今日の体育は疲れた



  七月 十日(曇り)

今日は少し肌寒かった
北川の奴がまたむかついたから殴ってやった
そしたら静かになったからよしとした
次は山田を殴ろう




  七月 十一日(曇りのち雨)

昨日の日記で書いたとおり、山田を殴ってやった
顔を殴ってやったそしたらキレだした
歪んだ顔でキレられても滑稽なだけだった
ふと外を見ると雨が降っていた



  七月 十二日(雨)

今日は窓の外をずっと眺めても雨しか降っていない
そしたら、山田がいきなり顔を殴ってきたから殴り返した
山田は殴られた場所を押さえて泣きながら教室を出て行った
それが滑稽で笑いが止まらなかった



  七月 十三日(雨)

今日は友達の西山と青酸カリについて話し合った
ついでに昨日の山田のことを話してやったら大笑いしてた
西山は隣のクラスだから予鈴が鳴るとさっさと帰っていった
外は、相変わらず雨が降っていた




  七月 十四日(雨のち曇り)

今日は担任の小池の誕生日だったらしく、一日中五月蠅かった
生徒にプレゼントをせがむなよ
本当、そういう子供っぽいところがカンにさわる
いつの間にか雨もあがって、曇り空になっていた



  七月 十五日(曇り)

天気は昨日のまま、ずっと曇っていた
お昼に食った焼きそばパンがうまかった
昼休みは西山とこの前の話の続きをしてた
いつ雨が降り出すかわからないから、食堂で話してた



  七月 十六日(雨)

空は…晴れる気配が全然ない
なので、今日も食堂で話をする事にした
今日の議題は西山提案の『人間の急所』について
西山が少し焦ってる様だったが、気にしないことにした




  七月 十五日(大雨)

今日は、昨日と比べものにならないくらいの大雨だった
昨日西山の様子が変だった理由がわかった、人を殺めたらしい
俺は昨日まで西山と仲良くしていたから何か聞いてないか尋ねられた
正直に『何も知りません』と嘘を吐いた



  七月 十六日(大雨)

天気は昨日に引き続いて大雨だった
西山の行方はわからないまま
携帯電話も繋がらない、と西山の両親が嘆いていた
今日の昼休みは一人で過ごした



  七月 十七日(雨)

大雨ではなくなったが雨は降り続けている
今日も一人で昼休みを過ごすのかと思うと少し気が重い
いまだに信じられない、西山が人を殺めたこと
西山が消えてから三日が経とうとしていた




  七月 十八日(小雨)

今日はちょっとした変化があった
西山からメールが届いていた
中を見る勇気がないので今日は寝ることにした
雨はほとんど収まっていた



  七月 十九日(曇り)

五日ぶりの曇り
昨日西山から来たメールを見ることにした
内容は『俺はとてつもない罪を犯した』と短い文章だった
西山の両親には言うつもりはない、だって西山は俺に送ったのだから



  七月 二十日(曇り)

今日は、終業式があった
明日からは夏休み
俺はまだ夏休みの計画を立てていない
曇った空はいまだに晴れない




  七月 二十一日(曇り)

今日も西山からメールが来た
内容は『またお前と話しがしたい、ふざけ合いたい』
そのメールで俺も西山に会いたくなった
空は今日も曇っていた



  七月 二十二日(曇り)

今日、夏休みの計画が決まった
それは、『西山に会いに行く』こと
今日もメールが来て、それで俺の意思は固まった
旅行鞄に荷物を詰めて、準備をした



  七月 二十三日(晴れ)

今日は十五日ぶりに空が晴れた
まるで俺の旅立ちを見守るかのように、なんて俺のエゴかな
親には友達と旅行と言っておいたから大丈夫だ
場所は昨日のメールにあった、夜行列車に乗ったら一日で着く



  七月 二十四日(曇り)

夜行列車を降りたらあたり一面、緑だった
何で青森なんかに逃げたんだろう
おかげで結構金使った・・
とりあえず今日は駅の近くにあった格安宿に泊まることにした



  七月 二十五日(曇り)

今日は蒸し暑い中、西山の写真を持って聞き込みをした
テレビのワイドショウなどで西山の事を知った人が何人かいて、
気持ち悪がられたり、通報されかけた
そんな中「そのひとをみたよ」と小学生っぽい少年が言っていた



  七月 二十六日(晴れのち曇り)

昨日の少年の目撃情報どおり、町外れの小屋に行ってみた
中から音がしたので覗いてみたら、見えたのは一面の赤 ″
俺は必死になって走った、宿まで、必死になって
宿に着いた頃にはずぶ濡れになっていた



  七月 二十七日(不明)

今日は一日中宿に籠もっていたので天気は解らない
脳裏に焼き付いたあの光景…
小屋の中は血で染まっていて、中に居たのは西山と知らない人
西山は笑っていて、知らない人は泣きながら血を出していた
あの西山は俺の知ってる奴じゃない…



  七月 二十八日(曇り)

曇ってる空の中、もう一度小屋に行くことにした
恐る恐る近づいたら、中から西山が出てきた
昨日とはぜんぜん違う、『いつもの』西山だった
凄く驚いた顔をしたが直に笑顔になった、俺はその笑顔が怖かった



  七月 二十九日(曇り)

曇っている中、小屋の中で西山と話しをした
なぜ人を殺めたのか聞いたら、『楽しかったから』だそうだ
もう駄目だ…こいつ、完全に壊れてる
テレビでは青森での連続行方不明事件の特集がやっていた



  七月 三十日(曇りのち雨)

今日もこっそり小屋を覗きに行った
やっぱり西山は笑いながら人を殺めていた
曇ってた空は泣いていた‥まるで、俺の心のように
テレビでは教師を殺したとして西山が指名手配になっていた



  七月 三十一日(雨)

西山は俺を『親友』だと思い込んでるから、何でも話してくれた
どうやら、『この小屋に近づいてきた人を殺してる』そうだ
小屋自体が不気味で寄ってくる人間は少ないそうだが…
あと、最初に殺したのは担任の小池で、理由は『ウザかったから』
空を見ると、薄黒い雲から雨が降り注いでいた



  八月 一日(雨のち曇り)

決めた、俺は『西山を殺す』事にする
でないと西山は殺人鬼と化してしまう‥いや、もう立派な殺人鬼だ
今日は一日中宿に籠もって作戦を練り続けた
この時点で、俺も壊れていたのかもしれない‥




  八月 二日(曇り)

作戦は決まった‥
とてもシンプルな作戦だ

まず、いつもの笑顔を顔に貼り付けて西山と話すために小屋まで行き、いつもと同じように話してる最中に睡眠薬の入った飲み物を差し出す
西山は俺のことを『親友』だと思い込んでいるから俺の差し出した飲み物を何の躊躇いもなく飲む筈はず
そして、眠った西山を絞め殺して、小屋の横にある林檎の木の根元に埋める

ただ、
この作戦が成功する可能性は高くない、むしろ低いと思う

何故なら、俺は『賭け』をしようと思っているからだ

明日、この手帳を捨てる
作戦決行は、この手帳を捨てる明日から一週間後
その間に西山が拾って俺を殺すかもしれないという恐怖
別の誰かが拾って警察に持っていくという不安
はたまた、誰にも拾われずに終わるという期待
運命がどれを選ぶのかは、今の俺には分からないから

全てを『運命』と『この曇った空』に委ねることにする

今、君がこの文を読んでいるということはこの手帳を拾ったんだね

 拾ってくれてありがとう

今、俺はどうなっているんだろう?


ま、いっか



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