初めましての方は初めまして、こんにちは、こんばんは、おはようございます、鵜島加奈(うしま・かな)と申します。
私は自慢じゃないけれどおっぱいには五月蝿い。おっぱいが嫌いではない。むしろ逆だ。私はおっぱいが大好きだ。
人は私をおっぱい博士と呼んでいる。
「ねえ、おっぱい星人」
人は私をおっぱい博士と……
「おっぱい星人ってば」
人は私をおっぱいはか
「加奈! 聞こえてるんでしょ、返事くらいしなさよ!」
「聞こえてるよ、なんなのさ! さっきから人のことおっぱい星人おっぱい星人って!」
「だってホンとのことでしょ」
「違いますー、私はおっぱい博士ですー!」
「似たようなものでしょ」
「似てない!」
そう、私はおっぱい博士なのである。決しておっぱい星人なんかではない。みんなも私をおっぱい博士と呼んでくれて構わないよ(キリッ)。
みなさんはおっぱいの良さは何だと思いますか、大きさ? 私はそうは思いません。やっぱりおっぱいは形と柔らかさが重要だと考えている。別に大きいおっぱいはダメとか言っている訳じゃなくて。大きいだけじゃおっぱいとは言えない、形が良くないと見栄えもよくないし、柔らかくないと触り心地も良くない。やっぱり形と柔らかさが前提の大きさだと思うんだ!
まあ私のおっぱいに対する情熱が伝わったなら良い。
さて、話はちょっとだけ変わるけど、私には今可愛い恋人がいる。それはそれは可愛い。
名前は牛神七尾(うしがみ・ななお)といって私の一つ後輩。買い物に出たときたまたま七尾が気持ち悪い男共に絡まれていたところを助けたら七尾に惚れられたのだよ。きっとあれは運命の出逢いだったんだな、うん。
しかも七尾はおっぱいの形が最高なんだよ! 今まで出会ってきたどんな子より良い形とさわり心地と兼ね備えた素晴らしいおっぱいの持ち主だったのだよ!
いや、私は七尾本人に魅かれたのであって、決しておっぱいが良いから恋人にしたわけではない。その辺をよく理解しておくように。
「おーい、おっぱい星人戻ってこーい」
「……ああ、ごめん」
「どうせ七尾ちゃんのあられもない姿でも妄想してたんでしょ」
「あながち間違って……るよ! そりゃ七尾は可愛いけど! 可愛いけどさ! そんなあられもない姿を妄想するなんて……!」
でも半分当たってるから強く否定も出来なかったりする。ニヤニヤしている
放課後の教室は静かで、私の声が良く響いた。何で放課後に教室にいるかというとですね、彼女をですね、七尾の委員会が終わるのを待っているんですよ。確か図書委員だった気がする。
といっても今は初冬だし寒い。放課後だから暖房も付いてないし。
「まあ、加奈の妄想はそれくらいにして、」
「はーい、っていうかなんでユメさんいるの」
「あのねユメさんは今ね、恋人を待っているのだよ」
「あー、さいですか、委員会かなにかですか」
「そう委員会、文化委員だからもうそろそろ終わると思う」
私とユメ……蝶野ユメ(ちょうの・ゆめ)は暖房の効かない教室でコートとマフラーの完全装備でそれぞれの恋人を待っていた。
ユメは私の親友で、何でも話すことの出来る大切な人。おっぱいは平均的だけど。
「文化委員って何すんの?」
「知らない」
「おいおい、彼氏の委員の仕事も知らないのか」
「あんたもそうでしょー」
「はいはい、否定は出来ません……お、噂をすれば何とやら」
「お待たせー、委員会終わったよー」
隣のクラスの猿渡花梨(さわたり・かりん)が教室にやってくる。言わずもがなはユメの恋人です。どちらかというとかっこいいの部類に入る。
今年の学園祭でもミスターコンで優勝してたぐらい。隣のクラスだけど、ユメの彼氏ということもあってか、花梨と私は仲が良い。
「花梨おーっす、今日もいい形の胸してるね」
「加奈おーっす、完全なセクハラですね、訴えるぞ」
花梨とのいつもの掛け合い。いや、ほんとに良い形の胸してるんだよね、花梨は。今まで私が出会ってきた人の中でも五本の指に入る。
「人の彼氏にセクハラしないでくださーい」
「さーせん」
「じゃ、ユメ帰ろう」
「うん!」
「加奈またな」
「加奈ばいばーい」
「ユメ、花梨、また明日ねー」
二人は仲睦まじく腕を組んで教室を出て行った。暫くしてから、窓の外に二つの影が現れる。言わずもがなユメと花梨だ。
二人とも本当に仲がいいな、つか、どこまでいったんだろう。キスはもうしてるだろう。ほら、今もしてるし。せめて学校出てからしろよ。
見せ付けてくれちゃって、窓から二人の行動の一部始終を見て思う。
あ、ちなみに私と七尾もキスはちゃんとしてるよ。うん、毎日のようにね。
「…………」
一人きりの空間。図書委員ってこんなに時間かかるのかな。
まあ待つのは嫌いじゃない、相手が七尾なら尚のこと。普段は七尾も私の部活が終わるのを持っていてくれるのでお互い様でもあるし。
あー、七尾に会いたい。会いたい、会いたい、会いたい。そう思っていると廊下から誰かが走ってくる音が聞えてきた。
「加奈先輩、お待たせしました! 図書の整理で遅くなっちゃいました」
「大丈夫だよ七尾、ぜんぜん待ってないから」
藍色の、肩まで伸びた綺麗な髪を揺らして教室に入ってきた七尾は私を見て申し訳なさそうに言った。別に私は好きで待っているのだからそんなに気を使わなくてもいいのに、そう思いつつも言葉にはしない。ああ七尾可愛い。
お疲れ様、そう言って七尾の頭を撫でてやると顔を赤くした。うん、やっぱり可愛い。
私も七尾も冬らしくコートにマフラー。スカートから覗く生足が素晴らしい。
「さ、帰ろうか」
「はい!」
腰を上げ、カバンを手に取ると七尾が腕に抱きついてくる。愛いやつめ。っていうかおっぱいが腕に当たるんですけど、すごい柔らかいんですけど。本当にありがとうございます。
教室を出る際、電気を消すのも忘れないように気をつけねば。しっかりと電気を消したことを確認して、玄関に向かう。
玄関に向かうまで七尾と色々と話をした。今日クラスであったことなど。ちょっと七尾のクラスメイトになりたいとか思ってしまった。
玄関に着くと丁度担任に会ったので挨拶しておいた。それだけ。
ブーツに履き替えて外に出ると外は真っ暗。それもそうだ冬だもの。
「もう真っ暗!」
「そうだね、家まで送っていくわ」
「え、いいですよ、大丈夫ですよ」
「私がしたいからするの、七尾はおとなしく送られなさい」
七尾の赤くなっている鼻に唇を落とす。すると七尾は顔を赤くして頷いた。素直でよろしい。
大人しくなった七尾のマフラーを巻きなおして手を繋ぐ。七尾の手は冷たくて、小さい。
七尾の家は学校からあんまり遠くないのでそんなに時間もかからずに着いてしまう。大体徒歩三十分くらい。
なので七尾と一緒にいられる時間もそう長くない。寒いけどもっと七尾といたい。私のわがままだけど。
気付けば人気の無い公園にいた。学校帰り七尾の家に行くときには決まって通る公園だ。この時間帯は空も暗いし、誰もいない。
「……七尾、」
「なんですか?」
「好きだよ」
「!」
人がいないのをいいことに、私は七尾に告白をした。といってもいつも学校やら帰り道やらお互いの家やらで愛の言葉を囁き合っているので大したことではない。
七尾は急に立ち止まってしまう。どうしたんだと七尾の顔を覗いてみると涙目になりながら赤面していた。
え、え、本当に何かしたのかな、ただ好きって言っただけなのに。
「どうしたの、私何かした?」
「先輩はずるいです」
「どうして?」
「それ聞きますか……いじわる」
「ごめんごめん」
頭を撫でると繋いで手を解かれた。呆気にとられていると、今度は七尾から指を絡めて繋いでくれた。所謂恋人繋ぎだ。
私はつい嬉しくなって七尾の頭を掴んでキスをする。いや、後悔はしていない。むしろ七尾も受け入てくれている。
「んっ、はあ……せんぱ、あっ、ん……」
「んはぁ、なな、お……」
くちゅり。七尾が息苦しく口を開けたときを見逃さず舌を入れる。くちゃ。卑猥な音が私たちの耳を犯していく。
誰もいなくて良かった。七尾のこんな姿見られたらと思うと……。
「ふぁ、んんっ……!」
七尾は力がなくなってきたのか、足が震えだした。それを見逃さずに、私は七尾の足の間に自分の左足を入れる。
それからコートの中に手を差し込み胸を掴む。ガクガクと震える足はカクンと力なくおれたらしく、私の太ももに七尾がまたぐように座った。
左足を上下に震わせると七尾が甘い声を上げる。それは媚薬のように私を満たす。柔らかい胸は先端が痛々しいほどに硬くなっていた。
「あ、やぁっ……」
やばい。このまま続けるべきなのだろうか。一種の迷いが生まれる。っていうか外っておまえ……駄目だろ、常識的に考えて。今日のところはやめないと私の中の何かが駄目になってしまいそうだ。
七尾を抱きしめ、ベンチに座らせる。くったりと私の膝に頭を載せさせ、息を整えるのを促す。
「……ごめん、感情に任せすぎた」
「はあ、はあ……かな、せんぱい……」
「はあー」
時と場所を考えなかった私が悪い。我に返ると私は何てことをしたんだと後悔ばかり。
七尾を大切しようと決めていたのに、感情に身を任せすぎた。肩で息をする七尾の前髪を掻き分け、ただ謝った。
「ごめんな」
「せんぱい……私嬉しい」
七尾が私を見詰めたかと思うと呟いた。嬉しい、襲われることが? いや、違うだろう。
「どうして……?」
「だって私、先輩とこういうことにならなかったから、加奈先輩は私のことに興味ないのかと思ってたんです……」
「七尾……」
「だから先輩がキスしてくれるのも手を繋いでくれるのも、全部私に魅力が無いのだとばっかり、」
「七尾のバカ」
「うう、ごめんなさい……」
「私は七尾が好きで好きでたまらないよ、それこそ毎日一緒にいたいしキスもしたい、それ以上のことだってしたいって思ってる」
「……嬉しい」
七尾は起き上がり、私を見て涙を流した。言葉からして嬉し泣きだろう。
にしても私は毎日七尾に好きだって言ってるし、キスもしてる。ちゃんと行動に示してるつもりだったけど、七尾にとっては違う意味に捉えられていたらしい。
告白してきたのも七尾からだったし、付き合い始めのときの私はあんまり乗り気じゃなかったからそう思われても仕方ないだろう。でも今は違う。
私は七尾が堪らなく好きで、七尾に近づく奴らに嫉妬すら覚えるようにもなった。暇なときは七尾のことばかり考えているし。七尾が思っている以上に私は七尾が大好きなんだ。
「七尾が思っている以上に私は七尾を愛してるよ」
「加奈先輩……」
仲直りの意味も込めて軽くキスをすると七尾は私に抱きついて泣いた。声を大にして、場所主時間帯も考えずに泣いた。
私はただただ七尾を抱きしめて頭を撫でていた。本当に人気が無くてよかった。
ちょっとした誤解を解いた後、まっすぐ七尾の家に着いた。その間の会話は前と変わらず、普通の恋人と同じそれだった。
「送ってくれてありがとうございます!」
「いいのいいの、これも彼氏の役目だからね」
また明日、七尾の頬にキスをすると顔が赤くなる。ほんとに可愛いな。こういう何気ないキスでも顔を赤くする、ほんとに愛されてるんだな私は。
ちょっとした行き違いもあったけど、これも良い経験だよ。そのおかげで私たちの仲はより深くなったわけだし。
それに今後は遠慮なく吸った揉んだの厭らしいこと出来るわけだしね。ふひひ。
「じゃあね、」
「あの、先輩待って!」
「ん?」
帰ろうとすると七尾に呼び止められる。七尾はえーとあの、ともじもじしながら携帯を取り出す。
「先輩が家に帰るまで私が送ります!」
「え、どういう……?」
「つまり、その……せ、先輩が家に着くまでずっと電話しててもいいですか?」
「!」
なんて可愛いことを言うんだこの子は。そんあのもちろんオッケーに決まってるじゃないか! ラブ割にしておいて良かった!
「じゃああの角曲がったら電話して」
「はい!」
私は携帯を握り締めて、七尾の家から一番近い角を指差した。早くあの角に行きたい。
逸る気持ちを抑えて、もう一回七尾に別れの挨拶をして角に向かった。
完全に曲がりきって七尾の家が見えなくなったら携帯が鳴った。ワンコールも鳴り終わらぬうちに通話ボタンを押す。
ふふ、私は世界一の幸せ者かもしれない。
「もしもし!」
『うあっ、先輩取るの早いですよう』
「だって一秒でも早く七尾の声が聞きたかったから」
『もう先輩ってば……家に着くまでですからね』
「わかってるよ」
今日は特別、いつもよりもゆっくりと歩こうと決めた。
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