六軒島の内部。
ある墓の前に私は今立っている。
「戦人……」
静かに吹く風が私の頬をなでる。
丁度1年前、私の恋人はいなくなった。
私の前からいなくなった。
「……ねぇ、あの時に言ったよね。『生きる時も死ぬ時も絶対一緒にいる』って」
貴方にあった最後の日。
2日だけ親族会議にいかなくてはいけないからしばらく会えないと伝えられた日。
二人でずっと一緒にいようと誓い合った日。
なのに、
「……どうして先に逝ったの?あれだけ誓ったのに貴方は裏切るの…?」
嗚呼…何を言おうと無駄だと分かっていて、それでも何度も思い返してしまうのは。
あの時の、貴方の言葉が私の中に引っかかっているからで。
『…なあ、なまえ』
『うん?どうしたの、戦人』
『もし…もしも、だぞ。俺が死んだらどうする?やっぱり泣くか?』
『戦人…?』
『あー、…いや別にそんな深い意味じゃねぇよ。何となく聞いてみたかっただけだ』
『………』
『悪ぃ、嫌な気になったなら忘れてくれ』
『私は戦人がいなくなるなんて考えられないよ。でも、もしもいなくなるんなら…』
『いなくなるなら?』
『…あー、うん。泣くんじゃないかな』
『そう、か……』
『本当大丈夫、戦人?何の力にもなれないかもしれないけど、何かあるなら聞くよ?』
『いや、なんでもねぇよ。まぁ、安心しろよ。オレは星になってなまえを見守ってやる』
どこかおかしいのは分かっていた。でも、私は笑って何も感じないフリをしたんだ。
戦人がそれを望んでいることもわかったから。
それでも、
…ねぇ、戦人。貴方には謝って欲しいの。
死んで星になる?見守り続ける?
そんなこと私は望んでなんていないことくらい分ってるでしょう。
だってそれって貴方が死んだことを認めることになるんだから。
だから、私はね。
(貴方が死ぬわけないでしょう)
(絶対に連れ戻してみせるもの)