生徒会副会長は生徒会会長に恋をしている。恋をするきっかけなんてほんのささいなこと。
 副会長が一年生のとき、たまたま入った生徒会。そこにこれまたたまたま彼女がいただけのこと。
 当時副会長は一年生。会長は二年生。たまたまが重なったことがすべてのきっかけである。
 それからささいなことで恋をする。そうして副会長が会長を想い続けて一年が経ち現在に至る。
「あと三日ですね、会長」
「そうね、でも気を抜いちゃ駄目よ」
 校内イベントなどで使われた物が散乱している生徒会室。生徒会室には会長と副会長の二人だけ。
 というのもほかのメンバーは三日後のことでせわしなく動いているからである。
 三日後というのは“次期生徒会立会演説選挙”が行われる日である。これは次の生徒会メンバーを決めるための行事で、後期生徒会を決めるので三年生はいない。全てのメンバーが一・二年生で構成されるものである。
 そのため今の生徒会は忙しない。

 生徒会室に二人だけが残っているのは立候補者の書類等の整理をしていたからであって、決してサボっているとかではない。決して。
「あと三日か……」
「会長、」
「……?」
「俺、会長になってもいいんですかね……」
「何言ってんのよ、立候補したのあんたでしょ?」
 綺麗に重ねられた書類の束。その一番上から一枚手に取り副会長に見せる。そこには“生徒会会長候補”と書かれており、副会長の名前やクラス等が綺麗な字で記入されている。
 紙を見せられた副会長は眉をハの字にし、ため息を一つ。
「そうですけど……本当に俺でもいいんでしょうか」
「あんたらな出来るよ、じゃなかったらあんたの責任者なんてしない」
「ですよねー……」
 副会長は紙を見つめる。立候補者の欄には自分の名前。責任者の欄には会長の名前。
 生徒会に入った当初は自分が会長に立候補するなんて思いもしなかっただろう。そんなことを思いつつ目の前の会長に目をやる。いつも通り真剣な顔で書類に目を通している会長。
 ああ、この人を好きになって良かったな。先ほどとは違うことを思ってしまう副会長の顔は何処と無くスッキリしていた。
「ちゃんと考えてるの?」
「何がです?」
「三日後に言う内容よ」
「……ちゃんと考えてますよ」
「嘘吐くな」
 やっぱ会長にはかないませんね、苦笑いで手元のノートに立候補理由などを書き始める副会長。
 ふっ。会長はさっきと同じく、書類に目を向けたまま笑った。
「あと三日ね」
「……あと三日ですね」



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