「んあっ!!くっ……!」
首に置いた手をいきなり強められて一瞬全く息ができなくなった。
それからも少しずつ強められていき、苦しいという感情すら浮かべられないほどにギリギリの状態になってしまった。
苦しさから逃れようと自然に彼の手首を引き離そうと掴むが、色々と悪条件。
弱々しく掴むだけで何も変わらない。
「どうしたの、なまえ。もしかして、僕が怖いなんて言うんじゃないよね?」
締めているのは、優位に立っているのは彼の方なのに辛そうなのも彼の方。
辛そうに暗い表情を浮かべる彼に私は何も言えないまま。
"怖くない"といえばウソになるから。
貴方にはウソなんて吐きたくないの。
「くっ、あ……!!」
「なに?聞こえない。聞こえないよ、なまえ」
泣きそうな表情をしたまま首に込める力を強くしていく。
いつだって優しかった。それは異常だと思う程に。けれどこんな状況下で、いつ大切な人が記憶から無くなるかもしれない世界だからと思っていた。
でも、違った。彼のソレは愛情と同じなのに全く違うモノだった。
ソレを知ってて、離れられなかった……離れられない私。
だから、こんな結末になってしまったというのか。
「ねえ、なまえ。今、君の声で愛してるって言って欲しい。僕は君のことをこれほど愛しているんだからね。
さあ、ねえ、……お願いだから!!」
もう、声すらでないまま。
昔ならば貴方に愛をあげることができた。昔ならば温もりをあげることができた。
昔ならば、私は貴方を心から愛していた。
ねえ。
今の貴方の心をどうやって温めればいいの。どんな風に抱きしめろというの。どんな声で、どんな表情で貴方の名を呼べというの。どうやって愛されていればいいの。どうやって愛せばいいの。
貴方の愛におびえている私はどうすれば今の貴方を愛せるというの。
静かに霞んでいく視界で最期に捉えたのは、
(お互い運が無かったんでしょう)
タイトルは鏡音リンの「愛情狂現」から。